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2025.11.06 (木)

「 高市外交、安倍総理の遺産で高評価 」

『週刊新潮』 2025年11月6日号
日本ルネッサンス 第1170回

政治は指導者によってここまで急変するものなのだ。高市早苗氏が大きな風を起こした。10月27日、『日本経済新聞』は1面トップで「高市内閣 支持74%」、「現役世代が回帰」の見出しを掲げた。18歳から39歳の人々の支持は81%に達し、石破茂氏への支持の2倍以上だった。40代と50代が82%、60歳以上が66%だ。自民党支持率も石破政権当時より5上昇し36%となった。

自民党と日本維新の政党支持率が上昇する一方で、参政党は前回の10%から6%へ、国民民主は9%から6%へ、各々支持を落とした。ちなみに10月25、26両日に行われた『朝日新聞』の世論調査も全く同じ傾向を示していた。

石破政権で自民党が嫌になって、参政党や国民民主に移った有権者が自民党に戻ってきたのだ。理由は明らかだ。高市氏が悉く石破氏の逆張りをしているからだ。

高市氏は安倍晋三総理の路線を継ぎ、発展させると、明確に言い切った。始動した外交でそれを早速実行してみせている。首相就任5日目の26日、氏は東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の首脳会議でマレーシアの首都、クアラルンプールを訪れこう語った。

「『自由で開かれたインド太平洋(FOIP)』が日本外交の柱であり、それを進めていきたい。さらに『インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)』と共同作業を進めたい」

FOIPは安倍総理が世界に提案した戦略だ。そこには中国批判は一言もない。安倍総理は「自由で開かれている。中国の参加も当然歓迎する」との姿勢だった。但し、参加するからには、中国は自由で開かれた国にならなければならないということだ。中国は根本から国の在り方を変えなければ参加できないのだ。

右の戦略は米国の国家戦略の基礎となった。欧州諸国も取り入れ、自由世界の大戦略となった。岸田文雄、石破両首相は在任中殆どFOIPに言及しなかったが、高市氏が再び日本外交の柱として力強く打ち出した。

アリ地獄

高市氏の真剣さは、国家安全保障局(NSS)の局長に前官房副長官補の市川恵一氏を充てたことからも明らかだ。氏は安倍氏のためにFOIP戦略を考案した逸材である。だが、石破氏は市川氏を嫌い、インドネシア大使に転出させることを決め、10月16日に同人事は発令された。大使として赴任するときは天皇陛下から認証をうける。それも終了していたのを高市氏がひっくり返してNSS局長にした。高市氏は何としてでも、安倍外交を継ぎ、発展させていく決意なのだ。

ASEAN諸国は常に米中両国の圧力に晒されており、自らの外交、安全保障の土台を安定させたいと考えている。そうした中で最も信頼されてきたのがわが国である。とりわけ安倍総理のFOIPに基づく外交は絶大な信頼を得てきた。高市氏はそれをAOIPと重ね、日・ASEANは共通の価値観で進もうと呼びかけたのだ。今回、ASEANの有識者への調査でわが国が7年連続で最も信頼できる国に選ばれた(シンガポールのシンクタンク、ISEASユソフ・イシャク研究所)のも、十分理由のあることなのだ。

高市氏はマレーシアの『ニュー・ストレーツ・タイムズ』紙への寄稿でも、安倍総理との絆を強調した。

「2013年1月、(第二次)安倍政権の樹立後間もなく、安倍総理は最初の海外訪問地として東南アジアを選んだ」

安倍氏同様自分の初外遊の地も東南アジアだ、戦略的に重要な地域連合の核、東南アジアを自分も強く支えていくと言っているのだ。

安倍総理の遺産を十分に活かそうとする高市氏はASEANにとって心強い存在であろう。他方、26日にマレーシアに到着したトランプ米大統領は早速マレーシア及びカンボジアと貿易協定を結び、タイ、ベトナムとは貿易の枠組みで合意したが、それは日本の対ASEAN外交とは本質的に異なるものだ。

『ウォールストリート・ジャーナル』(WSJ)紙が10月26日、米・ASEAN貿易協定の中身を解説している。⓵東南アジア諸国は米国からの輸入品への関税を引き下げる、⓶より多くの米国製品を買う、⓷見返りは東南アジアの対米輸出品にかかる19%の関税の引き下げ、⓸マレーシアは今後10年で700億ドル(10兆7千億円)を米国に投資する、である。

超大国の米国が東南アジア諸国にも容赦のない貿易戦争を仕掛けているのであるから、中国がつけ込もうとするのは当然だ。だが中国の笑顔や甘い言葉を信じたが最後、アリ地獄に転げ落ちる。そのことをASEAN諸国は十分に承知だ。米中は彼らにとって、前門の虎、後門の狼の如しとは、言いすぎだろうか。

「日本の消費量2万年分」

だからこそ、日本が必要なのだ。それも岸田氏や石破氏の下の日本ではない。中国を恐れて気を使い、事実上何もしない日本ではなく、安倍総理のように中国と対等にわたり合う日本をASEANは求めている。日本の国柄を凝縮した価値観を掲げ、ASEAN諸国の為になるプロジェクトを具現化する日本を望んでいる。ASEAN諸国は安倍総理の後継者としての高市氏への信頼を深めることだろう。

本稿は高市・トランプ両首脳の会談が行われる直前に書いているのだが、高市政権の対米外交を成功に導く鍵のひとつがレアアースの開発であろう。

わが国の東の国境の島、南鳥島は周囲7.6キロの三角形の島で自衛隊員と気象庁の職員が常駐している。南鳥島の排他的経済水域(EEZ)の水深5600メートルの海底に豊富なレアアースを含む泥(希土泥)が眠っていることを発見したのは、千葉工業大学次世代海洋資源研究センター所長の加藤泰浩氏だった。加藤氏が語った。

「南鳥島の希土泥の濃度は1000~1500ppm、非常に高品質です。埋蔵量は日本の消費量の2万年分に相当すると思われます」

実はこれは私が13年前に報じた情報である。加藤氏は中国が手を出す前に、わが国が鉱区を設定し、レアアースを取り出す策を講じるべきだと経産省に要請した。だが経産省は一ミリも動かずに時間がすぎ、今では、中国がわが国のEEZのすぐ外側に鉱区を設定してしまっている。

中国はレアアースを武器としてわが国や米国に対峙する。それを見てようやく、わが国にもレアアースの開発に前向きな姿勢が生まれてきた。ならば今こそ南鳥島の海底の開発を米国と共に推進するのだ。予見される中国の妨害は米国の参加で牽制できるだろう。80兆円という余りにも巨大な対米投資を米国はわが国に迫っているが、その資金の一部を右のプロジェクトに充てればよい。実現すれば、日米両国の国益に適うプロジェクトとなるのは間違いない。

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