「 改憲では日本文明を反映せよ 」
『週刊新潮』 '05年11月10日号
日本ルネッサンス 第189回
憲法改正を党是に掲げて50年、自民党は10月28日、改正案を発表した。
懸案の9条は第2項を削除して「自衛軍」の保持を明確にした。
憲法を聖域化し、改正自体を悪としてきた護憲主義、日本のみに軍隊の保有を禁ずる異常性を打ち破る第一歩としての意味は大きい。その点において、自民党案を高く評価する。だが、前文を読んで愕然としない人は少ないであろう。それはテクノクラートの作品で、日本国への愛情も誇りも感じさせない代物だからだ。この種の改正案は、明らかに対症療法にすぎず、日本が直面してきた真の問題への解決にはつながらない。
この最終案を書き上げた自民党の人々には、再度考えてほしい。なぜ、私たちは日本国憲法を改正しなければならないのかと。憲法は国の在り方を示す基本で、国柄を表現するものだ。人に歴史があるように、国にも歴史がある。その人をその人たらしめてきた家族や故郷があるように、国にはその国をその国たらしめてきた文化文明、国土風土がある。だからこそ、憲法は、なによりもまず、日本の文化文明、国土風土を踏まえなければならない。憲法で国柄に触れる部分としては前文が最もふさわしい。
現行憲法は前文を含めた全条文が“日本らしさ”を否定する精神によって書かれたのは周知のとおりだ。
憲法学者で駒澤大学教授の西修氏は1984年から85年にかけて米国を訪れ、日本国憲法の作成に関わった米国人で、当時健在だった10名ほどに取材し、出版した。彼らは一様に「まだ、日本人はあの憲法を守っているのか」と言ったそうだ。そのひとり、民政局行政部長を務めたC・ケーディス氏が述べている。
「私たちが憲法草案を起草したとき、最終的な憲法を書き上げようとは思っていませんでした」(『日本国憲法の誕生を検証する』学陽書房)
民政局で国会議事録、新聞要録を担当したハウゲー氏は、憲法作成を命じられたが、そのための素養を持っていなかったと認めたうえで、「荷が勝ちすぎてあまりにも困難な仕事だと思いました」と述べている。
民政局で公務員制度を担当した
M・エスマン氏も「アメリカの軍人や弁護士によって起草された憲法は正当性を持ち得ないと思っていた」と語っている(前掲書)。
天皇制をどう捉えるか
日本についての知識も理解も不足していた人々が、彼ら自身も正当性を否定しつつ作った現行憲法だからこそ、改正にあたっては日本人の憲法としての正当性を持たせる内容、つまり、日本文明を反映した内容にしなければならないのだ。
にもかかわらず、自民党改正案の前文は「日本国民は、自らの意思と決意に基づき、主権者として、ここに新しい憲法を制定する」と書き出し、続けて「象徴天皇制は、これを維持する」と素気なく書き放っている。なんという無機質な表現か。
天皇制はこの国の中枢で息づき、幾多の試練を経て125代にわたって存続してきた。祭祀を司る天皇家はまさに日本の精神文化を凝縮した存在であり、天皇制抜きでは日本文明は、良くも悪しくも語り得ない。それを自民党案は「象徴天皇制は、これを維持する」という13文字で片づけたが、そもそも、象徴天皇制こそ、占領統治下で作り出された天皇家の在り方だったのではないか。「自らの意思と決意に基づき」新憲法を制定するのなら、日本の国柄の軸でもある天皇制について、もっと心を通わせることの出来る表現があって然るべきだ。
ちなみに自民党の元々の案、素案では、「天皇を国民統合の象徴としていただき、和を尊び、多様な思想や生活信条をおおらかに認め」てきたのが日本人であることが強調されている。古来の神道に加えて仏教をも受け容れた聖徳太子の時代から、日本は和を尊びつつ、実におおらかな精神文明を築いてきた。その文明の統合の証しとして、天皇制をいただいてきたとの表現は、史実であり、継続したい伝統である。
これら全てを削除したうえでの最終案の13文字には、もはや日本の香りも、文明の片鱗もないのである。
同じく最終案は日本の国土風土には全く触れていないが、素案では日本の国土は「アジアの東、太平洋と日本海の波洗う美しい島々」と表現された。日本国民は「自然との共生を信条」とし「美しく豊かな地球環境を守るために力を尽くす」ものであるとの誓いも述べられている。
日本人の自然への慈しみは、外国の人々に強烈な印象を残してきた。開国前年の1857年に初めて長崎湾を訪れたオランダ海軍の教育隊員ポンペは、「乗組員一同は眼前に展開する景観に、こんなにも美しい自然があるのかと見とれてうっとりした」と書き残している(『逝きし世の面影』渡辺京二・葦書房)。
幕末から明治8年までの13年間を日本ですごしたプロシア領事、のちにドイツ公使を務めたブラントは日本の自然を「不断の喜び」「無上の慰め」と表現した(前掲書)。
自国への誇りと尊敬
精神文明の基盤としての日本の自然はこのようにかつて世界に賞賛された。自然を尊ぶ日本人の心情を謳いあげ、美しく豊かな地球環境に寄与するとの素案の決意は、広く世界に共感を呼ぶに違いないだろうに、最終案では削除されているのだ。
かねて注目されていた「愛国心」に関して、素案は「国を愛する国民の努力によって国の独立を守る」と明記されていたが、最終案では、これまた「日本国民は、帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る……」と変えられた。愛国心という言葉を憚る余りのまわりくどい表現で、笑えてしまう。
自分を愛し信頼することの出来ない人間が、真に他者を愛し信頼することは難しい。国家も同様だ。愛国心や自国への誇りを尊ぶことは諸国に共通する価値観で、その精神的価値観を欠落させている日本の現行憲法こそがいびつである。「正統性を持ち得ない」という前述のエスマン氏の言葉はその点を指摘したものだ。自民党最終案は残念ながら、自国への愛と信頼を表現するという最も重要な点に応えておらず、失敗作である。
9条の改正やよし。軍事力の保有は国家として当然で9条2項の削除は高く評価する。だが、単に軍事力の保持を認めればよいのではない。駐日フランス大使を務めた詩人のP・クローデルは第二次大戦中の昭和18年にパリで語った。「日本人は貧しい。しかし高貴である」と。
真の武人が、自らの力の効果を知るゆえに他者へ深い想いやりの心を持ち、素養と自らへの信頼故に武力による横暴を慎むように、日本国は軍事力の保持を明確にすると同時に、気品ある国家になるべきだ。その意味で、9条と前文の改正は、一対でなければならない。自民党案前文の全面的書きかえを望むものだ。
家族と社会を解体する国連人権主義
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日本会議メールマガより転送いたしました。
過激な性教育、男らしさ女らしさ…
トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2005年11月11日 18:55
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しばらく写真アップが続いてましたが、武者祭りの興奮さめやらぬうちに、最近読んだ文章で”いいな〜、なるほど!”と思った文章を皆さんに送りま〜す。-…
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この記事に対して、私自身でコメントさせて頂きます。
この映像を見る前、…
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