「航空自衛隊の前幕僚長の論文は全体像把握に必要な知的努力」
『週刊ダイヤモンド』 2008年11月15日号 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 764 航空自衛隊幕僚長の田母神俊雄氏が、世に発表した論文を咎められて更迭され、退職した。問題とされた「日本は侵略国家であったのか」と題された論文を読んでみた。 ワープロ打ちでA4九枚の小論文は、20世紀初頭の中国や朝鮮半島と日本とのかかわりを追った内容だ。毛沢東麾下の中国共産党がコミンテルンの指導下…
「日本無視、米中の壁に挑め」
『週刊新潮』’08年11月6日号 日本ルネッサンス 第336回 日々、国会の解散時期についての情報が新聞各紙で報じられる。けれど、激変する国際情勢を見れば、日本に現時点で総選挙を行うような余裕があるのだろうか。疑問である。 麻生太郎首相は今回の金融危機を〝100年に一度あるかないかの危機〟と言った。激変は金融だけではない。日本に大きな影響力を及ぼす米国が文字どおり、激変中である。いまは、日…
「日本の惨めな外交を予言した中国高官の覆面座談会」
『週刊ダイヤモンド』 2008年10月25日号 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 761 「アメリカの外交政策に、拉致問題が影響を及ぼすことなんてありっこない」「最初からわかり切ったこと」「それをあたかも希望があるように報じてきた」「日本人って、その辺はお人好しだよね。われわれにはありがたいけどね」――。 ここで「われわれ」の立場から日本を論じているのは、中国外務省の課長補佐である…
「中国の脅威を見つめよ、自衛隊」
『週刊新潮』’08年10月9日号 日本ルネッサンス 第332回 中国の軍事戦略の基本を表わすものに、鄧小平の「24字戦略」がある。4文字の成句を6個連ねた文字どおりの24文字の訓示で、鄧小平は命じている。 「冷静に観察せよ、己れの立場を固めよ、冷静に対処せよ、能力を隠し好機を待て、控えめな姿勢を得手とせよ、突出した地位を求めるな」 およそ戦いに勝つための要諦がここに含まれている。強さは、それ…
「中国、援助外交でラオス侵食」
『週刊新潮』’08年9月18日号 日本ルネッサンス 第329回 「メコン川にマンハッタンのようなビルが並び立ち、ラオスは中国に乗っ取られます。中国のアジア進出を傍観しては、日本の存在感はますます希薄になります」 こう語るのは日本在住のラオス人研究者である。時計回りに、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマー、中国の5ヵ国に包み込まれる形のラオスを舞台に、ここ数年、凄まじい中国進出が進行中だ。歴…
「グルジア危機と台湾の不安 東西で揺れるアジア情勢」
『週刊新潮』’08年9月6日号 日本ルネッサンス 第754回 グルジア領内の南オセチア自治州とアブハジア自治共和国をめぐって、ロシア対グルジア・欧米諸国の関係が急速に悪化している。日本のメディア、テレビメディアはあまり報じないが、まさに新たな冷戦の感が否めない。 プーチン路線の下でメドベージェフ大統領が強気の発言をしたのは8月26日だ。ロシア政府は前述の二つの自治区の独立を承認したうえで、「…
「粗にして雑、移民国家の自民党案」
『週刊新潮』’08年9月4日号 日本ルネッサンス 第327回 少子高齢化問題の解決には「海外からの移民の受け入れ以外にない」、日本は「移民立国への転換」を果たし、「総人口の10%を移民が占める移民国家」へ変身すべきだと自民党の中川秀直元幹事長らが提言した。自民党国家戦略本部「日本型移民国家への道」プロジェクトチームの「人材開国!日本型移民政策の提言」だ。 日本が政治難民や優秀な人材を受け入れ…
「新たな冷戦が始まった “力治国家”への備えが不可欠」
『週刊ダイヤモンド』 2008年8月30日号 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 753 「新たな冷戦の始まり」。8月8日、北京五輪開幕の日の、ロシアによるグルジアへの軍事進攻を、欧米諸国はこのように形容する。 米国のライス国務長官は8月19日、ブリュッセルにあるNATO(北大西洋条約機構)本部での臨時外相会談に出席して、こう述べた。 「ロシアとの関係は、進攻前と同じ状態には戻らない…
「知られざる中国共産党の少数民族支配 突如投獄されたウイグル人学者」
『週刊ダイヤモンド』 2008年7月12日号 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 747 手元に、中国から届いた一通の手紙がある。差出人は、ウイグル自治区ウルムチ市にある第三監獄で10年以上服役しているウイグル人学者、トフティー氏。受取人は二人の子どもと東京に住む妻のラビアさんだ。 トフティー氏は東京大学大学院の博士課程で、中国の民族政策史とウイグル民族史を研究していた。博士論文は1…
「“モンゴル人ジェノサイド 実録”」
『週刊新潮』’08年6月19日号 日本ルネッサンス 第317回 モンゴルの研究で知られる宮脇淳子氏の『朝青龍はなぜ強いのか?』(WACBUNKO)に、「モンゴル人が中国人を嫌いな最大の理由」が次のように書かれている。 「清朝を継承したと主張する中華人民共和国が、清朝の領土をすべて回復しようと企んでいる点にある。清朝の支配者は中国人ではなかったし、満州皇帝はモンゴル人の同盟者だった。北のモンゴ…