「 外交は政権の道具ではない 首相は名誉欲を捨てよ 国を売りたもうことなかれ 」
『週刊ダイヤモンド』 2004年7月17日号 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 551 かつての小泉純一郎首相のイメージは、淡々とした人物のそれだった。自分の利益にそれほどこだわることなく、この国に必要な改革にこそこだわり、誰が抵抗しようが反対しようが改革を進める、“よき変人宰相”に見えた。 首相就任から4年目。権力の座はこれほどまでに人間を変えてしまうものか。現在の首相には…
「 手の内全て曝け出した小泉外交 」
『週刊新潮』 2004年6月17日号 日本ルネッサンス 第120回 小泉純一郎首相の5月22日の訪朝は、世論の非常に高い支持を受けた。だからといって小泉再訪朝が日本外交史に残る汚点であることに変わりはない。 首脳会談では首相の右隣に坐って一部始終を見守った山崎正昭官房副長官が帰国直後に多くの取材に応じ、交渉は北朝鮮ペースだったことを認めたが、なぜそのような展開になったのか。 官邸か…
「 功を焦ったか小泉首相の拙速 日朝交渉の国際社会の評価は“人質をカネで買い戻す国” 」
『週刊ダイヤモンド』 2004年6月12日号 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 546 小泉純一郎首相の再訪朝に対する国際社会の評価をひと言でいえば、「人質を買った」ということである。いかに人道の冠をかぶせても、金正日総書記との交渉の席で、食糧25万トンと医療援助1,000万ドルを約束したことを、国際社会は決して評価しないだろう。 日本の外交は、顔の見えない外交といわれて…
「 外交目的は国交正常化でなく国民の奪還であるはず 家族会への非難は本末転倒 」
『週刊ダイヤモンド』 2004年6月5日号 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 545 小泉純一郎首相が北朝鮮から連れ戻した5人の子どもたちの姿が初々しい。おじいさんが、孫たちの奪還を機に、願をかけて断っていたお酒を四半世紀ぶりに飲んだ。「五臓六腑に染みわたった」という言葉にも喜びが溢れていた。 子どもたちが帰国した5月22日以来、多くの人びとがそうした喜びを分かち合っている。…
「 金丸以来進歩なし、小泉訪朝 」
『週刊新潮』 2004年6月3日号 日本ルネッサンス 第118回 5月22日の小泉首相の北朝鮮再訪問は、明らかな失敗だった。 帰国した5人の子供たちの素直そうな佇まいと、親子が揃った場面での笑顔が唯一心を和ませてくれる。この5人の帰国を除けば、肝心なことは解決されていない。そのうえに、援助まで約束した小泉外交の失敗の形は、14年前の金丸信氏を団長とする訪朝の失敗と重なってくる。 90…
「 参院選前の北朝鮮異例訪問 正当化できるか否かは小泉外交の筋の通し方による 」
週刊ダイヤモンド 2004年5月29日号 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 544 北朝鮮への小泉純一郎首相の異例の再訪問が正当性ありとされる最低限の条件は、安易な援助や筋の通らない約束をしないことである。経済援助に“人道”の二文字を付けて取り繕うことも、あってはならない。国民は、七人の子どもと夫の帰国、横田めぐみさんら10人の安否、さらには3ケタの数の失踪者情報入手に加えて、小泉…
「 拉致問題は交渉でなく要求だ 」
『週刊新潮』 2004年5月27日号 日本ルネッサンス 第117回 「官邸はテンヤワンヤのようです。私共も日朝交渉の詳細はよくわからないのです」 超党派のメンバーで作っている拉致議員連盟会長の平沼赳夫氏はこう語った。氏は17日午後4時に小泉純一郎首相から訪朝について説明を受けることになっていた。それが突然キャンセルされ、19日に延期されたが、首相の近くで官邸の様子を見ての感想が、先程の言…
「 小泉再訪朝は慎重にせよ 」
週刊新潮 2004年5月20日号 日本ルネッサンス 第116回 福田康夫官房長官は表向き、年金未払い問題で辞任した。しかしもうひとつの理由は、小泉首相の展開する北朝鮮外交への抗議だったという。 福田氏らが北朝鮮との交渉の窓口を外務省に絞ってきたのとは対照的に、小泉首相が〝盟友〟山崎拓氏と平沢勝栄氏を使者に立て、北朝鮮と接触させてきたのは周知のとおりだ。4月1日に中国の大連で北朝鮮外…
「 私は美保じゃない、遺留品は語る 」
週刊新潮 2004年4月29日号 日本ルネッサンス 第114回 1984年6月4日に突然姿を消した山本美保さんは、若々しい命が弾むばかりの20歳だった。 母親の文子さんが語る。 「双子の姉ですが、美保のほうが妹の美砂(みさ)よりも性格も活発で、運動好きでした。学園祭では実行委員を務めましたし、通学していた地元の高等看護学院ではワンダーフォーゲル部長も務めていました」 家族は、美保さ…
「 いつも行き当たりばったり 」
週刊新潮 2004年4月15日号 日本ルネッサンス 第112回 思わず、「またか!」と思ってしまったのが、山崎拓、平沢勝栄両氏による北朝鮮外交である。 またか!の嘆息の対象は、しかし両氏ではない。その背後にいる小泉純一郎首相その人である。首相は、山崎氏らの訪中を、当初は知らなかったと言い、次に、中国にいる山崎氏から電話をもらって知ったと語ったが、山崎氏が首相の了承なしに北朝鮮側…