「 動物行動学が切り出す日本の問題 」
『週刊新潮』 2021年5月20日号
日本ルネッサンス 第950回
七つの章に約60本の記事、もしも私に目が三つあったら、3本の記事を同時に読みたいくらい面白い本が送られてきた。『ウエストがくびれた女は、男心をお見通し』(WAC)だ。「なんとイヤらしいタイトルか」と思って見たら、著者は竹内久美子さんだった。
動物行動学の研究者として名高い彼女の記事は切り抜いて保存している私である。すぐに読み始めると、第4章の一話、「妻を取られないよう連帯するトカゲは左翼男にさも似たり」の見出しが飛び込んできた。
私は常々、わが国においても国際社会においても、保守陣営より左翼リベラル陣営の方が連帯力が強く政治運動推進の熱度も高く、しかも彼らの運動は実に長く続くと感じている。それに較べて自由・保守陣営は目標を立てて邁進するが、目標を達成したらそこで一安心、弛緩してしまいがちだと口惜しく思っている。
なぜ、左翼リベラルの運動は長続きするのか。もっといえば、なぜ彼らは日本国内だけでなく世界中で連帯し、執念深くあり続けられるのか、その答えを探し続けている。そのような問題意識の枠の中に、先述の、連帯するトカゲは左翼男のようだという見出しがストーンと入ってきたのである。
実は、竹内さんたちが恩師、同僚と共に設立した「日本動物行動学会」がいつの間にか「日本型リベラルの連中」に乗っ取られたそうだ。大層口惜しかったに違いない。
乗っ取った人々の言動を想い出すかのように、竹内さんは「日本型リベラル」を「思想のためなら捏造、改竄、隠蔽、研究妨害もいとわない人々」と定義した。慰安婦問題や、福島第一原発の吉田昌郎所長及び職員による、原発死守の必死の行動に関して、とんでもない捏造記事を報道したあの新聞が脳裡に浮かんだのは当然であろう。
竹内さんは人間社会に跋扈するこういう左翼勢力の「モデル、あるいはルーツ」にたとえられる動物を探した。すると、いたのである。「サイド・ブロッチド・リザード」というアメリカ西海岸の半砂漠地帯にすむトカゲだそうだ。
秋篠宮家に対する想い
詳しくは竹内本を読んでいただきたいが、このトカゲのオスは喉の色と体の大きさで三グループに大別される。その中の一番地味で、一番魅力に欠け、一番面白みのないグループのオスは、喉の色がブルーだ。このグループのオスたちは、喉の色が明るいオレンジやイエローに輝き、より魅力的で、その分メスたちにもっとモテる他のグループのオスに、自分たちのパートナーの妻トカゲを寝取られないよう、互いに連携し防衛し合っているというのだ。
一番冴えないグループのオスたちにとって、他の魅力的なオスに魅かれないよう妻トカゲをあらゆる角度から見張ることは、子孫を残せるかどうかがかかった、種の本能に基づく負けられない戦いである。他の二つのグループのオスたちとの戦いは、本能と執念によって一生涯続く。死ぬまで続く戦いなのだ。
その様子を描いた竹内さんは、「あれっ、どこかで見たような……」と締め括っている。どこかで、というより、もしかして、築地界隈で見たような……と私は大いに共感した次第である。
そして本書のテーマはガラリと変わる。竹内さんは2006年の秋篠宮妃紀子様ご懐妊の報を受けて「男子誕生の確率高し」という一文を文藝春秋に寄せたそうだ。生物学の知識に基づけば、女性が年齢を重ねるに従って、また最後の出産から時間が経過するに従って、男児誕生の可能性が高くなるそうだ。そのわけは詳しく本書で紹介されているのでこれもまた、著書を手にとって読んでほしい。
右の生物学的知見に加えて、「きっと何か天からの力添えが働く、この日本国が守られるはずだという確信めいたものがあった」とも竹内さんは書いている。多くの日本人が抱いた気持ちとピッタリ重なるのではないか。私も同様に感じ、日本を守って下さった神々に感謝したものだ。
このあとに竹内さんは「異常なほどの秋篠宮家に対するバッシング」、「女系天皇によって皇室が『小室王朝』『外国王朝』となる日」などに関して論を進めている。強調されているのは、紀子妃殿下が命に関わりかねない大きなリスクを乗り越えて出産なさった事実である。39歳での帝王切開。そうして悠仁様を産んで下さったことに、私たちは深く感動し感謝したはずだ。紀子妃殿下と秋篠宮家に対するそうした想いを忘れないようにと、竹内さんは釘をさしているのだ。
さらに、武漢ウイルス禍以前のことだが、秋篠宮ご夫妻が全力でご公務に取り組まれてきた事例も紹介している。たとえば、南米二か国を公式訪問なさり、帰国されて中一日おいて園遊会にお出になるなど、非常に厳しい日程を穏やかな笑顔でこなしていらしたではないかと強調する。
国民への教訓
武漢ウイルス蔓延の後、秋篠宮ご一家と職員の皆さん総出で、専門家の助言を得てビニール袋を活用した医療用ガウン数百枚を手作りして寄付されたことも紹介している。竹内さんは「これぞ皇族のあるべき姿ではないのか」と書いたが、全面的に共感するものだ。国民の苦難を和らげるために、ご一家が力を合わせて作業なさったことを心に深く刻んで忘れないようにしたい。
その上で竹内さんはこう続けた。
「秋篠宮家の方々は眞子内親王の一件さえ除けば、パーフェクトなご一家である」
眞子様の一件は本当に難しい。だが、眞子様も歴史上貴重な役割を果たされていると、以下のように考えることは失礼すぎるだろうか。
小室圭氏との婚約・結婚問題を通して、眞子様は小室家に関連するおカネの問題、眞子様への接近姿勢から推察できる小室氏の非常識などを、国民の目に触れさせて下さった。女性宮家を創設すれば小室氏が皇族の一員となる。そのような事態を招く女性宮家の創設は決して受け入れてはならないと、眞子様の一件は国民への教訓となった。
小泉純一郎元首相の下で女系天皇容認の空気が生まれ、その後も女性宮家創設論がくすぶり続けてきたが、それを見事に吹き払ったのが眞子様の恋だ。国民のほぼ全員が反対でもどうしてもというのであれば、せめてそこに、前向きの歴史的意味を見出すしかないのではないか。
お二人には各々ご自分の人生に責任を持っていただき、お二人なりの人生を全うなさり、その中で出来る限り沢山の幸福を積み重ねていかれるよう、国民として願うのがよいのではないか。
もう一点、竹内さんは日本のお母さんの母乳は世界一、日本の子どもの頭の良さも世界一だと書いている。頑張れば大丈夫なのだ。