「 別姓法案の黒幕は法務官僚だ 」
『週刊新潮』 2010年3月18日号
日本ルネッサンス 第403回
子供の命名について、人生の先輩に聞いた話である。生まれてきた子供がどんな一生を歩むかは、誰にも予見出来ない。起伏に富むのが人生だから、いい時も悪い時もある。であれば、不運な巡り合わせで逆境に立つような場合、せめて子供が自分の名前ゆえに自信をなくしたりしないようにしておくのがよい。だから、字画などにも気を遣って、本人を支えるような命名をしておくのが古来の知恵だ、と。
我が家で子供が誕生したとき、ちなみにそれは私の兄の子供たちのことだが、命名を担当したのは私の母、姪や甥にとっては祖母だった。母は沢山の漢字を拾い出し、長い人生における孫たちの幸福や充実につながるようにと願いながら、字画も含めて思案していた。
父の名前からも一字を貰って、母は命名した。その一字に、祖父から孫へと、思いが伝わり絆が深められることへの願いが込められていたのは間違いない。
両親や祖父母と同じ名前をつけることで家族の絆を確かめようとするケースは欧米諸国にも少なくない。名前の共通性を活用するのは、洋の東西、時代の今昔を超えて見られる現象である。それは、家族としての慈しみの表現でもあろう。
いま、民主党が提案しようとしている夫婦別姓法案は、こうした価値観の対極にあると思える。民主党だけでなく、夫婦別姓推進論者の中に、社民党党首の福島瑞穂氏もいる。氏は「夫婦別姓を選択的に認めることは、人がのびやかに生きていくための必要条件」(『楽しくやろう夫婦別姓』明石書店)と位置づける。なぜ別姓でなければ、夫婦も子供ものびやかに生きていけないのか、私にとっては全く説得力のない主張である。氏はさらにこう主張する。「(夫婦別姓は)十分条件ではない。別姓の人は別戸籍に、そして将来は、みんな個人籍になるといいなと思う」(同)。
別姓論者の最終目標は、日本の家族の在り方を根幹から変え、戸籍制度もなくすことだ。それが日本人の幸福につながると信じているのだ。
別姓を名乗りたければ、現在も許されている通称を使用すればよいと、私は考える。だが、戸籍制度も含めた全面的な民法改正には、到底、同意出来ず、埋め難い溝を感じる。
民事局課長の「備忘録」
民主党の法案が成立するとどんなことが起きるだろうか。まず、結婚する人たちは結婚に先立って、別姓、同姓どちらを選ぶのかを決定し、次に、子供の姓をどちらの親の姓にするのかを決めなければならない。別姓か同姓かは、一旦決めたら、以降、変えることは出来ない。これら全てをきちんと決めて申請しなければ婚姻届は受理されないことになる。
民主党が準備する民法改正には以下の点も含まれている。
①女性の再婚は、前の結婚の解消の日から100日を経過して以降に可能となる。つまり、現行の6ヵ月から約半分に短縮される。
②嫡出子と非嫡出子の財産相続分を同一とする。現行法では非嫡出子は嫡出子の半分の財産を相続するが、全て平等になる。
③女性の結婚年齢を現行の16歳以上から18歳以上に引上げる。
①について、98年当時の法務省民事局第三課長の原優(ルビ=まさる)氏は『婚姻制度等に関する民法改正について--備忘録(その2)』の中で、「女性の再婚の自由を拡大するという観点」から決定されたと解説している。考えようによっては、離婚を奨励しているようにも受けとることが出来る。
②については、現行法で相続財産の差が設けられているのは、正式の結婚で作った家族を保護する目的と、嫡出子は親の財産形成に対する寄与があるのに対し、非嫡出子は通常それがないという、二つの理由ゆえだとしている。
だが現行法を改め、全ての子供を平等にする理由を、原氏はこう説明する。結婚以外の男女関係に対する非難を子供に及ぼすのは子供の人権尊重の視点から問題であり、親の財産形成にどれだけ貢献したか否かについては一律に論じられないことだからだ。
日本人の価値観の欠如
原氏による解説はもっともらしいが、決定的に欠けているのが日本を形成してきた伝統的な価値観への配慮である。歴史の中で形づくられてきた日本の家族の在り方に対する敬意や尊重も欠落している。
原氏の細部にわたる備忘録は氏が官僚として、民法改正の実現に多大なエネルギーを注いできたことを窺わせる。氏が書きため、民主党が実践を目論む民法改正は、日本の敗戦時に占領者としての米軍が行おうとしたことに他ならない。原氏は、98年7月に発表の『備忘録(その1)』で、民法改正(夫婦別姓)は、「戦後に新憲法の制定を受けて行われた親族編・相続編の全面改正(昭和22年改正)に次ぐ、規模の大きな改正作業」であると紹介し、家族の在り方を定める民法の全面改正は「不可避」だと断じている。なぜなら、米占領軍の定めた現行憲法の第24条が、「個人の尊厳と両性の本質的平等」の原則を宣言しているにも拘らず、「家制度に立脚した明治民法には、この原則と抵触する規定が数多く含まれていたから」だそうだ。
つまり、日本の家族の在り方も、夫婦、親子の関係も全て、米国が定めた現行憲法に則って変えていかなければならないといっているのだ。
原氏が不可避とする民法改正の論拠は、96年2月、長尾立子法相の諮問機関である法制審議会によって答申されたものだ。法制審議会のメンバーは法務官僚が選んだと考えてよい。つまり、この答申は、法務大臣の考えよりも法務官僚の考えを反映させたものだといってよいだろう。
96年のこの答申がいまの民主党案の基である。一連の民法改正の真の主導者は法務官僚だということではないのか。
それにしても、原氏ら法務官僚の頭の中には、日本の文化や価値観は存在しないのであろう。憲法や法は、その国、その民族の歴史や価値観を根底においてつくられるべきものだ。原氏らは、そのことを弁えもせず、日本を敵として戦った占領者が、わずか6日間で仕上げた現行憲法を信奉しているわけだ。どこの国の官僚か正体不明といってよい法務官僚らは、自分たちが長年手がけてきた夫婦別姓を、民主党政権が力を持っているいま、何としてでも実現しようとしているのである。
これまでは法務官僚が画策する民法改正の動きに、自民党が歯止めをかけてきた。しかしいま、日本の歴史や伝統や価値を尊重することの少ない民主党が、官僚らと歩調を合わせて突き進もうとしている。民主党は、脱官僚どころか官僚べったりなのである。おまけにこの件についても議論を封ずるとしたら、民主党の存在価値はないだろう。
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トラックバック by 随時所感 — 2010年03月19日 17:55
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トラックバック by 愛国を考えるブログ — 2010年03月24日 14:59