櫻井よしこ オフィシャルサイト https://yoshiko-sakurai.jp/

櫻井よしこ オフィシャルサイト

  • 日本語
  • English
  • 小
  • 中
  • 大
  • Facebook
  • Twitter
  • ホーム
  • お知らせ
  • コラム
  • 著作一覧
  • プロフィール
  • お問い合わせ

コラム

  • 「コラム」の一覧を見る
2025.11.20 (木)

「 財政政策に大変化か、高市国会論戦 」

『週刊新潮』 2025年11月20日号
日本ルネッサンス 第1172回

11月7日、衆議院予算委員会が始まった。論戦でまず注目したのは高市早苗首相の「単年度のプライマリー・バランス(PB)という考え方は取り下げる。数年単位でバランスを確認する方向に見直すことを検討している」との答弁だ。わが国の財政の健全性を、財政が赤字に陥っているか否かによって1年毎にチェックするのが財務省の考え方だ。その政策を根本から変えることになる。

アベノミクスの考案者のひとりで安倍晋三総理の内閣官房参与を務めた本田悦朗氏が指摘した。

「わが国の財政政策は大きく変化し始めると思います。政府の『骨太の方針』には、当初PBは2023年度までに黒字化するとの目標が書かれていました。ただそれは達成できておらず、今は来年度中に黒字化するとされています」

PBの黒字化を目標とする財務省の考え方は本末転倒だ。高市氏が目指すのは経済成長だ。経済が成長して、国民が豊かになれば、消費も増えて税収も増える。物が売れれば企業の売り上げも法人税収も増える。結果、PBは改善され黒字となる。

経済成長を促す手段のひとつが減税である。すでにガソリンと軽油の暫定税率廃止の日程が確定された。ガソリンは12月31日に1リットル当たり25円10銭、軽油は来年4月1日から17円10銭引き下げられる。その他にも日本維新の会の求める高校授業料の無償化と、国民民主党が求める年収103万円の壁の廃止がある。

これらの措置に関して必ず問われるのが財源問題だ。ガソリン、軽油で1.5兆円、高校無償化で5000億円、103万円の壁の廃止で7~8兆円が必要とされる。それだけでなく、これからの課題として防衛費増額がある。GDP比2%を今年度中に達成したら、次の目標としてNATO並みの3.5%或いは5%などの議論もなされている。

膨大な額の防衛費を、なぜ、いま拠出しなければならないのか。小泉進次郎防衛大臣はそのことを国民に理解してもらうために積極的に情報を公開することが欠かせないと言う。たとえば日中関係がどれ程厳しいかについてである。

日本、自衛隊も攻撃目標

小泉氏は11月1日、マレーシアのクアラルンプールで拡大ASEAN国防相会議に出席し、董軍中国国防相と会談した。

小泉氏は董軍氏に東シナ海、南シナ海、わが国の尖閣諸島海域での中国の専横な活動、さらに台湾海峡での中国軍の行動にも抗議し、日中防衛大臣会談は烈しい応酬の場となった。台湾問題に言及した時、董軍氏は指でトントントンと机を叩き苛立ちをあらわにしたうえ、中国側スタッフが日本メディアのカメラの前に立ち塞がったという。

中国人民解放軍(PLA)は内モンゴル自治区の砂漠に台湾台北市とほぼ同じ街を造っている。総統府、司法院、台北市の街並み、台湾軍の武器庫に至るまで、原寸サイズで構造も同じ建物を再現している。現実に存在しているか否か確認はできていないが、総統府につながるトンネルまで、中国はこの疑似都市に造っている。

それは台湾侵攻の時、いち早く総統府に侵入し、斬首作戦を実行するためか、もしくは総統府の建物からネズミ一匹逃さないためのものかは分からない。彼らはこのように台北市街の様子も各建物の内部構造も頭に入れて、攻撃時には迷わず標的に近づけるように急襲演習を繰り返しているのだ。台湾侵攻のための陸海空ロケット軍の全軍統合演習も日常的に行われている。狙いは台湾にとどまらない。日本、自衛隊も在日米軍も中国軍の攻撃目標になっている。

彼らは米軍にしかなかった電磁カタパルトを備えた空母『福建』を11月5日に就役させた。中国政府は以下の内容を公式に発表した。

「PLAの演習準備は即作戦準備であり、演習は作戦である。統合演習は単なる訓練ではない。戦争準備の実施であり、その能力を強化するためだ。訓練から戦争への転換を可能にするものだ」

中国はいつでも戦争を始められる状況を作ったのだ。中国の考え方ひとつで戦争が始まる。彼らはその上で日々、訓練を繰り返している。

そのような状況下、7日の衆院予算委員会で立憲民主党元幹事長の岡田克也氏が台湾有事の場合、存立危機事態になるのかと問うた。高市氏は台湾有事の具体的なシミュレーションを描写し、特定のケースについて「存立危機事態になり得る」と答えた。

存立危機事態とは日本が直接攻撃されていない場合でも、日本と密接な関係にある他国、この場合に想定されているのは米国、が攻撃されて日本の存立が脅かされ、国民に明白な生命の危険がある場合を言う。

中国の侵略意図を挫く

法律上は、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がなく、事態対処に武力行使が必要と認められる場合、国会承認を経て集団的自衛権を限定的に行使し、自衛隊が出動できるとなっている。

岡田氏は、台湾とフィリピン間のバシー海峡が封鎖されても日本のタンカーなどは迂回ルートをとればよいので、日本への食料やエネルギー供給が断たれることはない、そういう状況下での存立危機事態は想定しにくいなどと質した。

高市氏は、有事にはいろいろな形がある、仮りに戦艦が派遣され武力行使を伴うものであれば、それは「どう考えても存立危機事態になり得るケース」だと答えた。但し、「個別具体的な状況に応じて全ての情報を総合して判断する」とも述べた。

岡田氏は高市氏に対し、「軽々に武力行使と言うべきでない」と批判。高市発言に関して、中国を名指しして武力衝突を想定した議論をするのは、日本が緊張を高めていると見做されかねないとの見方がある。

為にする議論ではないか。中国政府自身がPLAの訓練は単なる訓練ではなく戦争準備だ、演習は即作戦だと公言している事実はすでに述べた。緊張を高めているのは中国であることを忘れてはならない。

この認識を持って国会論戦を聞かなければならないだろう。わが国の防衛費の大幅増額は中国の侵略意図を挫くために必要なことなのだ。

高市首相が提言した造船、防衛など17の戦略分野への投資はいずれも単年度投資でできることではない。戦後約80年間手つかずできた種々の防衛関連産業を甦らせるためには大きな投資が必要で、1年毎のPB黒字化を気にしながらの予算編成では必要な投資財源は得られないだろう。赤字国債を発行してでも大型プロジェクトを進めなければならない時、単年度ベースでのPB黒字化に縛られたままでは、それは難しい。つい先頃まで、財源の範囲内で防衛予算を組むしかない、との声があった。それは予算の範囲内でしか国を守れないということだ。国家の危機に直面してそれを克服する道のひとつがPBを複数年で見ていくことだろう。高市氏の一言の奥の深さを知っておきたいものだ。

Tweet Check
トラックバックURL:
櫻井よしこ氏がネット新番組の発表をいたします。
「 財政政策に大変化か、高市国会論戦 」

新着記事

  • 2025年11月20日
    「 財政政策に大変化か、高市国会論戦 」
  • 2025年11月13日
    「 高市首相への期待、只管強い国づくり 」
  • 2025年11月6日
    「 高市外交、安倍総理の遺産で高評価 」
  • 2025年10月30日
    「 新首相、困難に抗し、風を受けて翔べ 」
  • 2025年10月23日
    「 公明党離脱は自民再生の大好機だ 」

記事フィルタ

カテゴリ
月別アーカイブ

  •  ・番組出演のお知らせ(2025年9月29日)
  •  ・番組出演のお知らせ(2025年7月17日)
  •  ・番組出演のお知らせ(2025年3月20日)
  •  ・番組出演のお知らせ(2025年1月8日)
  •  ・番組出演のお知らせ(2024年12月24日)

新刊のご案内

親中派80年の嘘
親中派80年の嘘
暴虐国家
暴虐国家

  • 国家基本問題研究所 - jinf
  • 櫻井よしこ 公式Facebook
  • 櫻井よしこ 公式Twitter
このページのトップへ
creative comons

このサイトに掲載されているコンテンツは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下でライセンスされています。

Copyright © 2025 Ascent Co.,Ltd. All Rights Reserved.