「 岡っ引国家にはなるな 」
『週刊新潮』 2002年2月7日号 日本ルネッサンス 第5回 BSE(狂牛病)、日本人拉致事件、工作船。 3つに共通するのは日本の情報能力の欠落である。情報がとれない、分析が出来ない、あえて情報をとらないといういびつな姿である。 情報の世界にはヒューミント、シギント、エリントなどという一般の語彙では聞き慣れない言葉がある。ヒューマン・インテリジェンス、シグナル・インテリジェンス、エレクトロ…
「 倫理を失った雪印は解散せよ 心ある社員で新たに出直せ 」
『週刊ダイヤモンド』 2002年2月2日号 オピニオン縦横無尽 431回 文化は生き残るが文明は死ぬ。文明とともにそれが培った心性も死ぬ。雪印乳業の子会社、雪印食品が豪州産の輸入牛肉を国産の牛肉と偽って、国の牛肉在庫緊急保管対策事業から1460万円を騙し取っていたとの報道がそんな思いを抱かせる。 江戸時代の文明が生きていた明治初期に日本を訪れた英国の女性旅行家イザベラ・バードが、日本人の倫理…
「 私は番号になりたくない 」
『週刊新潮』 2002年1月31日号 日本ルネッサンス 第4回 読者の皆さんは御存知だろうか。今年8月には生れたばかりの赤ちゃんからお年よりまで、国民全員に11桁の番号がつけられ、国民総背番号制が始まることを。 これは99年8月、小渕内閣で成立した改正住民基本台帳法によるものだ。同法律によって住民コードと呼ばれる番号がつけられ、一生涯、私たちの識別番号となる。 政府はこの番号の下に、住所、…
「 北朝鮮工作船の引揚げをためらう日本政府を一喝する 」
『週刊ダイヤモンド』 2002年1月26日号 オピニオン縦横無尽 430回 福留信子さんにお会いしたのは2000年4月だった。北朝鮮に拉致された人びとを救う国民大集会の2回目の時だ。娘さんの貴美子さんは、モンゴルに行くといって日本を出たあと、なぜか北朝鮮に入り、よど号犯人の一人、岡本武の妻となった。子どもも二人できていたらしかったのだが、1988年に夫とともに“事故で死亡”との情報がもたらされ…
「 アマチュアとプロフェッショナル 」
『週刊新潮』 2002年1月24日号 日本ルネッサンス 第3回 「世の中、一体どうなっているのか」 1月8日に退職した農水省事務次官の熊沢英昭氏の退職金が8874万円だときいて、大手酪農家の青年が憤った。 肉骨粉入りの配合飼料を与えたというので彼の牧場は約250頭の乳牛を殺処分にしなければならない。 「状況によっては自殺するほどの大損害」というほどの苦しみは、農水省、なかんずく、熊沢氏の無…
「 二度の北朝鮮工作船への対応にみる日本の過剰な自己規制 」
『週刊ダイヤモンド』 2002年1月19日号 オピニオン縦横無尽 429回 考え方や感じ方が変化していくときに、その変化のなかから成功の果実を生み出していくには、仕組みそのものを変えていく作業が必要だ。制度や法律の改革があって初めて、価値観の変化は本物となる。 昨年末の奄美大島沖での北朝鮮の工作船事件は、日本の海の安全と国民の安全のためには、日本は行動するという気持ちを示したものだ。しかし、…
「 母牛の目の警告 」
『週刊新潮』 2002年1月17日号 日本ルネッサンス 第2回 それはたじろがずにはいられない目だった。突き放した冷ややかな視線。“なにもわかっていないクセに”とでもいうかのような寄せつけない目の表情。牛舎でお産を済ませたばかりの母牛の寝床には産褥(さんじょく)の跡が残っていた。思わず立ちどまった私の背後から“きつい目だなあ”という酪農家の青年の声が聞こえてきた。 昨年12月、農水省は全国1…
「 不審船への対応で見えてきた日本の主権国家としての自立 」
『週刊ダイヤモンド』 2002年1月12日号 オピニオン縦横無尽 第428回 日本はようやくトラウマから脱皮できるのか。そんなことを感じさせられたのが暮れの22日、奄美大島沖で発生した不審船事件での日本側の対応だった。 自国の排他的経済水域や領海内で不審船を発見した場合に、韓国や中国や米国やその他の国々が通常とると思われる行動を日本もとったのが、今回の事件である。どの国も、不審船を発見すれば…