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2008.06.07 (土)

「温室効果ガス問題に向けた洞爺湖サミットでの日本の使命」

『週刊ダイヤモンド』   2008年6月7日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 742

5月27日、千葉県幕張メッセで「世界の気候変動と二一世紀の国策」というシンポジウムが開かれた。

東京大学大学院新領域創成科学研究科教授の松井孝典氏が座長を務めた同シンポジウムは、宇宙学、地球学、気候変動を専門とする研究者と、メディア、政治家の三グループを集めて行なわれた点で興味深かった。議論は過熱。昼食を除いて休憩時間をすべて飛ばして、午前9時から午後8時過ぎまで、約10時間の討論となった。

あらためて思うのは、地球の気候変動に関してはわからないことのほうが、わかっていることよりも多いということだ。私たちは、地球は温暖化に向かっているとの前提で環境問題を論ずる。しかし、地球はむしろ寒冷化に向かっているとの主張は、日本では異端視されるが、海外ではそれなりに注目されていることも知らされた。

多くの研究者が7月の洞爺湖サミットでの日本政府の戦略について質問したことも、新鮮だった。純粋科学の枠内にとどまらず、環境問題が外交や安全保障に直結することを、日本の頭脳集団が意識していることを実感した。

洞爺湖で日本に問われるのは、京都議定書の欠陥を軌道修正し、その修正の上に、どれほど有効的な環境政策を提示できるかという点だ。そのためにも京都議定書の客観的な分析が欠かせない。

同議定書のいちばんの問題は、それが科学的根拠に基づかず、きわめて政治的にまとめられたことだ。同議定書の枠組みが続く限り、途上国は永久に温室効果ガスの排出量削減義務を免れることになる。周知のように、同議定書を批准した先進諸国が数値目標を達成できない場合、ペナルティが科せられるが、非批准国には削減義務がなく、むろんペナルティもない。

米国は中国が参加しないことを理由に京都での合意を批准しなかったし、カナダは目標達成を正式に断念し、ドロップアウトした。一方、中国はようやく、排出ガス削減の努力をすると、日本に伝えてはきたが、数値目標を掲げることは拒否し続ける。インドも同様である。温室効果ガス排出量の削減に乗り出す決意をしたとの5月25日のインド外相の発言がニュースとなるほどで、それだけ、これまでは非協力的だったということだ。

京都議定書の締結時と比べても、中国やインドの排出量は当初の予想をはるかに上回り、いまや中国は米国を抜き、世界最大の排出国だ。結果、議定書が定めた削減義務を受け入れた先進諸国が排出する温室効果ガスは世界全体の三割でしかなくなった。

議定書の定めた削減義務のある国々の2010年における削減量は、基準年とされている1990年総排出量のわずか2%にとどまる。他方、削減義務のない国々の排出量の増大が主たる要因となって、世界の排出量は約40%も増加すると見られている。

だからこそ、地球環境への取り組みで最も重要なのは、削減義務のない国々を枠組みのなかに入れることだと強調しなければならない。先進国責任論では問題解決はできない。

議定書のもう一つの欠陥は基準年である。90年を基準にして温室効果ガスの削減率を論ずる科学的根拠はまったくない。洞爺湖では、基準年に代わる概念として、日本が基準量の設定を提言したらどうか。

なんとしてでも温室効果ガスを削減しなければならないのだとすれば、たとえば50年までの半減を大目標とし、それに向かってすべての国々の排出量削減を具体的な量で求めていくことだ。どんな計算も複雑多岐にわたり容易ではないなかで、国益を賭けた議論が求められる。そしてなによりも、全世界の参加なしには、日本は洞爺湖での議論をまとめることはできないと主張するほどの決意が必要だ。その決意は、必ず、地球の未来にも貢献するはずだ。

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