「 力不足で可能か、民主の政治主導 」
『週刊新潮』 2009年11月5日号
日本ルネッサンス 第385回
10月26日、鳩山由紀夫首相はお気に入りの金色のタイとポケットチーフで装い、所信表明演説を行った。政権交代は、「政治家と官僚のもたれ合いの関係、しがらみや既得権益によって機能しなくなった政治」などのゆえにもたらされたとして、「官僚依存の仕組みを排し、政治主導・国民主導の新しい政治へと百八十度転換させ」ると明言した。
鳩山首相が力強く訴える民主党の政治主導は、実際にはどんな形で進みつつあるのか。政治主導を掲げて、政府の力を強調する余り、現実には党内の自由な議論が封殺されかねない事態が生まれ、本末転倒の現状に、いま、民主党内からも疑問の声が発せられている。
「(政治主導というが)先行きどうなっていくか、分からない」「小沢氏も菅氏も英国議会に学ぶと言っているけれど、彼我の事情は大きく異なります。英国では、閣僚は長年その任に当たる傾向があり、その道のプロが務めるが、日本はそうはなっていません。そうした中で政治主導と言うだけでは、結局、官僚主導に戻っていく危険性がある」
こう語るのは民主党衆院議員、篠原孝氏である。氏は30年間を農林水産省ですごした元官僚である。先に亡くなった中川昭一氏が1983年に初当選したとき以来、親交をもつ。55歳で退官し、長野1区で立候補し、現在3期目である。
自民党政治の内実を見、その長短に通ずる氏は、民主党の真の危うさは、その「力不足」にあると喝破する。
民主党の政策決定のプロセスでは、まず、省毎に副大臣が主催して政策会議を開く。広く与党議員の意見は聞くが、政策案の策定は大臣、副大臣、政務官で構成する「大臣チーム」が行い、閣議決定につなげる。これまで盛んに行われていた議員らによる議論は部門会議の廃止によってすでに消滅した。篠原氏が語る。
「この新しい形で政策を決めるとなると、政府ポストに就いた70人の考えを中心に政策が作られることになります。政治家が政策を作るから政治主導になるのか。そうなればそれはそれでよいのですが、もし、これが官僚の思いのままになるとすれば、『政治主導』は瓦解します」
「官主導は酷くなる」
篠原氏は、小沢氏はじめ民主党の中枢が、自民党の部会を反面教師にしすぎていると言う。自民党では、部会で了承されなければ、如何なる案も法案として通らなかった。農水省での30年の経験でわかったことは、自民党の農水政策は、「内容はともかく、どこに落とし所があり、どこに行って誰に説明したかで政策が決まっていた」ことだという。
明らかにこうした体質から多くの問題が生まれた。族議員が既得権益の塊と見做され始めたのにもこうした事情がある。そこまで党主導に傾くのはよくないが、党や議員を無視して、内閣に入った議員たちだけで政策を作るという民主党の方針も問題だと言っているのだ。加えて、政治主導といって役所をぐいぐい引っ張っていく見識と実力のある政治家が民主党にいるのか。いたとしても非常に少なく、また、彼らが政策立案を主導するといっても、余りの仕事量にヘトヘトになってしまうだろう。そこでなにが起こるのか。
「下世話な表現ですが、官僚は上手に政治家をたらし込む。その危険性はもの凄くあります。結果、自民党時代より官主導は酷くなる」
それを防ぐためにも、議員らによる活発な議論が必要だと氏は強調する。具体例として、氏は亀井静香金融担当大臣が提言する貸し渋り、貸し剥がし対策法案、通称モラトリアム法案を挙げた。これは国民新党との連立から生まれてきた法案であるだけに、民主党はその内容を一切、吟味していない。にもかかわらず、それが、臨時国会で、一番手の法案として提出されそうな状況だ。
「民主党議員は、全く議論していない。党として責任ももてない。ですが、金融庁の政策会議はどんどん進んでいる。そこで我々議員も議論しようということで研究会を作りました。定着すれば、それが党内議論の場になっていくと考えます」
篠原氏が希望を托す財務金融委員会研究会は、10月21日の午後、1回目を開いた。実際何を行ったのか。政府に「意見を言う」のではなく、エコノミスト、中小企業、銀行の代表を呼び、各々30分ずつ、考えを述べてもらったという。
篠原氏は、「金融では、亀井大臣の下に大塚耕平副大臣、田村謙治政務官がいて、この大臣チームの三者が法案を策定します。それを、財務金融に関心のある議員らが研究会などを通して助ける形になればよいと思います」と語る。つまり、研究会は大臣チームへの一種の支援グループの位置づけなのだ。
「エイヤ」で決めてきた民主党
これでも民主党の政治主導の危うさは拭い切れない。そう言うと、篠原氏が、一枚の紙を見せた。
「民主党の官僚OB議員」の一覧だ。
「民主党には官僚OB議員がかなりいますが、その中で、役所における政策決定のプロセスを知っている人間は、わずかです。たとえば古川元久氏はいま内閣官房国家戦略室長、内閣府副大臣の重職に就いていますが、大蔵省にいたのは6年間です。特定の法案を通すにはどこをどのように動かすかを、知っているわけではないでしょう」
自民党議員の中には各省の次官経験者らが複数いるが、民主党の官僚OBには若手が多い。法案の作成は出来ても、そこから先の経験と力量が不足しているために、フタを開けてみれば官僚たちの思うままになっていたということになりかねないという。
だが、政治家が自ら考え抜いた目標を政策として掲げれば、官僚らを動かし得るのではないか。それが政治主導ではないのか。そう問うと、篠原氏は嘆いた。民主党が議論を尽す党だとの印象も議員が考え抜いて政策目標を設定するとの印象も間違っているというのだ。農水官僚として自民党政治を、いわば内側から見てきた人物が、自民党の姿と民主党を較べて発する言葉は、思いがけないものだった。
「自民党は部会の力が強すぎるなど、色々批判はありますが、党内議論は徹底しています。マニフェストについても、総務会で数ヵ所修正して、つまり、党内で議論したうえで発表しました。一方、民主党は、NC(次の内閣)が党最高の意思決定機関であったにもかかわらず、そのメンバーすらも碌に見ないでマニフェストを決定しました。両方を見てきた私は、自民党の方が、党内議論は徹底していると思います。民主党は十分な議論もせず、大事な政策をエイヤで決めてきたのです」
マニフェスト発表後の民主党の度重なる訂正と迷走の理由はここにある。無責任ともいえる民主党政治へのますます厳しい監視が必要だ。
拡散用 外国人参政権 決め手になる法務委員会のメンバー…
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トラックバック by まさか、右翼と呼ばないで! — 2009年11月12日 02:49
国民主権とは…
2009年10月27日(火)**************************…
トラックバック by 日本はどこへ by イザヤ2 — 2009年11月12日 13:45
櫻井よしこ先生は奄美大島の女神だ…
愛国者の代表である櫻井よしこ先生が素晴しいことを言ってくれた。鹿児島県奄美市で講演し、「『友愛』の精神など通じない」「(『友愛の海にしよう』と言った鳩山首相はまるで夢見る少年のようだ」と看破したのだ。 そう、民主党は日本を滅ぼそうとする極悪非道の政党で…..
トラックバック by 愛国を考えるブログ — 2009年11月14日 14:01