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2004.04.10 (土)

「 『週刊文春』の勝訴だけれど どうしても許せないのが地裁判決を支える危険な思想 」

週刊ダイヤモンド   2004年4月10日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 538

田中家と『週刊文春』の争いは、東京高裁で文藝春秋側の勝訴となった。だが東京地裁のメディア規制の思惑は、当初外に表れた現象よりもさらに厳しかったことも判明した。

田中家の長女の私生活を報じて出版禁止を求められた『週刊文春』3月25日号は、74万部が出荷され、3万部が文藝春秋に残っていた。地裁がその3万部に対する販売禁止を言い渡したことは、先週、当欄でも指摘した。

が、文藝春秋によると、販売禁止対象が3万部に限られたのはいくつかの偶然が重なっただけで、裁判所は77万部すべてを差し止めるつもりだった。事情は以下のとおりである。

『週刊文春』は毎週木曜日発売だが、問題の号は春分の日が休日で、一日繰り上げの水曜日発売だった。当然、締め切り、印刷、出荷も一日繰り上がる。田中家も裁判所もその点に気づかず、火曜日に手を打てば全冊を販売禁止にすることができると考えていたらしい。

また、出版界の流通は独特で、雑誌は出荷された途端に書店に所有権が移る。その証拠に、万引きされれば、書店の損害で、出版社の損害ではない。この点を田中家も裁判所も理解しておらず、書店に卸された雑誌も所有権は出版社にあると考え、文藝春秋への出版差し止め命令一本で、すべてを止められると考えていた。だが、現実は彼らの考えていた構造とは異なるため、“効果的”な差し止めができなかったのだ。

一日のズレと、訴えた側と裁判所の無知が、巧まずして文藝春秋側を実質的に助けた結果となった。だが、メディアへの影響を考えると、田中家の訴えの余波は深刻だ。長女の私事によって、憲法二一条で保障する言論、出版その他いっさいの表現の自由が脅かされてはたまらない。長女の訴えの背後には、心情的、経済的に眞紀子氏の支持があったと思われる。したがって、同件は長女よりも眞紀子氏の訴えとして見るべきだ。この訴えの異常ともいうべき突出ぶりは、政治家眞紀子氏の資質の反映でもあろう。

『週刊文春』の当該記事に、田中家の後援会関係者の声として、眞紀子氏が「真奈子さんの結婚についても『どこの馬の骨ともわからない男に真奈子をやるわけにはいかない。絶対に結婚を許さない』と言い切り、『財産目当てなのでしょう』とまで言ったといいます」とあった。

眞紀子氏は出自を忘れたのか。私は、世間の基準が必ずしもよいとは思わない。が、その世間の基準では、若き日の角栄氏は「どこの馬の骨ともわからない男」だったはずだ。だが、彼は努力し、闘い、頂点にたどり着いた。その角栄氏に日本人は熱狂。地元の人びとは彼を愛してやまず、そのおかげで今の眞紀子夫婦の議席がある。その角栄氏の恩恵を誰よりも受けてきた眞紀子氏であれば、可能性の芽を擁しながらもまだそれを伸ばし切れていないかもしれない若い世代の人びとには、大きな期待をこそかけてやるべきだ。そんなことを忘れて「馬の骨」と侮ることは、天に唾するものだと認識せよ。

また“おカネ目当て”も、政治家眞紀子氏の神髄を表現したものではないか。父から引き継いだ遺産の相続の仕方を見よ。法に適ってはいるとしても、これほどの狡智を相続税節約に絞る人を、私は日本国の政治家としては認めたくないと思ったほどだ。また、秘書給与疑惑の件はどうだ。検察当局は起訴は見送ったが、それで政治家眞紀子氏が100%潔白だったと信ずる人はごく少数であろう。“おカネに汚い”“おカネ目当て”などの卑しい形容詞は、他人に投げかけるより先に、自らに照らし合わせて自省せよ。こんな政治家田中眞紀子氏の一面をも表現した『週刊文春』の記事の、全面差し止めを狙った地裁の判決の危険な思想は、断じて許すわけにはいかないのだ。

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