カテゴリー:北朝鮮・韓国

「 領土主権の意識なき民主党政権の危うさ 」

『週刊ダイヤモンド』   2010年8月7日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 849




一国の指導者が一ミリも譲ってはならない事柄がある。その一つが領土問題である。だが、民主党政権は初代首相の鳩山由紀夫氏も二代目の菅直人氏も、領土問題に関してはわれ関せずの姿勢を取る。この一事だけでも、民主党の現執行部には国政を担う資格がないのである。

7月28日、各紙は、「北方領土三世」に菅首相が会わなかったと伝えた。元居住者の孫世代の中学生7人が、27日に首相官邸を訪問したとき、菅首相は官邸にいながら会わなかったというのだ。

元居住者の子どもたちが首相官邸を訪れるのは、過去40年間、毎年の行事であるが、首相が会わなかったのは今回が5回目だ。ただし、過去の4回は組閣直前や国政選挙の最中だったりというタイミングでやむを得ない事情だったが、今回は会う意思さえあれば会える状況だったというのである。会わなかったという事実を、ロシアは、日本国の首相はもはや北方領土に無関心だという意味でとらえるだろう。

菅首相はこのところ、保育園を訪れて子どもを抱き上げ写真に納まるなど、世論を意識した行動が目立つ。子育てや教育についての関心が高いことを示し、支持を高めたいのであろう。

しかし、子どもたちの未来が、国の基盤がしっかりしているか否かによって根本的な影響を受けるのは当然だ。領土問題で譲ることは、子どもたちの未来に影を落とすことにもなるのである。

北方領土は旧ソ連が日本との中立条約を破って突然、1945年8月9日に侵攻を開始し、不法占拠して今日に至る。この問題の解決なしには、日ソ(日ロ)間の戦争処理は終わらない。だからこそ日ロ間にはいまだに平和条約が結ばれていない。国際法上は日ロ間の戦争処理は未完なのだ。そのような状況下で、ロシア政府は日本が降伏文書に署名した9月2日を事実上の対日戦争記念日に定める法律をつくった。

領土の不法占拠を正当化し、現状固定を是とする考えを法律にしたものであり、日本政府は強く抗議しなければならない。武正公一外務副大臣は7月26日、「わが国の立場に一定の配慮を行った」と会見で述べて、抗議はしない考えを示した。

このことはベタ記事ながらも報道された。すると、翌日、外務省欧州局参事官が、駐日ロシア臨時代理大使に電話をかけて、「日ロ関係にふさわしいとは思えない」と抗議した。

役人に電話を一本かけさせてすませたのだ。領土、戦争という重大問題に関して、こんな軽い対応ですませてよいと思うのか。この領土主権の意識のなさ。民主党政権の、これが限界だと言わざるを得ない。

竹島問題についても、民主党は本当におかしい。岡田克也外相は、今年4月7日、衆院外務委員会で韓国が竹島を不法占拠し続けていることに関して、「不必要な摩擦を招かないようにしたい。その言葉(不法占拠)は使わないと心に決めて交渉している」と述べた。

日本の立場を主張して摩擦が生じたと仮定して、それが必要な摩擦なのか不必要な摩擦なのかを、岡田外相はいったい何を基準にして測るのだろうか。基準は国益にかなうか否かでなければならない。摩擦回避のために主張せず、韓国の実効支配の現実をおとなしく受け入れるとしたら、日本政府は竹島を韓国の領土と認めたと受け止められるのは当然で、国益を損なうことはなはだしい。

竹島に関しては、鳩山氏が首相だった昨年暮れ、高校の新学習指導要領解説書の領土問題の部分から竹島の記述が削除された事実がある。文部科学省側は直前まで、竹島と北方領土の両方を、日本の抱える領土問題として併記する予定だったという。それを、発表直前に鳩山氏が指示して、削除させた。民主党政権は文字どおり、日本を危うくする政権だといってよいだろう。


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「 『テロの生き証人』の協力を得て金正日の嘘を暴くことが重要 」

『週刊ダイヤモンド』   2010年7月31日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 848


大韓航空機爆破事件の実行犯、金賢姫元工作員を、拉致問題に詳しい救う会全国協議会会長の西岡力氏は「北朝鮮のテロの生き証人」と呼ぶ。

1987年11月の大韓航空機爆破事件の顛末を供述し始めた段階で、彼女は北朝鮮の犯罪を暴く側に立ったわけだが、金日成政権の北朝鮮は、金元工作員の供述を全面否定した。今日に至るまで、北朝鮮は、事件は韓国によるデッチ上げだという立場を崩さない。

驚くのは韓国でも同じような見方がまかり通ってきたことだ。このあたりの、金大中、盧武鉉政権時代の常軌を逸した北朝鮮寄りの報道には信じがたいものがある。金、盧両政権はそのような主張を歓迎するかのように放置し、逆に大韓航空機事件は北朝鮮の犯行だと証言する金元工作員に自由な発言を許さなかった。

だが、韓国政府の方針は明らかに変化した。金元工作員は発言する自由を得て、来日も許された。日本政府は、一年以上の禁固刑を受けた人物の入国は許可しないという規則の適用をはずし、チャーター機、前首相の別荘、料理の機会など、例外尽くしで彼女を迎えた。

だが、最も重要なことは、彼女の協力を得て、金正日の嘘を暴き尽くし、国際テロである拉致の元凶は金正日だと生き証人に具体的に語ってもらうことだ。

今年3月の韓国の哨戒艦天安撃沈事件を、北朝鮮は大韓航空機事件同様、韓国によるデッチ上げだと主張する。対して米韓両国は7月21日、初めての外相・国防相会議(2プラス2)を開いて、厳しい政策を明らかにした。

共同声明では韓国国内および日本海、黄海で、今後数ヵ月にわたって合同軍事演習を実施し、北朝鮮のいかなる威嚇も抑止する強固な防衛態勢を維持すると発表した。加えて米国は独自の新たな制裁措置も発表した。

米国の国家情報長官に指名されたJ・クラッパー氏も20日、上院の情報特別委員会で「北朝鮮が再び韓国を直接攻撃する可能性がある」「現状は八七年の大韓航空機事件を想起させる」と、非常に厳しい認識を披露した。
朝鮮半島情勢の厳しさは中国の姿勢によっても増幅されている。天安事件のとき、日本政府は全面的に韓国を支持し北朝鮮の犯行を非難した。だが、国連でも、20~21日にベトナム・ハノイで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓3国の外相会議でも、日韓両国の北朝鮮非難の姿勢は歓迎されず、むしろ退けられた。中国が影響力を行使し、北朝鮮非難決議を骨抜きにするのである。

中国の目的はいまやいつ起きてもおかしくない北朝鮮急変事態を機に、北朝鮮に中国主導の政治勢力を打ち立てることだ。だからこそ、米韓両国の北朝鮮非難の声を抑え、北朝鮮を自陣営にとどめ置こうとする。南北朝鮮に、米国と中ソがついて戦った朝鮮戦争の構図は今も厳然と残っているのだ。

そうしたなかで、日本が果たせる役割は非常に大きい。そのことを誰よりも日本が自覚し、急変事態に際して日本は朝鮮半島の未来像として何を目指すのか、どのような協力体制を敷くのかを明確にしておかなければならない。

日本は韓国による朝鮮半島の自由統一を支持し、そのための手助けをすべきである。北朝鮮に中国主導の政治勢力が樹立されれば、南北分断は永遠に固定される。そんなことを許してはならず、朝鮮半島の人びとの意思を尊重し、韓国政府に全面協力すると宣言することだ。未来に向けての協力を通して、過去の歴史を超越するのである。

金元工作員の来日に象徴される韓国政府の変化は、日韓間に必要なのはこうした前向きの姿勢であるというメッセージである。仙谷由人官房長官が提言した55年前の日韓基本条約の見直しのような後ろ向きの発想は、百害あって一利なしなのである。

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「 北朝鮮を利する韓国与党の敗北 」

『週刊新潮』 2010年6月17日号
日本ルネッサンス 第415回




任期5年の3年目で丁度半ばに達した韓国の李明博大統領にとって、6月2日の統一地方選挙での大敗は痛恨の一事だった。4,000近い市長、道知事などを選ぶ今回の統一地方選は、与党ハンナラ党が圧勝すると予測されていた。だが、主要16自治体の結果を見ても、ハンナラ党が制したのはわずか6つ。7つで野党民主党が首長の座を奪回した。

韓国の哨戒艦「天安」が北朝鮮の魚雷攻撃で沈没し、北朝鮮非難が高まり、ハンナラ党は追い風を受けていたはずが、なぜ、敗北なのか。

5月20日、軍民専門家による合同調査団が、海底から回収した北朝鮮製魚雷のスクリューなどを示して、天安沈没は「北朝鮮製魚雷の水中爆発」によると断定した。動かぬ証拠が発見されたことで、北朝鮮による攻撃などあり得ないと主張してきた野党民主党をはじめとする親北勢力は「パニック」に陥った。

5月24日、李大統領は天安沈没を「北朝鮮による軍事挑発」だと明言し、北朝鮮船舶の韓国領海の通過禁止、開城工業団地と乳幼児向け支援を除く南北間の交易・交流の中断、国連安保理での北朝鮮の責任追及を発表した。国民の約7割が、北朝鮮の犯行だと考え、李大統領の「断固たる対応」を支持し、北朝鮮への怒りは高まった。

だが、北朝鮮シンパの民主党は世にも不思議な反論を展開した。「天安撃沈事件の真の原因は韓国政府の北朝鮮敵視政策にある」というのだ。彼らは次のように言い始めた。

「李政権が北朝鮮を追い詰めたからこそ、北朝鮮側は反撃に出ざるを得なかった」「北朝鮮への膺懲がなければこんな事件は起きなかった」、したがって、「ハンナラ党が選挙に勝って、対北強硬政策を続ければ、最終的には戦争になる」「統一地方選挙は、戦争か平和かの選択だ」


本末転倒なキャンペーン


ハンナラ党への支持は戦争につながり、親北勢力の民主党への支持は平和につながる、悪いのは北朝鮮ではなく、李大統領なのだという、本末転倒を絵に描いたようなキャンペーンが大々的に行われ始めたのである。彼らの主張は北朝鮮当局の主張とピッタリ重なる。まず調査団が「北朝鮮犯人説」を打ち出した当日、北朝鮮国防委員会は「捏造だ」との声明を発表し、強く反発した。

李政権が「断固たる対応」を強調すると北朝鮮国防委員会は、「限界のない報復打撃で対応する」と強調する一方で、韓国が報復に出た場合は「全面戦争で応える」というおどろおどろしい脅迫宣伝を開始した。5月25日には北朝鮮の対韓国窓口機関である「祖国平和統一委員会」が、遂に李大統領を「逆徒」と呼び捨て、「断固たる懲罰措置を取るほかなくなった」と述べた。

南北間にはいまにも戦争が勃発しそうな緊張が生まれた。同件について、5月31日に北朝鮮における3年の任期を終えて帰国途中日本に立ち寄ったドイツの北朝鮮大使、トーマス・シーファー氏の話を聞いたが、シーファー大使も、南北間の緊張が極度に高まっており偶発的な要因で南北戦争が勃発する危険性があると、強い懸念を表明した。大使は北朝鮮軍は強硬派と現実派に二分され、金正日総書記が明らかに影響力を失いつつある分、強硬派に引き摺られる可能性が増しているとも語った。

民主党は徹底的にこの種の議論を先導した。北朝鮮は民主党への支援活動を活発に行った。ネットには「戦争か平和かの選択だ」という北朝鮮の主張そのものであり、不安を煽る与党非難が溢れた。そして、北朝鮮の犯行を裏づける調査結果の発表から選挙までのわずか2週間で、彼らの反撃は大きな成果を得たのだ。対照的に、与党側は殆ど何の手も打たなかった。

統一日報論説委員の洪熒(ホンヒョン)氏が語る。

「李政権の閣僚たちは、金泰栄国防相を除いて、誰も危機感を抱きませんでした。政府側が反論しないために、国民、特に若い世代は野党の主張が正しいのだと思い始めた。保守派も、もう政府は支える価値がないと考え始めたと思います」

選挙はまるで、「盧武鉉大統領が生きかえった」ような結果を生んだ。ハンナラ党の指定席と考えられていた首都ソウルの市長選は、最終的に現職のハンナラ党市長呉世勲(オセフン)氏が勝ったが、0・6ポイント差という僅差での辛勝だった。相手は盧政権で韓国初の女性首相となった韓明淑氏だった。
江原道では民主党の李光宰(イグァンジェ)氏が知事に当選した。氏はいま、政治資金問題で司法の裁きを受けている。洪氏が語った。

「高等裁判所で有罪が確定すれば辞職を迫られます。また氏は兵役回避のために右手人差指を切り落としたことでも知られています。人差指なしには銃は使えません。日本風に言えば全共闘世代のような『386世代』の多くが同じことをしましたが、李氏は事故で指を切断したと説明しました。後に意図的な切断だったとわかったのです」

彼らが兵役を拒否する理由は、「米国の植民地の傀儡軍には入らない」というものだそうだ。


親北勢力が逆に強大化


忠清南道知事に当選した安熙正(アンヒジョン)氏は盧武鉉氏の「右腕」だった。

「盧武鉉氏の選挙戦で不法政治資金を集め、逮捕され有罪になったのです。盧氏が大統領になったとき赦免されました。こういう人物が、あちらでもこちらでも復権した。盧武鉉、金大中両政権の左翼的な勢力が蘇ったと、私は感じています」

天安沈没事件で、本来、弱体化すると思われた韓国内の親北勢力が逆に強大化するという不思議な結果が生まれたのだ。もう一点、見逃せないのは韓国軍機密情報が公開されてしまったことだ。

天安沈没の原因解明のプロセスで、同艦の構造、エンジン、搭載武器装備、人員などおよそ全てが公開された。本来機密であるべき情報の全公開は、20隻ある天安と同型艦の脆弱性を高める結果を生んだ。洪氏は、同じことが米軍に起きたと仮定して、米国はここまで情報公開するか疑問だと述べる。

「韓国軍には、北朝鮮に十分な警戒心を抱くというより、同情的な見方をする向きがあります。選挙の時期、現役の陸軍少将が、盧武鉉前政権時代の05~07年当時、彼が一つ星の階級だったときに、北朝鮮の工作員に、北朝鮮有事に対する韓米合同作戦『5027』の詳細を漏らしていたことが発覚しました。実名は非公開ですが、イニシャルはK、現階級は二つ星の師団長級(日本では陸将)です。彼は軍司令部の参謀長の地位にありました」

北朝鮮の衰退という現実の前で、韓国は内側から崩壊するのか。それほど北朝鮮の対南工作が成功したのかと考えこまざるを得ない選挙結果だった。

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「 北朝鮮の脅威に対する備えの強化は一刻の猶予も許されない 」

『週刊ダイヤモンド』   2010年6月5日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 840



「韓国の哨戒艦への北朝鮮の攻撃がわが国の国防政策立て直しにつながるかもしれません。それ以前に、北朝鮮の核実験と中国の東北工程(高句麗は中国の一部だった、つまり、北朝鮮は中国の領土だという主張)が、韓米同盟の危機を救ってくれました」



こう語ったのは韓国戦略問題研究所の権泰栄(グォン・テヨン)所長である。権氏は韓国きっての戦略論の専門家である。

去る3月26日夜、韓国海軍の哨戒艦「天安」が轟沈された事件は、5月15日に魚雷のスクリューが海底から回収され、北朝鮮の犯行だったことが証明された。李明博大統領は5月24日、これを「北朝鮮による軍事挑発」だと明言し、北朝鮮船舶の韓国領海の通過禁止、開城工業団地と乳幼児向け支援を除く南北間の交易・交流の中断、国連安全保障理事会での北朝鮮の責任追及を発表した。

日米両政府は全面的に韓国政府を支援すると発表したが、中国政府は「冷静な対応」を求め、非協力的である。

権氏は、国際政治の動きとは別に、北朝鮮の潜水艦の取った航路などを正しく把握し、その軍事的脅威に備える必要があると強調する。

「天安轟沈事件の2~3日前、北朝鮮の西海の海軍基地から2隻の小型潜水艦が出港したことは確認されています。300トン級と130トン級で、大型のほうは鮫(サンオ)級、小型は鮭(ヨノ)級です」

権氏が、現時点(5月21日)での推測だと断ってさらに説明した。

「鮫級がNLL(韓国と北朝鮮の黄海上の軍事境界線)を越えて韓国側水域に潜入し、天安から3キロメートル地点まで接近し位置を確認、それをもう一隻の鮭級が魚雷で攻撃したと見られています。もちろん、これからの調査で詳細はもっと明らかになりますが、今回の事件の重要なポイントは北朝鮮の非対称性の戦力が功を奏した点です。1,200トンの天安が130トンの鮭級潜水艦の発射した250キログラムの魚雷に撃沈された。北朝鮮が以前から小型潜水艦に力を入れてきた理由がわかります」

「統一日報」論説委員の洪熒(ホン・ヒョン)氏が興味深いことを語った。

「太平洋で行われる環太平洋合同演習(通称リムパック)には、韓国軍も毎年参加しています。1,200トン級の韓国の潜水艦も参加するのですが、8万トンから10万トンを超える米海軍空母や1万トン近いイージス艦など最新鋭の巨艦10隻以上を、わずか1,200トンの潜水艦が沈めるシミュレーション結果になっています。その間、米海軍側は一隻の潜水艦も発見出来ないのです。天安を沈めた北朝鮮の鮭級は、リムパックに参加する韓国海軍の潜水艦の約10分の1のサイズです」

小が大を破壊するのだ。北朝鮮の韓国攻撃は、この非対称性戦力によって成功した。潜水艦の威力はわかっていながら、その防御はかなり難しい。

李大統領の北朝鮮非難に反発し、北朝鮮は「全面戦争」も辞さないという強烈なメッセージを発表した。北朝鮮の恫喝はあまりにおどろおどろしいためにかえって非現実的に聞こえがちだが、その言葉どおりの行動を取りかねないのが金正日政権の異常さである。

権氏が指摘した。

「北朝鮮の対韓国侵入工作特殊部隊はかつて12万人でした。現在は18万人です。核や生物兵器などの大量破壊兵器とともに、この特殊部隊は深刻な脅威です。韓国政府は韓国独自の国防力の強化と、韓米同盟の再強化にとりかかっています」

しかし、と、権氏は述べる。

「北朝鮮有事の際の韓日連携についての話し合いは進んでいないように見受けます。また、普天間問題で日米同盟が揺れています。韓国は非常に心配しています。韓国のためにも日米同盟を強化してほしいのです」

権氏の訴えを、鳩山由紀夫首相にこそ、聞いてほしいものだ。

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「 北朝鮮関与を否定したい李大統領 」

『週刊新潮』 2010年4月22日号
日本ルネッサンス 第408回





突然真っ二つに割れて沈没した韓国海軍の哨戒艦「天安」、韓国沿岸作戦の主力艦の轟沈という一大事件への韓国政府の対応は奇妙である。

沈没から2週間が過ぎたいま、北朝鮮が関与した可能性が言及されつつある。かといって、北朝鮮との決定的な対立を好まない李明博大統領が、どこまで真相解明を進めるかについては、未だ不明瞭だ。

沈没までの経緯を振り返ってみよう。天安(1,200トン)は3月26日夜、韓国北西部沖の黄海で警戒任務中だった。海上の軍事境界線(NLL)近くの同海域は北朝鮮の西海岸を監視する、南北対立の最前線だ。天安が展開していたのは、NLL近くの白翎島(ぺニョンド)の、北朝鮮側から見れば島影に隠れる海域、つまり、北朝鮮のレーダーに映りにくく、その分攻撃されにくい海域だった。

だが、そこで午後9時22分、「爆発」が起きた。韓国地質資源研究院の観測所が地震波としてこれを観測したのが9時21分58秒だ。その1秒後には強力な爆発があったことを示す音波が1・1秒間隔で2回にわたって観測された。「ドーンドーンという爆発音を2回、聞いた」という生存者らの証言を裏づけるものだ。

真っ二つに割れた天安の艦尾が沈んでいく様子は、白翎島の韓国海兵隊のカメラに記録されていた。異変をとらえてカメラが作動し始めてからの撮影であるため、爆発の瞬間はないが、公開映像から艦尾がほぼ1分で、あっという間に沈んだのが見てとれる。爆発から沈没までは約2分、乗組員104人のうち46人が犠牲になった。艦首の自室で就寝中だった艦長は閉じ込められたが、扉を壊して脱出、船上に出た。

少し離れた海域にいたもう一隻の哨戒艦が現場海域に急行し、レーダーに映った「42ノットで走るもの」を見つけて攻撃した。42ノットは時速78キロだ。これは後に「鳥の群れ」だったと発表されたが、午後9時半、暗闇の海を、果たして鳥は群れをなして飛ぶのだろうか。


長官の手元に一枚のメモ


天安の艦首に残っていた乗組員58人の救助が終わったのは11時過ぎ、艦首が完全に沈んだのが日をまたいだ27日の午前1時だった。

この間、李大統領は直ちに緊急安保閣僚会議を招集、翌日まで断続的に4回会議を重ね、天安沈没の原因は「艦内で爆発が起きた」「岩礁にぶつかった」「老朽艦ゆえの金属疲労だった」など、事故の可能性を前面に打ち出し、北朝鮮の関与を、事実上、否定した。

韓国の国会は原因究明のため、4月2日、金泰栄(キム・テヨン)国防長官を呼んで質したが、長官の答弁は青瓦台(大統領府)と軍当局の事件に対する見方の相違を全国民の目に晒す結果となった。詳細を韓国の有力紙『朝鮮日報』から拾ってみる。

与党ハンナラ党議員の問いに、長官はまず、艦内爆発説の可能性を否定した。「可能性は非常に低い」、「船体内での爆発であれば、砲弾などが爆発していたはずだが、その可能性はほとんどない。自分は砲兵将校出身で多くの砲弾を取り扱った」と述べたのだ。次に、座礁について、その場合は船底に穴が開くが2つに割れるケースはこれまで見当たらないとして退けた。消去法で原因と思われる要素をひとつずつ潰していくと、残るのは「機雷か魚雷」である。どちらがより可能性が高いかと問われて金長官は答えた。

「どちらも可能性があるが、魚雷の可能性の方がやや現実的と思う」
魚雷を韓国艦船に向けて発射する能力、意図、動機などを考えると、北朝鮮に行きつかざるを得ない。金長官は、事実上、北朝鮮の攻撃によって撃沈されたと考えるのが妥当だと、答弁したわけだ。
ところが、そのあと、長官の手元に一枚のメモが届いた。それをインターネットメディアの「ノーカットニュース」が報じた。メモは手書きで、内容が拡大されて画面に映った。そこには、「次の答弁では、魚雷以外にも複数の可能性があるとの趣旨で発言せよ」と書かれていた。結果、長官は質疑応答の後半部分で、先に述べた北朝鮮の関与以外に考えられない魚雷攻撃の可能性を否定し、すべての可能性を検討しなければならないと、自身の発言を変えたのだ。

大統領府は直ちに弁明した。これは大統領の指示ではなく、国防長官秘書官が国会中継を見て国防部に伝えたのだが、国防部が「行き過ぎた」解釈で大統領の意向だと誤解し、国防長官にメモを渡したというのだ。

早稲田大学客員研究員の洪熒(ホン・ヒョン)氏が指摘した。


北朝鮮を疑う情報は否定


「大統領は、軍に如何なる予断も慎重にせよと指示しています。26日夜から27日朝にかけての安保閣僚会議の出席者は大統領、首相、大統領室長、大統領の外交・安保首席秘書官、国家情報院院長、国防長官です。国防長官は北朝鮮の関与を、当然、疑っていました。それは2日の国会答弁からも明らかです。しかし、国防長官を除く5人は、北朝鮮関与の証拠は何かと、問うたのです。この5人は軍を指揮したことのない人々です。それが、事件発生直後の夜中の会議で、専門家である国防長官の意見を聞かず、北朝鮮犯行説の可能性を語るなら証拠を出せと迫った。その時点で証拠を出せると考える方が不合理です。結局、素人たちが多数決で、予断し、北朝鮮による攻撃の可能性を打ち消した。実に愚かです」

事件発生から半月、李大統領は一度も同事件に関して直接国民に語りかけていない。46名もの兵の命が奪われた一大事件で国のトップが一言も発言しないのは異常である。加えて青瓦台から発信される情報は北朝鮮犯人説を打ち消すものばかりだ。金国防長官へのメモに象徴されるように、北朝鮮を疑う情報は積極的に否定する姿勢が目立つ。その理由を、洪氏は大統領が南北関係を進展させたいと考えているからだと語る。

「大統領の側近を見れば、大統領が北朝鮮関与の可能性を否定する理由が自ずと解ります。金大中、盧武鉉と二代続いた左翼政権の主要人物がそのまま政権中枢に残留していて、影響されているのです」

一例が統一秘書官の鄭文憲氏だと洪氏は語る。

「(2000年の)6・15(金大中・金正日首脳会談)を、当時、反金大中だった野党ハンナラ党の議員だったのに支持したのが鄭氏です。北朝鮮の主張どおりの内容となった6・15宣言の履行が持論で、その立場から李大統領に影響を与えています」

金大中、盧武鉉路線の鄭氏ら、現在李大統領を取り巻く人々は北朝鮮の脅威を最小化して考える。有事の際の中国介入の可能性も極めて低く見る。彼らに影響される李大統領の危機管理能力は極めて低い。このことを前提に、日本は朝鮮半島政策を考えなければならないだろう。

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「 朝鮮高校の授業料無償化は不当だ 」

『週刊新潮』 2010年4月15日号
日本ルネッサンス 第407回




高校授業料無償化法が3月末の参院本会議で、与党、公明、共産などの賛成多数で成立した。朝鮮学校はじめ各種学校への支給については結論を出さず先送りした。いずれ文部科学大臣の下に専門家委員会を設けて結論を出させるそうだが、政治主導といいながら、この内閣は大事なことほど自ら決められないのである。

小沢一郎民主党幹事長も、鳩山由紀夫首相も、一日も早い予算執行を促してきた。明らかに参院議員選挙を意識した対策だ。子ども手当も高校授業料無償化も家庭に当面の「実益」をもたらす。たとえそれがより大きな借金となって、将来、子供世代が返済しなければならない性質のものだとしても、実際に幾許かの現金が転がり込めば、有権者は「政権交代を実感」し、民主党支持が固まると考えているのだ。なんと、有権者をコケにした考えであろうか。

朝鮮学校の問題点を見てみよう。井戸敏三兵庫県知事は法案成立以前から朝鮮学校を無償化の対象に加えると明言してきた。一方、橋下徹大阪府知事は朝鮮総連との関係を絶つことなどを補助支給の条件とした。井戸知事は橋下知事に関して、「(補助支給は)拉致問題と引き換えにするようなことではない」と批判したが、井戸知事こそ間違っていないか。

日本において、在日朝鮮人の子供たちが民族差別を受けたり、教育を受ける権利を侵害されたりすることはあってはならないが、高校授業料無償化問題で問うべきは、朝鮮学校がこれまでどんな教育をし、どんな役割を果たしてきたかである。その点で、朝鮮学校と朝鮮総連の関係は精査されなければならない。先述したように、橋下知事は、朝鮮学校が朝鮮総連との関係を絶つことなどを支給条件としたが、両者の相互関係の断絶は土台無理な話である。


総連が教員人事まで

3月12日の『産経新聞』は、金正日総書記の「民族教育強化」の方針の下で、朝鮮総連から全国の朝鮮学校幹部に、高校授業料無償化獲得のために運動を展開せよとの指示が出されていたことを報じた。これは朝鮮総連の内部文書から判明したもので、当の内部文書を、北朝鮮の民主化に取り組むNPO「RENK」代表の李英和関西大教授が3月11日に記者会見を開いて公開した。

李教授が改めて取材に応じた。朝鮮学校が朝鮮総連との関係を断ち切ることは可能かと問うと、氏は「相当難しい」と、次のように述べた。

「私が記者会見した週の週末、全国の朝鮮総連幹部が一堂に会して緊急会議を開いたのです。意見は二分され、改革派は、たとえば橋下府知事のような外部意見を受け入れて無償化を勝ち取るのが得策だと述べたそうです。対して、主流を成す守旧派は、そもそも朝鮮学校は首領様の学校だ、教科内容も標語も変えることは出来ないと、強硬だったそうです」

橋下知事が要求した金正日総書記の肖像画を外したり、総書記大礼賛の授業内容を変更するようなことは起こり得るのか、改革派は勝てるのか。李教授は笑って否定した。

「あり得ませんね。勝負は明らかです。現状維持のまま、彼らは授業料無償化の予算を日本政府と地方自治体からせしめるつもりです」

特定失踪者問題調査会代表の荒木和博氏も、朝鮮学校は朝鮮総連と関係を絶つことは出来ないと見る。氏は、総連が教員人事まで含めて、朝鮮学校の管理運営に当たっている事実を認識せよと語る。

「『在日朝鮮人子弟の民族教育を考える懇談会』(以下懇談会)がまとめた資料に『総連関連担保物件と借入金状況』というものがあります。これによると、朝鮮学校の敷地を担保にして朝鮮総連関係者が巨額の借り入れを行っている案件が目立ちます」

資料は98年7月時点のものだが、さまざまな不動産を担保にして朝鮮総連関係者が億単位の資金を調達した案件が並び、幼稚園から大学まで各種朝鮮学校が半数以上を占めているのが目を引く。融資が不良債権化したとき、担保の土地は、学びの場との理由で回収対象から外された。

さて具体例である。例えば生野朝鮮幼稚園を担保に18億9,000万円が借り入れられている。他にも生野朝鮮初級学校(小学校)を担保に2億円、京都朝鮮初中級学校(小・中学校)で40億円、神戸朝鮮高級学校(高等学校)で10億3,000万円、東京朝鮮第八初級学校で42億円、総連中央学院で100億円、朝鮮大学校横の土地で109億円といった具合だ。

先述のように、これは98年7月の数字であるから、現在の状況は変化しているだろう。ただ、ここから見えてくるのは、各地域の各種朝鮮学校を担保として巨額の借り入れがあったという事実と、その資金を朝鮮総連がどのように使ったのかという疑惑が、現在も未解明であることだ。これまでの経緯から、朝鮮総連が資金を北朝鮮に送り、金正日を支えてきたことは十二分に考えられる。荒木氏も語った。


日本国民の税金

「かつて、こんなことがありました。修学旅行で北朝鮮を訪ねる朝鮮学校の生徒らに、万景峰号への乗船前に、朝鮮総連新潟県本部が現金入りのバッグを、中身を知らせずに持ち込ませ、乗船後に、船内で回収したそうです。こうした状況が罷り通ることは、つまり、朝鮮学校を犯罪者養成機関、或いは直接的な犯罪機関として総連側が扱っているからと言ってもよいのではないでしょうか」

荒木氏はもう一点、重要なことを指摘した。朝鮮総連や朝鮮学校が拉致事件と無関係ではないという点だ。

「大阪から1980年に拉致された原敕晁(ただあき)さんの事件に関連して、大阪朝鮮初級学校の元校長、金吉旭が国際手配されています。朝鮮学校関係者は拉致事件に関係しているだけでなく、その他の犯罪にも手を染めています。たとえば78年7月4日、広島朝鮮学校出身の青年らが大量のヘロイン密輸事件で逮捕されました。この犯罪は広島朝鮮高校教員で朝鮮青年同盟県委員長の金徳元が計画して、自分の教え子たちを巻き込んで実行したものでした。金徳元は指名手配されましたが姿を消したままです。拉致問題も未だに解決されていません。そんな状況にあるのに、国民の税金を朝鮮学校に注入するのは、まさに、日本人の人権及び日本国の主権の侵害です」

授業料無償化で注入されるのは日本国民の税金である。であれば、対象となる教育機関は、日本国の法律を守り、拉致をはじめとする日本人への犯罪を如何なる形ででも支えていてはならないのは当然だ。拉致を命じた金正日総書記の写真を掲げ、未だに首領様として讃えるのでは、朝鮮学校側がいくら教育の権利を主張しても、論外である。拉致問題の解決と朝鮮の人々の幸福を望みつつも、日本国民の税金が、直接・間接的に金正日を支える結果になることは断固拒否しなければならない。


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「 改名申請者の数が増える韓国 国力を衰えさせる危うさはないか 」

『週刊ダイヤモンド』   2010年4月10日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 833




韓国人の50に1人は改名を望み、親がつけてくれた名前をむやみに変えてはならないという儒教の伝統がすたれつつある。3月31日付の週刊新聞「統一日報」のコラム「裏窓」がこのように指摘していた。

非常に興味深い。もう少しご紹介すると、韓国で改名はもはやスポーツ選手やスターだけのことではなくなり、一般人でも珍しくなくなってきているという。2000年から09年までの10年間の改名申請者は84万4,600人あまりに上った。05年以降急増しており、今後も申請者は増加し続け、今年は20万人を超えることが「確実視」されているそうだ。

いったい、05年に何があったのか。その年の11月、最高裁判所が改名の申請は、「原則的に許可しなければならない」との判断を下したのだ。法の網をかいくぐったり、犯罪隠蔽の意図が認められない限り、改名を許すべきだという司法判断で、許可率は92%に達している。

隣国の内政にむやみに口を挟みたくはないが、この判例には、現在日本で論じられている夫婦別姓・親子別姓法案と同質の危うさを感じる。いずれも、その国の伝統的価値観を根底から否定し、究極的にはその社会の基本部分に深刻な質的変化を及ぼすと思われる。

韓国最高裁の右の判断は、盧武鉉政権下で下された。左翼思想の盧大統領にとって、韓国の儒教の伝統は否定すべきもので、むしろ北朝鮮の金日成、金正日体制の価値観のほうが重要だったはずだ。儒教の伝統を軸に織り成してきた伝統的な家族の絆も、盧大統領は否定したかったのではないか。国家の基本の最小単位である家族の力を弱めれば、韓国の国力はおのずと衰え、相対的に北朝鮮有利に傾くからだ。

そのような大統領の考え方、つまり政権の動向に、司法が敏感に反応した結果が、改名容認の最高裁判断だと思われる。こう考えるのにはそれなりの理由がある。

当時の最高裁長官は現在もその職にある李容薫(リ・ヨンフン)氏である。氏は、金大中大統領に見込まれ、同政権のときに最高裁判事に任命された。2000年10月には判事を退任して弁護士となった。盧大統領が弾劾され、危うく大統領職から追放されそうになった04年には盧大統領の元に駆けつけ代理人として弁護した。弾劾を免れた盧大統領は、同年、李氏を公職者倫理委員長に任命した。これは公職にある人々の不正を正す役割だが、盧大統領の政敵つぶしの格好の手段となった。そして、李氏は翌05年9月、最高裁長官に抜てきされた。長官就任後まもなく下した判断が改名にまつわる判断だった。

韓国の人々の改名の理由は他愛ない。いちばん多いのは「珍名だから」。男児が欲しい、女児はもう欲しくないという意味で、両親が女児に「末順」や「終末」、日本風にいえば「末子」や「留子」的な命名が少なくないそうだ。

気持ちはわからないでもない。それでも幾十万人もが改名を希望するのは驚きである。つい、韓国の韓国人と日本の在日の人びとを比べてしまう。日本では民団を中心に民族のアイデンティティを大事にせよとの教育や指導が在日の人びとに行われている。民団は地方参政権取得には大層前向きだが、国籍取得には後ろ向きだ。その理由の一つが、帰化に際して改名を迫られるというものだ。しかし、日本政府が国籍取得の条件に改名を求めることは、もはやないのが実態だ。日本は民族の出自を名前に残すことを正当な希望として受け入れている。

民団はまた、在日の人々に文化的アイデンティティをも保たせようと努めているように思える。その姿は好ましいが、いつの日か、海外の朝鮮民族は本国の人びとよりもっと朝鮮民族的だといわれるような変化が本国で起き続けている気がしてならない。


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「 『竹島の韓国領土』化が鳩山政権で加速している 」

『週刊ダイヤモンド』   2010年3月27日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 831




「Dokdo Island belongs to Korea」〈独島(竹島)は韓国の領土である〉
遠くからも鮮明に読み取れる大看板が、米国西海岸のロサンゼルスに出現した。以下は長年ロスに住む友人、櫻井雄一郎さんの憂いのメールである。

「我が家に近いフリーウェイ60に、こんな大看板が立ちました。ダウンタウンに向かうこの幹線道路は毎朝通勤の車で大渋滞します。夥しい数の車が、バンパーとバンパーがくっつくように、止まったりノロノロ運転したりするわけで、フリーウェイの脇にそびえる大看板は必ず目に入ります。嘘も百回言えば本当になる。非常に心配です」

看板には近郊の韓国人が経営するDiamond Family Spaというサウナ店が立てたと書いてあるそうだ。祖国を思う在米韓国人の単独行動かもしれず、一方で、資金提供者や大看板設置の許可を得るための法的助言者らが別にいるかもしれないが、詳細はわからないと、櫻井さんは語る。

氏は心配のあまり日本総領事館に通報した。3月8日のことだ。「領事館からは『気にかけていたところです』『館内でも改めて相談してみるつもりです』というメールが返ってきました」と櫻井さん。

それから10日が過ぎた。領事館からはなしの飛礫(つぶて)だ。反応がないために、櫻井さんは再び問い合わせた。すると、担当者は留守でほかに事情のわかる人物はいないということだった。

想定内の無責任な対応である。竹島の韓国による実効支配は周知のとおりだ。竹島は韓国領という教育を国全体で展開してきた結果、韓国の国民は歴史を冷静に見ることもなく、そう信じてしまっている。だが、ここまで竹島問題が悪化するに至ったのは、一にも二にも日本国政府の責任である。

「産経新聞」の黒田勝弘氏が、雑誌「SAPIO」の連載「ソウルの風」で憤っていた。氏は先年、韓国政府が2004年の記念切手として「独島切手」の発行を予定しているという情報を入手して日本大使館に教えたそうだ。すると大使館、つまり外務省はどうしたか。「外交的抗議をしたが、その事実を公表せず、後で筆者(黒田氏)が問い合わせたところ『抗議しておきました』と言」ったそうだ。

外にはいっさい公表せず、ひっそりと抗議して一件落着としたのだ。この姑息なやり方こそ、外務省の常套手段だ。「抗議した」事実をアリバイとして残し、責任を回避する。しかし、韓国側との摩擦を恐れるあまり、いっさいの情報は「館内」つまり省内にとどめる。韓国側の不法不当な行状はできるだけ日本国民には知らせない。知らせると、日本国民の感情にも波が立ち、外交的摩擦が生じ、外交も影響される。そこで、外務省は立ちすくんでしまうのだ。

だが、竹島をはじめとする領土問題で外務省だけを非難するのは妥当ではない。外交は政治の責任だからだ。その点で、従来の政治以上に民主党政治が日本の国益を損なうのは間違いない。

鳩山由紀夫首相は「日本列島は日本人だけのものではない」と主張して憚らない。首相の地元の北海道では、教職員組合が「竹島は韓国の領土」だと教えている。首相は北教組教育に疑問を呈すどころか、昨年12月、首相自身、日本の教科書解説書に竹島問題を載せないように指示していた。

12月25日に判明したのは、高校の新学習指導要領解説書の領土問題の記述部分から竹島の二文字が削除されていた事実だ。文部科学省側は直前まで竹島を北方領土とともに明記する予定だったのだが、発表直前に鳩山首相の指示で竹島が削除されたのだ。

日本列島は日本人だけのものではないと考える首相の下で、外務省が、韓国との摩擦覚悟で日本の竹島領有権を主張するとは思えない。鳩山政権はまさに日本の土台を削り取り、崩していく政権となる。

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「 失敗に終わった北朝鮮のデノミ 破綻した金体制を支える中国 」

『週刊ダイヤモンド』   2010年3月13日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 829




昨年11月末に行ったデノミについて、北朝鮮が通貨供給や商品流通などで混乱を招き、当初の目的は達成できなかったと総括していたことが明らかになった。北京発共同電によると、「団結して難局を乗り切る」ようにとの通達が、今年2月半ばに在外公館に送られていた。


北朝鮮でデノミが行われたことをいち早く国際社会に知らせたのが「北朝鮮知識人連帯」の一員だった。「連帯」は脱北して韓国に逃れてきた知識層、たとえば大学教授だった人々などが構成する組織で、北朝鮮の現状分析に少なからぬ貢献を果たしてきた。

昨年暮れ、ソウルで私は「連帯」の主要な人物らに会ったが、その中には、デノミ情報を世界に初めて伝えた人物もいた。彼らが披瀝したデノミについての独自の考え方は、経済学から見るデノミの解釈とは異なり、北朝鮮の人びとの暮らしそのものを彷彿とさせるものだった。以下、彼らの話を紹介してみたい。家族が北朝鮮に残っているために発言者は匿名である。

デノミの第一報をもたらした人物は、「今回の貨幣改革の最終的な目標は社会主義への回帰」だと断定した。

右の「第一報者」は、デノミを支持しているのは社会の底辺の庶民と高職者で、最も深刻な打撃に苦しんでいるのが、中間層だと語った。

「政府の高職者らは市場でカネ儲けをしている中間層に頭が上がらなくなっているのです。たとえば職場の指導的立場にいる人間が、今日は商売のために出勤しないと言っても、文句は言えない状況が存在します。なんといっても、政府に頼るよりは市場で商売をして儲けるほうがはるかに効率がよい。小ガネを蓄えて経済力をつけた部下と、政府機関の上司というだけの人間の力関係はすでに逆転しています。デノミはこの逆転関係を元に戻すという意味で、高職者に歓迎されているのです」

では庶民はどうか。第一報者が語る。「北の庶民は国営企業や共同農場で働いている人びとのことです。彼らの収入は、約二割が市場から、八割が国営企業での月給だと考えてよいでしょう。今回の改革では、国営企業で得ていた月給、たとえば2,300ウォンとします、その2,300ウォンを、改革後ももらえるのです。100分の1のデノミをしたのに、同じ額の給料をもらえるということは、実際には給料が100倍になったということです。以前はコメが少ししか買えなかったのに、今は十分に買える。庶民がデノミを支持するのは、こういう理由からです」。

中間層についてはこう語る。

「この定義が正しいかどうかは別にして、中間層とは、北朝鮮の破綻した経済のなかで、自分なりに生き残る道を切り開いた市場の主役たち、といえばよいでしょうか。彼らはさまざまな工夫をして、なにがしかの資本をため込み、商売をしてカネ儲けに成功してきた人たちです。今、北朝鮮の経済は、じつはこうした人々によって支えられている。しかし、今回、彼らこそが狙い撃ちされたわけです」

これらの人びとのほかに、文字どおり生か死かの問題に直面するのが高齢者と子ども、それに独身の女性たちだという。つまり職場もなく、自分でカネ儲けをする手段も持たない人びとだ。

「北朝鮮政府は、これらの人びとの生活を保護するとして、国家食糧販売所をつくり、すべての食糧をここで売らせる、つまり市場では売らせないことにしました。国家が経済のすべてをつかさどるということです」

その試みが失敗したと、北朝鮮当局が正式に認めたわけだ。金正日体制は事実上破綻したということだが、その金正日氏が近々、中国を訪問するという情報がある。中国訪問で彼が得たいと考えているのは、種々の援助である。中国こそがあの金正日を支え、国民全員を人質にした独裁体制を守り続けていることが、以上からも明らかだ。

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「 金正日の経済失策、脱北詩人の眼 」

『週刊新潮』 2010年1月28日号
日本ルネッサンス 第396回



「北韓(北朝鮮)では、民心はドルの価値と正比例します。ドルの支配力が日増しに金正日総書記の神格化を圧し潰すはずです」

こう語るのは脱北詩人の張真晟(チャンジンソン)氏だ。氏は、かつて当欄で紹介した詩集『わたしの娘を一〇〇ウォンで売ります』(晩聲社)の著者である。

氏は長く金正日総書記に仕え、その人物像や業績を讃える幾多の詩を書いた。1997年に脱北して金正日に大打撃を与えた黄長燁(ファンジャンヨプ)氏さえ、総書記の三男、正雲氏について知らなかったほど秘密の多い人物が金正日である。だが張氏は金正日の側近くで年月を過ごした。それだけに、氏の語る北朝鮮情報は、黄長燁氏のもたらす情報に較べてさえも、驚嘆と傾聴に値する。

09年11月末に明らかになった北朝鮮のデノミネーション(通貨改革)について張氏が分析した。

「デノミと一緒に断行されたもうひとつの措置に注目すべきです。平壌の国家保衛部が全国の闇ドル両替屋に一斉検挙の網をかけた。これは全土にまたがる闇取引市場を潰す市場クーデターでした」

北朝鮮における公の外貨取引は89年に始まったという。88年のソウル五輪に対抗して、翌年平壌で「世界青年学生祝典」が開催された。訪れる外国人が北朝鮮で外貨を使用出来るように、金正日は特別のウォン「外貨交換札」(以下交換札)を作った。ドルとの交換レートは1対2だった。

交換札は、印刷から預金及び貸し出しまでの全てを、金正日の実妹の金敬姫(キムキョンヒ)が運営する統一発展銀行が管理した。こうして平壌で外貨商店が急増し、同行は外国銀行との信用取引を認められた北朝鮮初で、唯一の国際銀行となった。同行と日本の関わりについて、張氏が述べた。

「統一発展銀行を支えたのが朝銀信用組合の日本からの送金でした。最初の6億円が初期の投資資金となりました。後に朝銀が破綻したのは、金総書記が自分の王朝の神格化のために交換札をまるで空から降ってくる無料の外貨のように、束でバラ撒いたからです。朝銀の破綻で朝鮮総連は麻痺し、金正日は自分で自分の首を絞める結果となりました」


偽ドル・ロンダリング


世界青年学生祝典は北朝鮮に大きな赤字を残した。金正日の交換札の浪費も続いた。ドルと交換札のレートが1対2から1対10に落ち込むのにさほど時間はかからなかった。

統一発展銀行から引き出される交換札には北朝鮮政府の信用の裏打ちがあるはずだが、北朝鮮政府の信用そのものが空疎なため、為替レートは坂を転げ落ちる雪だるまのように膨れ上がり、97年には遂に1対7,000になった。

「つまり紙屑になって消えたのです。そのときから、今度はドルと北韓ウォンの直接交換が始まりました」と張氏。

その前年から金正日は北朝鮮国民に「苦難の行軍」を強いていたが、その中で300万人が餓死した。配給がとまった代わりに市場の設置が許され、市場は急拡大した。そこで通用するのは価値の裏打ちを欠くウォンではあり得ない。ドルである。

「北韓政府はまず、ドルとウォンの為替レートを1対150に設定しました。ところがレートはまたもや急落、09年の年初には1対4,000になりました。平均的労働者の月給が2,000ウォンにすぎないのに、です。北韓政府にとって米国は理念の敵、同時に資本の敵でもあります」

金正日は遂に市場の力に押しまくられた揚げ句のインフレを認め、00年7月1日、市場価格を反映した賃金政策を断行、賃金は大幅に増額された。これは金正日がまたもや判断を誤った瞬間だと、張氏は言う。

「賃金に市場価格を反映させ、同時に市場そのものを押さえればウォンの価値を守ることが出来ると、彼は考えたのです。しかし、市場は増刷されたウォン紙幣によって活性化し、商品価格は天井知らずとなりました。生産のない市場における輸入対消費という不均衡な経済構造が価格高騰をもたらすのは当然です」

ウォンの実勢価格が再び続落し、外貨の闇取引も急増した。01年、金正日は全ての市場に公式の外貨両替所を設置させたが、効果はなかった。そこで彼は偽造ドル紙幣を北朝鮮の貿易会社に割り当て始めた。

「米国政府がスーパーKをはじめ、北韓によるドル偽造に厳しい監視体制を敷いたこともあり、北韓には大量の偽ドルが蓄積されたのです。金総書記の秘密資金を管理する39号室傘下の金融機関、大成銀行は北韓の全貿易会社に偽造ドルを割り当て、2対1で本物にして返還せよと命じました」

偽造ドル10万ドルを受け取り、本物5万ドルを上納せよということだ。北朝鮮の全機関、全貿易会社が死に物狂いでマネーロンダリングに走ったのだ。米国の摘発でさらに追い詰められると、偽造ドルは国内市場で取引きされるようになり、ただでさえ脆弱な北朝鮮の金融流通システムはさらに危機的状況に陥った。




崩れ落ちようとする巨大ダム

米国は05年9月、偽ドル、麻薬取引き、テロ支援などの理由を掲げて北朝鮮に対する金融制裁に踏み切った。北朝鮮と取引きをする金融機関に、米国の金融機関との一切の取引きを禁止するというもので、それはその金融機関の市場からの撤退、つまり閉鎖を意味していた。対象となったのがマカオの銀行、バンコ・デルタ・アジアだった。

金正日は米国の金融制裁を非常に恐れ、制裁解除に向けて必死の交渉を行った。その理由は、金正日が世界の銀行に保有している50億ドル(約4,500億円)を超える資金を引き出せなくなり、軍や組織を支配出来なくなるからだと考えられた。ところが、もっと別の理由があったと張氏は語るのだ。

「米国の制裁で北韓内でドルがさらに暴騰し、市場不安も高まり、政権の命が脅かされます。為替レートの防御能力が皆無の北韓ほど『外貨による侵略』に脆弱な国はありません。ドルの支配力こそが政権を潰しかねないのです」

だからこそ、金正日は次なる抵抗に進んだ、それが去年暮れの通貨改革だというのだ。ウォンを政府のコントロールの下に引き戻し、貨幣価値を自力で調整しようとしたわけだ。外貨闇取引所への一斉検挙も平仄が合う。だが、と張氏は反問する。

「北韓は崩れ始めた巨大ダムのようなものです。砂袋を積んで持ちこたえられるものでしょうか」

政治空白で漂流する鳩山政権は、近い将来予見されるこの朝鮮半島情勢の流動化と有事に対処出来るのか。崩れ落ちようとする巨大ダムを、それでも支え続けて、北朝鮮への影響力確保を至上命題とする中国に、対処出来るか。そのような危機に備えての米韓両国との戦略を構築出来るのか。展望は果てしなく暗い。

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プロフィール

櫻井よしこ Yoshiko Sakurai

職歴

1971~74
クリスチャンサイエンスモニター紙
東京支局勤務
1975~77
アジア新聞財団
DEPTHNEWS  記者
1978~82
アジア新聞財団
DEPTHNEWS  東京支局長
1980~96
TVニュースキャスター
1980~現在
ジャーナリスト

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