「 萩生田報道にみる朝日の執拗な歪曲 」
『週刊新潮』 2025年1月30日号
日本ルネッサンス 第1132回
わが国が多くの問題を抱えているのは今更言うことでもあるまい。一連の問題を生み出している責任はメディア、とりわけ『朝日新聞』にあることも今更、の話である。それでも強調したいのは朝日の歪曲報道は万死に値する負の影響を日本にもたらしているということだ。
日本国を貶めることが朝日の社是かと質したくなるほど、彼らは社全体で歪んだ紙面作りをしてきた。慰安婦問題の嘘、福島第一原子力発電所所長、吉田昌郎氏以下、懸命に働いたいわゆる「フクシマ50」の人々を貶める嘘を報じてきたのは記憶に新しい。その他にもおよそ考えられない数々の虚偽報道を展開した朝日はメディアとして常軌を逸している。
安倍晋三総理に対しては存命中も、悲劇的な死の後も、朝日は嘘にまみれた陰湿な批判報道を行い今日に至る。そしていま、安倍総理同様、朝日の執拗で事実無根の非難を一身に受けているのが旧安倍派の幹部、萩生田光一氏である。
1月18日、朝日は朝刊1面で「都議会自民裏金 略式起訴」の見出しで都議会自民党が政治資金パーティー収入など計3500万円を政治資金収支報告書に記載していなかった、今夏に予定される都議選や参院選に影響が及ぶ可能性があると警告した。
2面の殆ど全てを費やして報じる「時時刻刻」でも同問題を取り上げた。4面には「萩生田氏 再始動の矢先に」の横見出しで氏の顔写真付き6段の記事を展開した。横見出しの下には「都議会の裏金『運営まったく知らない』強調」の見出しが続いている。萩生田氏は全く関知していないと一瞬思わせ、直後にそのような予想を「野党、国会で追及へ」「立憲 各道府県の調査指示」という見出しで叩き潰している。
萩生田氏が「まったく知らないと強調」しても氏と都議会の裏金の間には何らかの関係があるに違いないという印象を朝日は創り出している。その意味でこの6段記事は印象操作の典型例だ。
日本国首相を目指す
高橋杏璃、松井望美両記者の筆になる同記事には、笑い出したくなる程の萩生田嫌いの感情が溢れている。記事はまず「派閥の裏金問題で処分を受けた」萩生田氏が「『次の政局』を見据えて活動を活発化させてきた」と書き、「おひざ元の都議会で起きた事件が足かせになる可能性もある」と疑惑の枠組みを設定する。
朝日が指摘した「活動を活発化させてきた」というのは「10日のネット配信番組」で萩生田氏が、「考えの近い仲間の結束に動く意欲を示した」ことだ。このネット番組は私が毎週金曜日に生配信している「言論テレビ」のことである。萩生田氏は番組でこう語った。
「保守の価値観を持つ自民党の皆さんが大同団結していかないと、次のリーダーはなかなか出せない」「そういうことを調整する誰かが出てこないといけない。そこで自分の力を発揮できればと思っています」「今までの経験を生かして、できる仕事は何でもやろうと思っています。その中の選択肢に、もし総裁というのが入ってくるのだったら、それはそれで覚悟しなければいけない」
日本国の政治において必ず重要な役割を果たす、多くの人の信頼を得れば自民党総裁、日本国首相を目指すという萩生田氏の決意表明を、私は国益に資することだとして、大いに頼もしく思い、喜んだ。
だが、朝日はそのような萩生田氏に並々ならぬ警戒心を抱いているのであろう。本来、萩生田氏とは何の関係もない都議会自民党の不記載問題を無理にでも萩生田氏に結びつけようと、以下のように書く。
「萩生田氏は都議出身で、都連会長も務めた。都政に及ぼしてきた影響力を疑う声は、党内にもない」「今回、事件の対象となった政治資金パーティーのうち、2022年分は萩生田氏が都連会長時代のものだ」
ここで朝日も見ていた言論テレビの番組で萩生田氏が語ったことを振りかえってみる。
「都議会自民党と都連は同じ東京都にありますが、全く別の政治団体なのです。私は都連の会長を務めましたが都議会自民党の(政治資金パーティーの)運営には今も過去も全く関係がありません」
政治ジャーナリストの石橋文登氏の解説だ。
「都連は自民党が全国47都道府県に持っている支部組織の一つです。千葉県連、埼玉県連などと同じです。地方議員と国会議員を束ね、主な役割として各選挙区の候補者調整と地方から国への陳情の受け付けがあります。東京都は47都道府県でも極めて特殊で、国の補助金は一切必要としていませんから、国会議員の都議会議員へのグリップは中々効かないケースが多いのです」
偽りの疑惑の沼
萩生田氏も「文藝春秋」2月号で都議会自民党と自民党都連のパーティーは全く別物であると断ったうえで、都議会自民党の特殊性について以下のように語っている。
「ぜひ知っていただきたいのは、都議は『国会議員より自分たちの方が偉い』と思っていることです(笑)。地方議員から国会議員への陳情は、財政基盤が豊かな東京では必要ありません。ですから都議は国会議員に何かを頼む必要がない」
その上で萩生田氏は「私は都議を2年半しかやっていないし、国会議員になってからは、頼まれた枚数をお祝いがてらに購入する程度だったので、(都議会自民党が)どういう運営かは全く知りません」と続ける。
言論テレビを見れば、また文藝春秋を読めば萩生田氏が「都議会自民党」の政治資金パーティーとは無関係であることがよくわかる。それでも朝日は全く異なる2つの組織を無理矢理くっつけて萩生田氏を偽りの疑惑の沼に沈めようとする。
それに協力しているのが立憲民主党である。同党の都連会長も務める長妻昭代表代行は朝日に対して「都議会自民のパーティーではあるものの、国会議員の関与があったかが大きな焦点」だ、「国会議員の裏金問題と、基本的にほぼ一緒のような構図だ」とコメントし、朝日は「(長妻氏が)念頭に置くのは、都連会長を務めていた安倍派の萩生田光一元政調会長だ」と結論づけている。
国民民主党の古川元久代表代行も朝日に「(萩生田氏も)元都連会長としての責任があるんじゃないか」と語っている。このコメントを、朝日は記事全体の締めくくりとした。朝日の読者は萩生田氏が都議会自民党の政治資金パーティーの背後にいて、不記載問題に深く関わっていたに違いないと考えるであろう。そのように記事は構成され歪曲されている。
言論テレビ、文藝春秋双方で明確に語っているように、萩生田氏は都議会自民党とは無関係である。事実を歪曲する朝日の異常体質は、朝日新聞が潰れて廃刊にでもならない限り直らないだろう。だからこそ、情報の受け手である私たちは朝日の報道に騙されないよう、賢くなる必要がある。