「 四十代ノーベル化学賞受賞で久びさに見た日本人本来の姿 」
『週刊ダイヤモンド』 2002年10月26日号 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 466回 田中耕一さんのノーベル化学賞受賞は、本当に嬉しかった。 日本人にまつわる近年のニュースはため息の出るようなものが多かった。消費者の信頼を二度三度と裏切った名門企業、雪印乳業と雪印食品。日本ハムも、業界最大手でありながら、輸入肉を国産肉と偽って政府に買い取らせようとした。 一般のスーパーマーケッ…
「 読みやすさ優先で見失った『漢字』の表現力と奥深さ 」
『週刊ダイヤモンド』 2002年6月8日号 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 448回 日ごろ気になることの一つが、言葉である。私たち日本人は、言葉や言葉遣いをどの程度、意識しているのかと折々に思ってきたが、5月27日付「毎日新聞」の「発言席」欄に谷川健一氏が書いておられた。 日本の新しい自治体の名前が安易すぎないかと。2005年までに全国の市町村の合併が進み、現在の3300から100…
「 都会で生息する鴬・雀・桜が告げる今年の早い春の訪れ 」
『週刊ダイヤモンド』 2002年3月30日号 オピニオン縦横無尽 439回 18日の月曜日、ベランダで早朝の水やりをしていると聞こえてきた。 ホーホケキョ ホーホケキョ なんという美声だろう。肌に心地よい早朝の冷たい微風のなかで、如雨露(じょうろ)を手に、しばし佇んで聞き惚れた。以来、鴬は毎朝のように訪れてきて美声を聞かせてくれる。 ささやかな都会の庭を訪ねてくる鳥たちのなかで、最も愛ら…
「 鯨は食べるべし 」
『週刊新潮』 2002年2月14日号 日本ルネッサンス 第6回 去る1月22日、鹿児島県薩摩半島先端の加世田市と大浦町の海岸に押し寄せたマッコウ鯨の大群は、その後どうなっただろうか。 1頭は人間の懸命の救出作業もあって無事海に戻ったが、残り13頭は死んでしまった。内1頭は砂浜に埋められ、12頭は海に投棄された。加世田市役所総務課の説明である。 「大浦海岸から3隻の船で鯨を引っ張って移動させ…
「 岡っ引国家にはなるな 」
『週刊新潮』 2002年2月7日号 日本ルネッサンス 第5回 BSE(狂牛病)、日本人拉致事件、工作船。 3つに共通するのは日本の情報能力の欠落である。情報がとれない、分析が出来ない、あえて情報をとらないといういびつな姿である。 情報の世界にはヒューミント、シギント、エリントなどという一般の語彙では聞き慣れない言葉がある。ヒューマン・インテリジェンス、シグナル・インテリジェンス、エレクトロ…
「決断力ない日本、恥ずかしい限り」
『日経ビジネス』 2001年10月1日号 このテロ事件が起きた日、私はちょうど取材で生まれ故郷のベトナムに着いたところでした。日本のNHKを含めて、米、英、仏など各国の番組が同時中継で入ってきます。テロ関連のニュースの洪水の中でチャンネルを次々と変えました。その中でやはりというか、日本が際立って異質だとつくづく感じました。 小泉首相自身の登場が遅い 例えば、テロ勃発後、すぐにブレア英首相…
「 夏の朝 わが家のベランダに息づくバッタと黒アゲハたち 」
『週刊ダイヤモンド』 2001年8月11・18日合併号 オピニオン縦横無尽 第408回 連日の猛暑の効用は、早朝に目ざめることだ。このところ早起きして、ささやかなベランダの木や花たちに水遣りをするのが日課となった。 好きで集めた緑の生きものたちが、勢いよく葉を広げ、花を咲かせ、実をつけている。大きなジョーロで何度も水を運び、毎朝30分ほどもかかって水遣りを終わると汗が流れ落ちる。そのあとでい…
「 ハンセン病判決は『行政過保護』だった日本の司法に地殻変動を起こす 行政へのクレームができず国民が泣き寝入りしてきた事態をもっと我々は知らなければならない 」
『SAPIO』 2001年7月25日号 司法改革が日本を変える 特別対談(後編)最終答申を撃つ! 6月12日、戦後最大の改革となる司法制度改革審議会の最終答申が小泉首相に提出された。今後は内閣に司法制度改革推進室が設置され、順次法案を国会に提出、3年以内の成立を目指す。しかしその中身は法曹人口の増大、法科大学院の創設、裁判員制度導入など抜本的で多岐にわたるため、いまだ多くの問題が山積している。…
「『池田小殺傷事件と司法改革』を考える 司法は精神障害者の犯罪を医療に委ねていいのか――戦後最大の改革の是非を問う」
『SAPIO』 2001年7月11日号 司法改革が日本を変える 特別対談(前編) 最終答申を撃つ! 「7人のお友だちへ 今はみんなで楽しく遊んでいるでしょうか?」 「どうして君たちが犠牲になったのでしょう? お父さんやお母さんたちは君たちを助けてあげることが出来ませんでした」 「これからお父さんやお母さんは二度とこのような恐ろしい事が起きないように考えていきます。 どうか、みんなでほかのお友だ…