「 私は美保じゃない、遺留品は語る 」
週刊新潮 2004年4月29日号 日本ルネッサンス 第114回 1984年6月4日に突然姿を消した山本美保さんは、若々しい命が弾むばかりの20歳だった。 母親の文子さんが語る。 「双子の姉ですが、美保のほうが妹の美砂(みさ)よりも性格も活発で、運動好きでした。学園祭では実行委員を務めましたし、通学していた地元の高等看護学院ではワンダーフォーゲル部長も務めていました」 家族は、美保さ…
「 緊急事態でも原則は2つある テロには絶対に屈しないこと そして『自己責任』の認識 」
週刊ダイヤモンド 2004年4月24日号 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 540 「自分で行ったのなら自分の責任ですよ。ご本人もご家族もまずそう認識しなくちゃ」 イラクで人質になった邦人3人についてこう語ったのは、先の戦争を体験した世代の女性たちだ。外地で、または国内で敗戦を迎えた年配の女性たちは、戦争の時代を生き抜いてきた。戦争という大きな節目を、国家とともに体験しながらも…
「 テロには屈しない決意が必要 」
週刊新潮 2004年4月22日号 日本ルネッサンス 第113回 邦人3人が人質にとられ5日がすぎた今、改めて奥克彦大使の残した『イラク便り』(扶桑社)を開いてみた。 外務省のホームページに書き残していた奥大使の『イラク便り』には、多くの人々の死が登場する。2003年8月22日、デ・メロ国連事務総長特別代表の棺は国連旗に覆われブラジルの空軍機によって「凛々しく」迎え入れられ故国に…
「 靖國神社の『見解』が示した『戦犯』問題根本的な誤り 国内法では犯罪人ではない 」
週刊ダイヤモンド 2004年4月17日号 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 539 しばらく前にテレビ朝日「サンデープロジェクト」に出演した中曽根康弘元首相の、靖國神社についての発言が気になっていた。「A級戦犯を分祀すればよい」という主旨の発言だった。 私は、東京裁判という、国際法の観点から見れば受け容れられない事後法による一方的な裁判で裁かれた先人たちを、「戦犯」という言葉…
「 いつも行き当たりばったり 」
週刊新潮 2004年4月15日号 日本ルネッサンス 第112回 思わず、「またか!」と思ってしまったのが、山崎拓、平沢勝栄両氏による北朝鮮外交である。 またか!の嘆息の対象は、しかし両氏ではない。その背後にいる小泉純一郎首相その人である。首相は、山崎氏らの訪中を、当初は知らなかったと言い、次に、中国にいる山崎氏から電話をもらって知ったと語ったが、山崎氏が首相の了承なしに北朝鮮側…
「 『週刊文春』の勝訴だけれど どうしても許せないのが地裁判決を支える危険な思想 」
週刊ダイヤモンド 2004年4月10日号 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 538 田中家と『週刊文春』の争いは、東京高裁で文藝春秋側の勝訴となった。だが東京地裁のメディア規制の思惑は、当初外に表れた現象よりもさらに厳しかったことも判明した。 田中家の長女の私生活を報じて出版禁止を求められた『週刊文春』3月25日号は、74万部が出荷され、3万部が文藝春秋に残っていた。地裁がその…
「 日本が譲れば、中国は驕る 」
週刊新潮 2004年4月8日号 日本ルネッサンス 第111回 台湾の陳水扁総統は、中国は、こちらが譲れば、さらにより多くを要求してくると述べたが、1972年の日中国交樹立以来の尖閣諸島に関する発言からもそれは明らかだ。 その意味で3月24日に尖閣諸島に不法上陸した中国人7人を、十分な取り調べもせずに送り返したことは、深刻な間違いだった。中国側の思惑に日本がさらに翻弄されていく結…
「 事実上プライバシー保護に役立たないにもかかわらず出版禁止決定の政治的意味 」
週刊ダイヤモンド 2004年4月3日号 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 537 『週刊文春』と田中家の長女の争いで、東京地方裁判所の大橋寛明裁判長、金子直史、塚田奈保両裁判官の下した決定は、どう考えてもスッキリしない。同時に、今回の裁判が言論、報道の自由を狭める結果につながることを、私は非常に危惧している。 田中家の長女のプライバシーを守るために、大橋裁判長らは「出版禁止」という…
「 東大総長vs千葉商科大学長 」
週刊新潮 2004年4月1日号 日本ルネッサンス 第110回 2人の学長の、道路公団民営化案への評価が対照的である。加藤寛千葉商科大学学長と、佐々木毅東京大学総長である。両学長は各々、『産経新聞』(3月12日)の『正論』と『東京新聞』(3月14日)の『時代を読む』に寄稿した。 両論文は、しかし、比較以前のもので、「小泉首相は『ショウグン』になれるか」と題された加藤論文は失礼ながら…