「日本の惨めな外交を予言した中国高官の覆面座談会」
『週刊ダイヤモンド』 2008年10月25日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 761
「アメリカの外交政策に、拉致問題が影響を及ぼすことなんてありっこない」「最初からわかり切ったこと」「それをあたかも希望があるように報じてきた」「日本人って、その辺はお人好しだよね。われわれにはありがたいけどね」――。
ここで「われわれ」の立場から日本を論じているのは、中国外務省の課長補佐である。彼の指摘のように、米国は10月10日に北朝鮮に対するテロ支援国家指定を解除した。中国人課長補佐は、今の日本の立場は一九七二年の米中国交正常化当時と「まったく同じ」とも語る。
彼は、米中接近の結果、日本は取り残され苦汁をなめさせられると言っているのだ。この種の見方は、日本でもつとに指摘されてきた。目新しくはないが、中国がこのように見ていることを確認する点において、興味深い。
彼の発言は今年6月の座談会でのものだ。中国事情に詳しいジャーナリストの富坂聰氏が、自身の人脈で集めた4人の中央官僚による座談会だ。ちなみにその場でほぼ“言いたい放題”で語っているのは外務省課長補佐のほかに、「泣く子も黙る武装警察部隊北京総隊の大佐、国際協力機関の職員、国家シンクタンク日本担当研究員」である。これらの発言は『中国官僚覆面座談会 お人好し日本人フォーエバー!』(小学館)にまとめられている。
同書には、驚くほど率直な中国人の考え方、感じ方が吐露されている。たとえば、北京五輪について、五輪開催が「こんなに大変なことだとは誰も思わなかった」と語る。異民族弾圧や環境問題で非難され、とにかく「無事に祭典を終えられれば、それで御の字」が現実だと告白する。開会式への入場切符は、政府が一万枚も手元に置いて、素性の確かな人間だけを入れたそうだ。国内での聖火リレーが当初予定規模の半分に縮小されたことで、中国のメンツは損なわれたが、それも、もういいという感じで語っている。
中国人がこんな弱気を吐いているのである。司会の富坂氏が、中国をステレオタイプの視点で見てはならないと繰り返し強調する意味がよくわかる。
彼らのひと言からさまざまな中国の実情が見えてくる。中国では共産党と人民解放軍のどちらが優位に立つかについて、軍は党の指導下にあるとする見方と、党が軍に遠慮する立場だとの見方に分かれる。
『覆面座談会』では、全員がおのおの次のように指摘する。「中国で盛んに議論され始めているのが軍の国家化」「軍は国軍でなく、今も党の軍隊」「四川大地震で一早く現地入りした温家宝首相には軍を統括する権限はなく、軍は動かなかった」「党序列三位で、対外的には胡錦濤主席に次いでナンバー2にも映る総理は、党中央軍事委員会のメンバーですらない」。
つまり、彼らは、党には軍を動かす力はないと言っているのだ。四川大地震で軍の救援活動が功を奏さなかったもう一つの理由は、同地域の核関連施設や軍事施設を落ち着かせ、そこで働く人びとの大量脱出を止めることが最優先されたからだ。同地域を走る1,600キロメートルの石油輸送管の安全保護も、人命救助に優先された。瓦礫の下の幾万の命は、放置するのだという。
彼らが語る中国社会の腐敗の実態は驚くしかない。倫理観などには目もくれない彼らは、それでも自信を持って言う。米中戦わば、中国は戦争を貫徹できるが米国にその力はない、つまり、勝利するのは中国だと。さらに言う。台湾と戦争になれば、中国株を買えと。戦争で中国経済がダメージを受けるなどとはまったく考えていないのだ。
そしてダメ押しをする。東シナ海の日中共同開発は「中国の大勝利」であり、米中接近、米朝接近のなかで、「日本は惨めなドタバタ外交」を展開する運命にあると。彼らの本音を知るために、一読をお勧めしたい書である。
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