「 小学三年生になぜ必要か ジェンダーフリー教育と過激で下品な性教育教材 」
週刊ダイヤモンド 2004年3月13日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 534
信じがたいプリントを入手した。横浜市立のある小学校の三年生用副教材である。イヌの交尾と人間の性交を、微に入り細に入り、図解で説明するプリントだ。親が見れば破り捨ててしまうであろう下品なものだ。
なぜ、こんなものが小学三年生用の副教材になるのか。長年、教育問題に熱心に取り組んできた山谷えり子氏が指摘する。氏は前衆議院議員で三児の母、PTA会長はじめ、教育行政分野の要職を務めてきた。
「教育現場の問題でとりわけ深刻なのが、ジェンダーフリー教育と過激な性教育です。日本人はジェンダーフリーの意味を、職場での男女差別をなくすことのように考えている人がいますが、それはまったく違います。男女平等とは異質なもので、男女の区別を差別と見なす考え方なのです。それが過激な性教育と結び付いて、驚くばかりの教材を作り出しています」
若い世代が女らしさや男らしさをなくしていると感じる人は、多いはずだ。日米中韓四ヵ国の高校生を対象にした日本青少年研究所などの調査(2003年)では、日本の高校生たちの意識は、明らかに“突出”していた。
「女は女らしくすべきだ」を肯定したのは、日本がわずか28%なのに対し、米国は58%、中国は72%、韓国は48%だ。「男は男らしく」に関しては、日米中韓の順に43%、64%、81%、55%だった。
日本では、女性が女性らしくあることへの否定が、男性が男性らしくあることへの否定よりもなお強く、また、男女双方の“らしさ”への否定は、四ヵ国中、日本で最も強いわけだ。
一方、「結婚前は純潔を守るべきだ」を肯定したのは、日本がわずか33%にとどまったのに対し、米国52%、中国75%、韓国74%だった。
この点に関連して、「個人がそれぞれ生活できれば、必ずしも結婚しなくてもいい」と考える高校生は、日本では約70%に達し、米中韓の約50%に較べて、これまた目に見えて高い。
「もう一つの統計にも留意しなければなりません。警察庁の意識調査では、今、中高生の68%が見知らぬ人とセックスすることを“構わない”“本人の自由”と考えています。見知らぬ人とのセックスで小づかいを受け取ることを、メディアは援助交際などと言い換えますが、つまりは売春です。それを“構わない”“本人の自由”と答えたのは51%でした」と山谷氏。
男らしさも女らしさも否定し、結婚しなくてよいと考え、売春も本人の自由とするその先に何があるのか。
ジェンダーフリー教育も過激な性教育も、個人を前面に立てて、自分というものの存在を大切にし、個人の権利や立場の擁護を主張するもののように思える。しかし、その結果生じている現象は、女子中高生が、体を売るのも本人の自由意思とし、恥とも屈辱とも考えていないことに凝縮されているように、徹底した自己否定にすぎない。売春が気にならないのは、自分に誇りがないからである。自分を価値のない人間だと考えれば、恥もないだろう。恥がなければ、売春も含めてなんでもやってのけるだろう。
このようなジェンダーフリー教育や過激な性教育は、家庭の崩壊につながると山谷氏は断言する。
「売春などの性非行の禁止は、強制だから許されない。愛のない性交を否定する押し付けは許されない、というのが高校家庭科の指導要領です。そこには、あなたたちの生命は両親やそのまた親たちからいただいた尊いものだ、という考えはないのです。現在だけを切り取って考え、自分一人で存在できると考えるのは幻想です。このままいくと、家庭崩壊が雪崩のように起きる時代になるでしょう」
家庭崩壊につながるジェンダーフリー思想などで、子どもを教育してはならないのだ。