「 『秘書の罪は議員の罪』と言い辞職を迫った鳩山首相の言行不一致 」
『週刊ダイヤモンド』 2009年12月12日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 817
国会は12月4日に閉会された。鳩山由紀夫首相は、「党首討論に対して消極的な発言は今まで一度もしていない」と語るが、自民党などが繰り返し要求した党首討論に結局応じなかった。
「政治主導」を標榜するのであれば、自ら決断して党首討論に応ずればよい。それをせず、国会対策委員長の背に隠れるかのようにして党首討論を逃れたのは、偽装献金疑惑や灰色の政治資金問題の追及を恐れたためだと思われても仕方がない。
首相の資金管理団体「友愛政経懇話会」に母親が提供していた金額は年間1億8,000万円、総額は6年あまりで11億円に上ることが、すでに明らかにされている。約1,500万円の大金が毎月、提供されていたのである。単純に日割り計算で、毎日50万円が支給されていたことになる。それを首相は「本当に知らなかった」と主張する。いったい誰が信じるだろうか。
母親から得た十数億円の資金のうち、首相側は約1億円を、亡くなった人やまったく関係のない人びとの名前を騙(かた)って個人献金があったように見せかけた、いわゆる偽装献金の原資として使ったと見られている。
こうしたことは、しかし、すべて、秘書がやったことだと首相は主張する。そこで思い出すのは、政治資金をめぐる問題について、過去に首相が語った言葉の数々である。「産経新聞」の阿比留瑠比(あびる・るい)記者が「Will」をはじめとするメディアに鳩山語録を報じている。その中から、いくつか拾ってみる。
2002年3月14日、「夕刊フジ」のコラム「永田町オフレコメール」で首相は、加藤紘一自民党幹事長(当時)の秘書の脱税容疑について、「秘書の罪は国会議員の罪である。ことに金庫番秘書ならなおさらである」と書いた。また首相は、「金庫番だった人の不祥事は、(政治家も)共同正犯」だと述べ、加藤氏に対して「即、議員辞職すべきだ」とまで語っている。
もう一例。05年7月23日のメールマガジンで、首相は、土井たか子元衆院議長の秘書による秘書給与流用事件に関して「私は政治家と秘書は同罪と考えます。政治家は金銭に絡む疑惑事件が発生すると、しばしば『あれは秘書のやったこと』とうそぶいて自らの責任を逃れようとしますが、とんでもないことです」と書いた。
首相は、しかし、自身のことになると豹変するのだ。人間は通常、恥ずかしくてこの種の豹変に耐えられない。首相が耐えていられるのは、首相の言うように、母親から巨額の資金を受け取ってきたことを、本当に知らなかったのか、と思ってしまう。
それはいったい、何を意味するのか。まず、首相のみならず、主を筆頭に秘書も含めた鳩山家全員が、法治国家である日本の種々の法律にわれ関せずで生きてきたということだ。彼らは、政治資金規正法も財産贈与に関する税法も無視し、破り続けてきたことになる。日本国のファーストファミリーはこんな非常識な人びとの集まりなのか。
第二の可能性。単純平均で日々、50万円の資金提供に気づかなかったと首相は言うが、今、初任給で年収300万円を得る人は多くない。年収200万円以下の「ワーキングプア」の増加が深刻な社会問題となっている。こうした人々の年収に匹敵する額を、首相は4~5日間で母親から受け取っていたことになる。金銭感覚を欠落させたこういう気楽なぼんぼんは、性格はよいけれど現実世界においてはあまり役に立たないものだ。
この種の人物が、最も適性を欠く分野が政治ではあるまいか。「夢見るぼん」であるからこそ、個人レベルでは美しい友愛精神を、国益のぶつかり合う熾烈な闘いの場である外交にまで持ち込み、中国に東シナ海を友愛の海にしたいと言ったりする。内外共に問題山積の今、鳩山政権の下で日本の展望が開けるとは到底、思えないのだ。

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