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2018.07.05 (木)

「 拉致解決を国交正常化に優先せよ 」

『週刊新潮』 2018年7月5日号
日本ルネッサンス 第809回

いったん公約したことはなり振り構わず実行する。パリ協定、TPP、中国への懲罰的関税、EU諸国や日本にまで関税をふりかざすことも含めて、良くも悪くも「アメリカ第一」の公約を守る。トランプ米大統領のこんな傾向が北朝鮮への脅威になる。

米朝首脳会談における共同声明は、トランプ氏が北朝鮮に「安全の保証を与えることを約束」し、金正恩委員長は「朝鮮半島の完全非核化への確固で揺るぎのない約束を再確認した」と謳った。

トランプ氏は首脳会談直後の会見で、米韓合同軍事演習は北朝鮮との対話が続いている間は行わないと語った。対話が中断されれば、再開するということだ。

6月14日にはポンペオ国務長官が「北朝鮮の核計画について、できる限り早く全容を把握することが極めて重要だ。それは数週間以内に行われる取り組みのひとつ」だと述べ、迅速に事を運ぶ姿勢を強調した。同氏は17日、韓国の康京和外相との電話会談で、「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」を求め続けることを確認したが、その前日、安倍晋三首相が「核の脅威がなくなることによって平和の恩恵を受ける日本などが、(国際原子力機関〈IAEA〉による調査費用を)負担するのは当然だ」と語っている。日米の協調を示したのだ。

米韓両政府は19日、正式に8月の米韓合同軍事演習を中止すると発表し、22日には、米国防総省がさらに二つの演習、米韓の海兵隊による合同訓練(KMEP)も中止すると発表した。

国防総省は、同決定がマティス国防長官、ポンペオ氏、ボルトン大統領補佐官の協議の結果だと発表したが、対北最強硬派のボルトン氏も承諾したことは、一連の演習中止が安易な妥協ではなく、北朝鮮にCVIDを実行させるための強固な意思の反映だということを示している。米国が軍事演習をやめないから北朝鮮は非核化に踏み切れないのだ、という類の口実を与えないための演習中止だと見てよいだろう。

日本国民を救出

同日、トランプ氏は米議会に、北朝鮮の核は米国の安全保障にとって「なお脅威である」との書簡を送ったが、これも北朝鮮に完全非核化へ行動をおこすよう促したものと見るべきだろう。

トランプ氏は北朝鮮が誠実に約束を守れば、爆撃しないだけではなく、「繁栄する未来」が来るとも語っている。北朝鮮の東海岸の美しいビーチは豪華なホテル群を建てればよいと、トランプ氏は述べたが、繁栄する未来もホテル群も、電力をはじめとするインフラを整備しなければあり得ない。それには資金が必要だが、米国は出さない。代わりに日本や韓国が出すというのがトランプ氏の考えだ。とりわけ日本との国交正常化によって巨額の資金を北朝鮮は手にすることになると、トランプ氏も考えている。

北朝鮮の経済規模はGNPが200億ドルから300億ドルという数字がある。小泉純一郎氏が訪朝した2002年、氏は100億ドルを約束したと言われている。GNPの半分に達しようという額は北朝鮮にとって夢のようだったはずだ。北朝鮮経済は当時と較べて全く改善されていない。だからこそ日本の援助がどうしても欲しいはずだ。

周知のように安倍首相はトランプ氏に会う度に拉致問題について説明してきた。核、ミサイルだけでなく拉致も解決しなければ日朝国交正常化はあり得ない、正常化なしには経済支援もあり得ないと、首相は繰り返してきた。

トランプ氏は首相の言葉を頭に刻み、正恩氏との会談では、明確に伝えたという。「シンゾーは拉致が解決しなければ一銭も出すつもりはない」とも言ったはずだ。拉致被害者全員を取り戻すまでは、日本はビタ一文払わないという安倍首相の決意がトランプ氏を介して正恩氏に伝えられたのである。このことを、救う会代表の西岡力氏が、ネット配信の「言論テレビ」で興奮気味に語った。

「安倍首相は拉致問題をトランプ大統領のディールに組み込むことに成功したのです。横田めぐみさんをはじめ、40年以上も北朝鮮に囚われている日本国民を救出できるとしたら、その可能性に最も近づいているのがいまなのです」

正恩氏は、自分が完全非核化の約束を守らなければ、トランプ氏は怒り、斬首作戦を実行するかもしれないと恐れているはずだ。だからこそ、度重なる中国詣でで身を守ろうとしているのだ。

いまは、何としてでもトランプ外交を成功させなければならない。そのためにいま、日本の私たちが国家の大命題である拉致被害者全員の救出に向けて、強い気持ちで一致団結するときだ。安倍首相が強調するように対北制裁緩和の時期を間違ってはならないのである。早すぎる緩和は必ず失敗する。今回は北朝鮮が行動を起こすまで、慎重にタイミングを測るべきだ。

日朝議連

にも拘わらず、おかしな動きがある。6月21日に開かれた日朝国交正常化推進議員連盟(日朝議連)は早期の日朝会談を求めている。入会者65名中、本人出席は41名に上った。出席議員は自公与党から社民、共産まで幅広い。与党からは、議連会長の衛藤征士郎氏と共に、石破茂氏が出席していた。北側一雄、竹下亘両氏らも与党議員だ。社民党は福島瑞穂、又市征治両氏が、立憲民主党は阿部知子、生方幸夫両氏らが、共産党からも複数が出席した。

国会審議には応じようとしない野党議員が多数顔を見せたことや、与党議員である石破氏らが、福島氏や又市氏らと一堂に会する姿には、違和感を禁じ得ない。

同議連は金丸信氏の流れを汲む勢力が自民党に影響力を持っていた時代に、北朝鮮との国交正常化を大目標に結成されたものだ。金丸氏が訪朝した当時、拉致問題はようやく明らかになりはじめていたが、氏は金日成主席に拉致に関して何も質さなかった。

拉致問題解決を目指す拉致議連会長の古屋圭司氏は、自民党内にも対北宥和策や経済的うまみを拉致解決より優先する人々が存在すると語った。

「自民党が下野していた時、党政調会の正式会議で安倍さんと日朝議連の衛藤さんが激論したのを覚えています。衛藤さんが宥和策を主張し、安倍さんは宥和策では解決できないと激しく反論した。安倍さんが正しかったのは明らかです。この10年程静かだった日朝議連が最近再び活動し始めました。早く日朝首脳会談を行えというのです」

日朝議連が主張するように前のめりになれば、これまでの20年余と同じ結果になって騙される。それよりも今は、安倍首相に交渉を一任し、国民全体で支えることが何よりも必要である。

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