「 靖国神社での安倍首相の祈りはすべての人々に捧げられている 」
『週刊ダイヤモンド』 2014年1月11日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1017
「本日、靖国神社に参拝を致しました。日本のために尊い命を犠牲にされたご英霊に対し、尊崇の念を表し、そして御霊やすかれなれと手を合わせてまいりました」
昨年12月26日、政権発足満一年の節目の日に靖国神社に参拝した安倍晋三首相はこう述べた。首相は神社本殿と共に、同神社の鎮霊社にも祈りをささげ、その思いも語っている。
「鎮霊社は靖国神社に祭られていない、日本人だけではなくて、諸外国の人々も含めて、すべての戦場で斃(たお)れた人々の慰霊のための御社であります」
祈りは日本人のためだけにとどまらない。すべての人々にささげられている。指導者として一年を見事に締めくくった首相の言葉こそ、これからの日本のあり方を示している。
参拝直後、靖国神社での記者会見で首相は前述の内容に加えて、「不戦の誓い」「二度と再び、戦争の惨禍によって人々の苦しむことのない時代をつくるとの誓い」という表現を三度口にした。日本は侵略戦争を行う国ではないこと、戦後の日本は、自由と民主主義を守り、ひたすら平和国家として歩み、国際社会に貢献してきたこと、この基本姿勢は一貫しており、その点において、一点の曇りもないことを強調した上で、「これからも謙虚に、礼儀正しく、誠意を持って説明をし、対話を求めていきたいと思います」と述べた。
「母を残し、愛する妻や子を残し、戦場で散った英霊のご冥福をお祈りし、リーダーとして手を合わせる、このことは世界共通のリーダーの姿勢ではないでしょうか」
首相の思いは、靖国の御社に眠る英霊の魂にどれほどうれしく届いたことだろう。遺族の方々の心もどれだけ、慰められたことだろう。首相は、このような気持ちを中国、韓国両国首脳に直接説明したいとし、中韓についての質問に次のように回答した。
「戦後、多くの首相は靖国神社に参拝しています。吉田茂総理も、近年では中曽根総理、その前の大平総理、また、橋本総理も小泉総理もそうでした。すべての靖国神社に参拝した総理は、中国、韓国と友好関係をさらに築いていきたい、そう願っていました」
「日中関係、日韓関係は大切な関係であり、日本の国益だと、そう(歴代総理の)皆さん、信念として持っておられた。そのことも含めて説明をさせていただく機会があれば、本当にありがたいと思っています」
対して韓国政府関係者は「安倍首相がこれまで靖国神社に行かず、いろいろとうまくいっていたのに、なぜ参拝するのかわからない。日本政府の信頼と誠意が疑われる」と発言した。しかし、このコメントは日本人には理解されないだろう。靖国参拝問題に関係なく、日韓関係は韓国側の一方的な思いで冷え込んでいるのが現実だ。
中国外務省は「強い憤り」を示し、「人類の良識に挑戦」するものだと論難した。だが、中国にこそ、そのような非難がよく似合う。
靖国参拝問題は、日本人の心の問題であり、内政問題だ。また、首相が言うように、戦死者の慰霊はどの国のリーダーも行っていることである。そのことを強調した上で、日本政府に求められているのは、首相の言葉にあるように「礼儀正しく」、冷静に説明することだろう。
加えて日本の歩みが、靖国参拝故に日本の軍国主義への逆戻り、反省なき日本だとして非難する中国に比べて、どれほど平和的で理性的であるかを世界に発信することだ。
安倍首相の昨年の歩みは経済、外交、安保において目覚ましかった。師走の靖国参拝はそうした一連の安倍政治の一年の、見事な締めくくりになった。自分の言葉を守って参拝した首相を私は高く評価する。こうして日本はまともな国として一歩一歩、進めていくのがよい。これで2014年は大丈夫だ。