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2020.11.12 (木)

「 米大統領選と絡んだ習近平強硬路線 」

『週刊新潮』 2020年11月12日号
日本ルネッサンス 第925回

本稿執筆時点で米国大統領選挙の予測はつきかねるが、中国のこれからの世界戦略は10月下旬の中央委員会第5回総会(5中全会)である程度見えてきた。習近平国家主席は対米強硬策に向かうだろう。

そもそも習氏は5中全会で何を達成しようとしたのか。産経新聞台北支局長の矢板明夫氏は、事前に乱れ飛んだ尋常ならざる量の人事情報から習氏の意図が透視できるという。

「多くの情報の中で最も注目されたのが、共産党主席ポストの復活と同ポストへの習氏の就任に関する報道。習氏が毛沢東のように全権を握り、あと15年間82歳まで、つまり終身、主席でいたいと考え、世論誘導目的でリークしたと考えられます」(「言論テレビ」10月30日)

毛沢東は➀国家主席として国全体を司り、➁党中央軍事委員会委員長として全軍指揮の権力を持ち、➂共産党主席として党に君臨した。誰も逆らえないオールマイティの権力を握った毛沢東はやがて暴走し始めた。しかし、毛の権限は余りに強くその暴走は誰も止めることができなかった。強すぎる独裁への反省から鄧小平らは党主席ポストを設けずにきた。それを復活させ、習氏は毛沢東になろうとしている。今回、習氏は自分の望む人事を固めきれなかったが、その背景に熾烈な権力闘争があると見てよいだろう。しかし、彼にはあと2回、チャンスがある。

ここで中国の政治の仕組みをみておこう。中国共産党の最高決定機関は党大会で、5年に1度開かれる。党大会が閉幕すると、中央委員会の全体会議がすべてを取り仕切る。中央委員会全体会議は1期ごとに7回開かれる。

まず中央委員会第1回総会(1中全会)が党大会閉幕直後に開かれる。1中全会では党執行部人事を決める。翌年春に2中全会が開かれ、新体制の国務院(政府)人事を決める。3中全会は新政権発足の約1年後に開かれ、主として経済政策を議論する。以降、1年ごとに4中全会、5中全会、6中全会が毎年秋に開かれ、その時々の重要課題が議論される。次期党大会開幕直前に7中全会が開かれるが、そこでは5年間を総括し、次回党大会の準備に入る。

大統領選の大スキャンダル

従来のルールでは習氏は2022年の党大会で引退しなければならなかった。だが、氏がその先も、また更にその先も国家主席として君臨する野望を抱いているのは明らかだ。

中国共産党のトップ人事に関するルール変更という大それた野望は、今回は実現しなかった。しかし、この後の6中全会、7中全会を利用して一歩ずつ進むことも可能だ。

習氏が戦っているのは国内の反習近平勢力だけでなく、アメリカでもある。習氏の直近の動きを見ると、対米融和路線と対米強硬・中国自立経済路線の間で大きく揺れたのが見てとれる。敢えて大枠でいえば、鄧小平路線か毛沢東路線かである。

矢板氏の説明だ。

「10月14日、習近平氏は深セン経済特区設置40周年を祝って深センを訪れ、改革開放の指導者、鄧小平の銅像に献花しました。まるで鄧小平路線を継承すると宣言したかのようでした。深センにはその後も2~3日とどまる予定だったと言われていますが、突然、北京に戻ったのです。そして異常なことが起きました。16日からの1週間で、常務委員会を4回も開いたのです」

常務委員会は日本の閣議に当たる。通常、週に1回程度開催されるが、たて続けに4回開かれた。

習氏が北京に戻ったのは、米国の大統領選挙に関連する大スキャンダルがメディアに報じられる直前のタイミングだった。民主党大統領候補・バイデン氏子息のハンター氏のスキャンダルの証拠が、メールや音声や映像の形で残っているコンピュータがFBIの手に渡り、内容が報じられたのだ。このスキャンダルには、ハンター氏と人民解放軍や中国の情報機関との間で交わされた取引情報に加えて、破廉恥なビデオ映像も含まれていたという。

鄧小平の像に献花した段階では、習氏はバイデン優勢と見て、次期バイデン政権とは中国の情報機関が撮ったと思われるビデオなどをネタに、取引しようと考えていたのではないか。だが、情報が曝露されてしまえば、もはや取引はなしだ。それどころか、バイデン氏は子息をこんな形で追い込んだ中国に凄まじい怒りを抱くに違いなく、トランプ大統領以上に中国に強硬になりかねない。

「習氏は大急ぎで北京に戻り、会議を重ね、米国には対決姿勢を取ると決めたと思います。経済は米国にも国際社会にも依存しないとして自力更生路線を強く打ち出しました。米国との関係修復は当分ないとの見方です」と、矢板氏。

工作員が暗躍

ハンター氏のスキャンダル曝露の背後にはインテリジェンスの世界の恐ろしい闇がある。一体どの国のどの勢力がハンター情報を曝露したのかは分からない。その中でロシア或いは中国が疑われている。

まず中国だ。ハンター氏を貶める情報の中には、中国でなければ知り得ない中国企業とのやり取りの詳細が含まれていたという。当然、反習近平側から出されたはずだ。バイデン氏を貶め、トランプ氏に勝たせて習氏の力を殺ぎたい勢力だと考えられる。

ロシアの工作員ならトランプ氏に勝たせる為の工作だろう。トランプ氏に中国と戦わせて、その間にロシアは世界で好き勝手にできる。

無論、その他にもさまざまなケースが考えられる。米国大統領選を舞台に世界中の工作員が暗躍しているのだ。中国もロシアも当のアメリカも、血眼になって自国の利益を守ろうと戦っている。まさに戦争である。

習氏が拘った国防法の改正からも、対外強硬路線が見えてくる。「中国の発展の利益が脅かされた場合、全国総動員または一部の動員を行う」、「国家の海外での利益を守る」などの条文が入ったのである。

同改革案は間違いなく法制化されるであろう。その場合、たとえば中国がまだ作れないICチップを特定の国が輸出禁止にした場合、中国の利益を損なうとして内外の中国人に総動員をかける、つまり戦争を仕掛けることもあり得るということだ。

日本では非常に広大な土地が中国人に買われている。豪州の事例に見られるように、国土を売ることはとても危険だ。敵対国に対してでなくとも、国土を売ることは国を売ることだ。日本国民として、北海道や沖縄の土地の中国人への売却は心配でならない。もし日本の土地を買った中国人の国土の利用を日本政府が制限する場合、中国の利益を損なうという理由で中国政府が自国民を決起させることも可能になる。この法改正によって恐ろしい事態が発生する可能性は否定できない。前例のない強硬路線を突き進もうとする習近平体制が見える。

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