「 “拉致被害者”美保さんの行方 」
週刊新潮 2004年3月18日号 日本ルネッサンス 第108回 2月末に北京で行われた6か国協議で改めて突きつけられたのは、米国頼みの日本の外交の非力振りだった。これで、拉致も核も解決の道は、当面、閉ざされたといえる。 各国代表の署名もない議長総括には、協議プロセスの継続と次回会合を4か月先の6月末までに開くこと、準備のための作業部会を設置することが書きこまれたが、これはブッシュ外…
「 並の政治家や官僚に劣らぬ横田夫妻の外交判断能力 改正外為法にも見解の相違 」
『週刊ダイヤモンド』 2004年2月28日号 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 532号 試練は、人を成長させてくれる。 穏やかな夫と裕福な家庭の主婦をしてこられた横田早紀江さんと語るたびに、そう思う。外交官でも政治家でもないが、早紀江さんはおそらく今、並の政治家や官僚に負けない判断能力を身につけている。 2月11日から平壌(ピョンヤン)で開催された日朝政府間交渉に臨む政府の姿勢を、横…
「 亡命者が語る、北朝鮮の偽り 」
『週刊新潮』 2003年11月13日号 日本ルネッサンス 第92回 「死亡と伝えられた日本人拉致被害者は生きています。北朝鮮は利用価値のある人間を死なせるような戦術はとりません」 自信をもってこう語るのは9歳から19歳までの10年間を北朝鮮の政治犯収容所に入れられ、後に奇跡的に脱出した姜哲煥氏である。祖母、父、叔父、妹と哲煥氏の5人が1977年から87年まで、動物以下の扱いをうけて過ごしたの…
「 歴史に学べ、拉致問題の解決 」
『週刊新潮』 2003年9月18日号 日本ルネッサンス 第84回 日朝交渉の現状から、約80年も前のワシントン会議を連想させられる。 北朝鮮をめぐって8月末に開かれた北京での6カ国協議と日本を標的として開かれた1921年11月のワシントン会議には、共通点がある。ターゲットの国を包囲して追い込んでいく米国の外交戦略である。 振り返れば米国の提唱したワシントン会議は日米英仏伊の5カ国を主要メン…
「 拉致全面解決が交渉の前提だ 」
『週刊新潮』 2003年9月11日号 日本ルネッサンス 第83回 北京での3日間にわたる6カ国協議は概ね評価されている。日本にとって、拉致問題を6カ国の場で指摘出来たこと、最終日には北朝鮮側が拉致問題を含めて日朝平壌宣言に則ってひとつひとつ解決していくと述べたことなどが、評価の理由である。 しかし、腑に落ちないことがある。日本政府のなかから拉致問題の部分的解決で幕引きを図る動きが見えてくるか…
「 福田官房長官の『拉致被害者家族の帰国は緊急課題』発言に匂う政権維持の企み 」
『週刊ダイヤモンド』 2003年8月23日号 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 506回 外交には秘密がつきまとう。とりわけ北朝鮮外交には闇の部分が目立つ。 8月4日の福田康夫官房長官の記者会見は、意味深長である。NGOのレインボーブリッヂ事務局長の小坂浩彰氏が持ち帰った拉致被害者らの子どもたちの写真と手紙について、こう述べた。 「政府は5人の家族の帰国を緊急課題と考えている」 同長…
「 拉致問題は交渉事にあらず 『原状回復』要求のために国レベルの調査機関創設を 」
『週刊ダイヤモンド』 2003年5月17日号 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 493回 北朝鮮に拉致された人びとを調査する目的で今年1月10日に設置された特定失踪者問題調査会(調査会)には、発足から5ヵ月目に入ろうとする今も、問い合わせが続いている。 300人を超える疑惑の案件を見詰めると、不確かながら、一つの傾向が見えてくるという。拉致被害者増元るみ子さんの弟、照明さんが語った。照…
「 日本を脅かす中国の存在もまた“米国支持”が必要な理由 」
『 週刊ダイヤモンド 』 2003年3月22日号 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 486回 北朝鮮の発射したシルクワームの改良型ミサイルが、日本に与える軍事的脅威は小さくとも、長い目で見た場合の政治的影響は大きい。 射程110~160キロメートルといわれる同ミサイルの発射は、金正日政権の生残りへの戦いが、旧式の軍事装備を利用して、いかに政治的な副次効果を生み出していくかにあることを示…
「 日本人学校への駆込み事件で問われる亡命者への国民意識 」
『週刊ダイヤモンド』 2003年3月8日号 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 484回 韓国の新大統領就任式前日に、北朝鮮が対艦ミサイルを発射した。 その北朝鮮に、国連は核開発放棄を条件に人道的な食糧支援を計画しており、ストロング事務総長特別顧問が来日した。同氏の食糧支援の協力要請に、安倍晋三官房副長官は、拉致被害者5人の家族の早期帰国が最低限のハードルだとして拒絶した。加えて、安倍氏…
「 北朝鮮外交成功のためには日本側の窓口一本化が必要 」
『週刊ダイヤモンド』 2003年1月11日早春号 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 476回 13歳で姿を消した娘の子どもが15歳で見つかった。失踪した娘と同じ年ごろの孫に会いたいと思う気持ちは、ごく自然なものだ。 だが、横田滋さんは昨年12月24日、安倍晋三副長官に「北朝鮮には行きません」とあらためて報告した。行きたい、しかし、利用されかねないと、揺れる滋さんを説得したのは息子の拓也…