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2020.06.04 (木)

「 賭け麻雀報道の裏に反安倍の執念 」

『週刊新潮』 2020年6月4日号
日本ルネッサンス 第903回

安倍晋三首相は5月25日、官邸で、「日本ならではのやり方で、わずか一カ月半で(新型コロナウイルスの)流行をほぼ収束させることができた。日本モデルの力を示した」と語り、東京など5都道県への緊急事態宣言を解除した。4月7日発出の宣言はこれで全面解除になった。

振りかえれば、ダイヤモンド・プリンセス号の乗客乗員約3700人、感染者約700人に医療を提供し、中国由来の日本国内の感染も、帰国者を含む欧州経由の感染もほぼ収束させ、結果を出した。

米外交誌「フォーリン・ポリシー(FP)」は5月14日時点で死者数は人口100万人で日本が5人、米国が258人、欧州での成功例のドイツでさえ94人と試算した。日本の死者は桁違いに少ない。この歴然たる結果に、当初日本に批判的だった彼らが電子版で書いた。

「死亡率は世界最低水準で、医療崩壊も起こさずに感染者数は減少している。不可解だが全てが正しい方向に進んでいるように見える」

FPだけでなく世界が賞賛する安倍政権の取り組みに対して、奇妙なことに、日本のメディアだけが厳しい批判を続ける。とりわけ「文春」と「朝日」は恰(あたか)も歩調を合わせたかのように突出した安倍批判に徹している。東京高検前検事長、黒川弘務氏に関する例はそのひとつであろう。

黒川氏は5月28日付けの「週刊文春」のスクープ報道を受けて辞任した。検事長ともあろう者が武漢ウイルスで国民も政府も一所懸命に自粛している最中、しかも黒川氏自身の人事問題が取り沙汰されている最中に、深夜に至る賭け麻雀に興じていたのは言語道断、辞任は当然だ。

相手を務めた産経新聞記者二人、朝日新聞の元検察担当記者で朝日新聞社の中枢部である経営企画室に所属する人物も同様だ。朝日、産経両社が謝罪したのは当然だろう。

取材源の秘匿は鉄則

朝日新聞の調査では黒川氏は4月~5月に4回、記者らと賭け麻雀をしており、法務省調査ではこの3年程は月に1~2回だったという。そこで疑問だ。黒川氏は産経、朝日とだけ賭け麻雀をしたのか。そうではないだろう。法務省は前二社以外のどの社が関わっていたのかもはっきりさせるべきだ。文春も当然追跡取材をすべきだろう。さらなる取材で浮かび上がってくるのは、恐らく殆どの社の記者が黒川氏につき合っていたということではないか。

そこで文春のスクープを読んで、感心する前に違和感を覚えた点がある。取材源についてである。文春は賭け麻雀情報をもたらしたのが「産経新聞関係者」だとし、取材源を明かした。記事では見出しにも前文にも産経記者の存在が記されている。産経にとっては大打撃だ。そこに、同じ社の人間が自社の記者をいわば「売った」構図が本文で浮上する。産経は信用できない新聞だという拒否感を読者が抱いても仕方がない。そのような構成で、文春はスクープを書いた。

ジャーナリズムでは取材源の秘匿は鉄則だ。それだけに文春がこのような形で取材源を明かしたことに疑問を抱くのは自然なことだ。この点は次の疑問につながる。前述のように文春は見出しにも新聞広告にも産経記者の関与を明記した。文中では二人についてかなり長く書き込んだ。だが、朝日の元記者の扱いは非常に小さく、見出しにも新聞広告にも「朝日」は出てこない。朝日が登場するのは6頁立ての特集記事のようやく5頁目に入ったところ、かなり後半になってからで、同人物についての記述は13行だ。

で、考えた。東京高検検事長の賭け麻雀の相手として、朝日と産経と、どちらの衝撃がより大きいか。産経には申し訳ないが、断然朝日だろう。私が編集長なら間違いなく「産経と検事長!」ではなく、「朝日と検事長!」を見出しに取る。なぜ、文春は朝日を殊更目立たせない構成にしたのだろうか。

元産経新聞政治部長の石橋文登氏が5月22日、インターネット配信の「言論テレビ」で核心を突くコメントをした。

「週刊文春が黒川氏賭け麻雀のスクープで描こうとしたのは、恐らく、安倍総理と近い黒川検事長は、同じく安倍に近い産経の記者と、こんなにベタベタに親しいというキャンペーンをやりたかったのではないか」

文春の狙いは安倍・黒川・産経の密な関係を描き出すことだったと考えられるのではないか。「文春」のあざとさは記事中の黒川氏についての次のくだりにも表れている。

「『何が何でも黒川氏を検事総長にしたい安倍官邸が、東京高検検事長の座に留め置くために異例の定年延長をした』(司法記者)ともっぱら解説されてきた人物である」

この「解説」を読むと問いたくなる。「もっぱら誰が解説してきたのか」と。匿名の司法記者の断定調の証言の根拠は何か、と。

「心より感謝」の意味

私は文春が黒川氏に直接賭け麻雀について質した5月17日の2日前、即ち15日金曜日に、「言論テレビ」で安倍首相に黒川氏の件について問うた。

安倍首相は、黒川氏と二人だけで会ったことはないこと、黒川氏に関する人事案は、検察庁・法務省の総意として承認を求めてきたものを、長年の慣習を尊重し内閣が承認したことなどを語った。

「安倍官邸」の主である安倍首相自身が黒川氏とは殆ど個人的なつながりがないのである。その人物を「何が何でも検事総長にしたい」と首相が思うとは思えない。当初、「安倍首相が」と書いてきたメディアも「安倍官邸」とぼかし始めた。

それでも「安倍官邸」が圧力をかけたと論難するのなら、官邸の誰が、どのような理由で、いつ、どのようにして「何が何でも」と言われるようなゴリ押しをしたのかを、文春、匿名の司法記者、さらには一連の報道に熱心な朝日は、特定してみせるべきだ。

冒頭で触れたように25日、安倍首相は「日本モデル」で武漢ウイルスの収束に至ったとして、「全ての国民の皆様の御協力、ここまで根気よく辛抱して下さった皆様に、心より感謝申し上げます」と語った。

緊急事態宣言発出の前、首相は西村康稔新型コロナ対策担当大臣らと強制力もなく接触機会8割減を要請できるのかを議論している。そのとき「日本人は必ずできるから、頼もう」と言ったのが安倍首相だった。

自粛した国民、命がけで働いた医療関係者、営業自粛の苦しさに耐えた全業種の人々、その全ての人々に「頼んで」収束を達成できた。首相の全国民への「心より感謝」の意味はその点にある。これこそ首相の言う「日本モデル」だ。「安倍憎し」の感情で日本モデルの根本を成す政府と国民の信頼、協力の貴さを評価しないとしたら、それこそ日本国にとって大きな損失ではないか。

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