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2024.12.19 (木)

「 韓国親中政権の誕生は日本の悪夢 」

『週刊新潮』 2024年12月19日号
日本ルネッサンス 第1127回

韓国大統領の尹錫悦氏が12月3日午後10時半に戒厳令を宣布し、4日午前4時半に解除した。尹氏は与野党双方から、戒厳令宣布は憲法違反だと非難を受け弾劾決議の崖っぷちに立たされ、結局、謝罪会見を開いた。結果として氏は弾劾を免れたが、最大野党「共に民主党」代表の李在明氏は、毎週、弾劾決議案を国会に提出すると宣言した。

『統一日報』論説主幹の洪熒氏が「いまの韓国政治は2~3時間毎に状況が変化している」と語るように、与野党間で激しい攻防が続く。

李氏は、現在5件の裁判を抱えており、内1件で11月15日に有罪判決を受けた。二審の判決まであと2か月、最高裁判決までに3か月を要する見込みで、5か月後には有罪判決が確定する可能性がある。その場合、李氏は10年間の公民権停止となり、次の大統領選挙には出馬できない。だから尹氏と与党「国民の力」はそれまで時間を稼ぎ、大統領選挙を先延ばしにしたい。

他方、李氏と「共に民主党」は一日も早く尹氏を弾劾して選挙に持ち込みたい。選挙が早ければ早いほど、李氏が当選する可能性が高いからだ。そして、一旦大統領となれば、李氏に対する司法の告発はみな停止されるだろう。李氏が毎週、弾劾決議案を国会に提出してどうしても尹氏退陣を実現させたいとするゆえんだ。

李氏の外交、安全保障政策は尹氏とは対照的だ。李氏は反日、反米、そして反韓の人だ。とりわけ日本には厳しく、わが国を公に「敵国、敵性国家」と呼んで憚らない。朝鮮問題専門家の西岡力氏が語る。

「2015年の日韓慰安婦合意について李氏は、レイプ犯はわずかな金を払うことで免罪符を与えられたと、激しく非難しました。日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)についても、GSOMIAは事実上の敵国である日本に軍事情報を無限に提供する売国的枠組みだ。直ちに中断せよと要求しました」

世界の安全保障に影響

尹氏に替わって李氏が次期大統領に就任すれば日韓関係は確実に悪化する。尹氏の下で進んできた日韓友好は消え去り、冬の時代に逆戻りする。李氏は米国に対しても距離を置くだろう。ロシアや中国にもっと配慮し、韓国外交の力で両陣営のバランスをとるというのが氏の考えだ。韓国の力を過大評価する誇大妄想的な、この「バランサー外交」を歴代左翼政権は好んで提唱してきた。

李政権誕生で日韓関係は最悪になり、米韓関係も冷え込む一方、李氏がロシアに接近することも余り考えられない。なぜならロシアは北朝鮮と6月に同盟関係を樹立しており、北朝鮮は韓国を同胞の国とは見做さず、敵と位置づけているからだ。

唯一、手を差し伸べるのは中国であろう。後述するように中国にとって韓国を取り込むメリットは測りしれないほど大きいからだ。だがそのような朝鮮半島の状況―北朝鮮がロシアと結び、韓国が中国に接近する―は、日本の悪夢である。

歴史を振りかえればわが国は、朝鮮半島がロシアや中国の影響下に入り、日本国が直接、中露の脅威に向き合わなければならない地政学的状況に陥るのを最大限警戒してきた。そのような事態を避けるべく、いつの時代も必死の努力を重ねた。たとえば663年の白村江の戦いだ。唐と新羅の勢力に襲われた百済を救済するために日本は出兵して大敗した。それでも和睦を乞わず、日本に引き揚げるや、唐と新羅軍の来襲に備え国を挙げて軍備を強化した。古代日本が外国軍の脅威に目覚めさせられたのがこの時だ。わが国は百済は守り切れなかったが、朝鮮半島に手を伸ばした中国勢と死闘を尽くして国を守り切った。朝鮮半島を中国の支配下に置かせてはならないという安全保障の真実を否応なく認識した体験だった。

1894年の日清戦争もまた、同様の国家戦略から生まれた戦いだった。時代を超えて、わが国は一貫して朝鮮半島が中露の支配に屈しないように戦ってきた。

しかし今、半島の北半分はロシアの影響下に入り、南半分も中国の影響下に入る可能性が生まれてきた。わが国が最も恐れてきた状況である。韓国の中国接近が現実となれば、安全保障上の不都合にとどまらず、経済そのものにも深刻な影響を及ぼす。

トランプ氏が11月5日の大統領選挙に勝った時、尹錫悦氏はトランプ氏と12分間電話会談をした。その中でトランプ氏が尹氏に、韓国の造船業界が非常にうまくいっていると語りかけている。アメリカ海軍との協力を持ちかけたのだ。米国の軍需産業は長年の実質予算削減で縮小してきた。空母や海軍艦船の維持、修理の能力、建造船の力も翳っている。米国の海軍力を凌駕してしまった中国に対抗するために、トランプ氏は韓国の協力を要請したのだ。だが、政権交替で韓国が中国の影響を強く受けるとなると、米海軍への協力がスムーズに行くとは思えない。世界の安全保障に測りしれない影響が及ぶ事態となる。

どんよりした目

半導体問題も深刻である。シンクタンク「国家基本問題研究所」企画委員の細川昌彦氏の指摘だ。

「バイデン政権は中国を念頭に日米韓台4者連携(Chip4)を進めてきました。韓国の半導体輸出は4割が中国向けです。韓国経済を支えているサムスン電子、SKハイニックスは得意のメモリー半導体の約4割を中国工場で生産しています。こうした状況を念頭に、バイデン政権は12月2日、中国への新たな半導体輸出規制を発表しました。中国の人工知能(AI)の能力向上を阻止するために、それに不可欠な高性能のメモリー半導体HBMを規制対象にした。左翼勢力の李氏が政権を握れば、韓国が半導体政策を大きく変化させて、中国寄りになることも予想されます」

半導体を制する国が世界の覇者になると言われる現状下で、韓国全体が中国陣営に引き込まれることはこちらの陣営の致命傷になりかねない。

もう一点、大きな枠組みとして、中露関係の変化がある。12月8日、シリアのアサド政権が呆気なく倒れた。アサド氏を支援してきたプーチン大統領にとって最大の痛手であろう。ロシア軍は地中海に面するシリア国土に海・空両軍の基地を確保し中東、イスラエルなどへの展開の拠点としてきたが、この両方を失う羽目になる。また、トルコが支える反アサド軍からアサド政権を守り切れなかったプーチン氏の力の限界が世界中に明らかになった。中露関係はもう一段階、中国優勢に傾いた。

地球最大の大陸であるユーラシア大陸を中国が支配することは米国の孤立を招き、地球社会全体が中国のより強い影響を受けることになるというのが地政学の説くところだ。つまり韓国の政変はアジアにとどまらず、地球規模の勢力変更につながる可能性があるのである。しかし、石破茂首相のあのどんよりした目には、こんなことは見えてはいないのであろう。

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