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2018.10.06 (土)

「 中国が世界各地で仕掛ける「債務の罠」 「第二のスリランカ」阻止への正念場だ 」

『週刊ダイヤモンド』 2018年10月6日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1250

広域経済圏構想「一帯一路」を推進して、世界に覇権を打ち立てるという中国の思惑が、またひとつ崩れ去るのか。日本や米国、インドやオーストラリアは中国の横暴な世界戦略に修正を加えることができるのか。

インド洋に浮かぶリゾートの島国、モルディブで9月23日、大統領選挙が行われ、親中派のアブドラ・ヤミーン氏が敗北した。野党統一候補のイブラヒム・モハメド・ソリ氏が58%の得票で勝利したことで、これまでの親中路線が修正される可能性が生まれた。それ自体、歓迎すべきことだが、多くの困難が待ち受けているだろう。

前政権のヤミーン氏は2013年の大統領就任以降、いち早く一帯一路構想に賛同し、積極的に中国マネーを導入した。無謀なインフラ工事を進め、ヤミーン氏自身も腐敗の極みにあり、現時点で中国に対するモルディブの債務は20億ドルに上る。IMF(国際通貨基金)の統計では同国のGDP(国内総生産)は四五億ドルで、対中債務はGDPの実に45%を占めている。

モルディブが、「債務の罠」にはまったのは明らかで、モルディブ国民が今回の選挙で親中派を排除した最大の理由である。実は彼らの危機意識は、モルディブ同様、一帯一路の要衝にあたり、債務の罠にはまってしまったスリランカの事例によって高まった。

スリランカでも、親中派政権が巨額の中国マネーを導入し、ハンバントタ港の大規模整備を進めた。国民は膨れ上がる債務と6.8%の高金利のもたらす悲劇を直感し、親中派を退けた。

新政権は追加の開発を凍結したが、中国が損害賠償を要求すると窮地に陥った。どうあがいてもスリランカには賠償金の支払いも債務の返済も無理だ。足下を見た中国は、それまでの微笑みをかなぐり捨ててハンバントタ港の99年間のリース権を要求した。

こうしてスリランカ政府は、事実上、半永久的に港を中国に奪われてしまった。この間の経緯をじっと見ていたのがモルディブ国民だった。

港や戦略的に重要な拠点を奪われているのは、スリランカだけではない。オーストラリアも同様である。

同国の北に位置するダーウィン港は米海軍が定期的に寄港する軍港である。そこに隣接する広大な土地の99年間のリース権を、オーストラリアはなんと中国に許してしまったのだ。15年、中国が支払ったのはわずか約460億円である。オーストラリア政府はこの取引を阻止せず、アメリカのオバマ政権(当時)は事後になるまでこの件について知らされていなかった。

独占的権利を得た中国は、米海軍が拠点とするこの軍港の大規模拡張計画を発表済みだ。今年5月、アメリカは太平洋軍を「インド・太平洋軍」と改称したが、インド洋に睨みをきかせようとするアメリカに中国は堂々と挑んでいるのである。

ダーウィンからインドネシアの南側を北西に進むとスリランカに行きつく。インドの鼻先に位置する同国のハンバントタ港については前述したとおりだ。

ハンバントタから南西に下がった所に、今回、中国に反旗を翻したモルディブがあり、さらに西に進めば紅海の入り口にジブチがある。ジブチには、中国が初めて海外に築いた軍事基地がある。

ジブチに対しても中国はすでに債務の罠を仕込んでいる。同国のGDPは20億ドルとされるが、そこに中国はアフリカ最大規模の自由貿易区を、35億ドルかけて建設したのだ。

ジブチの辿るであろう運命はすでに明らかだ。世界各地で進行中のこの悪魔のような債務の罠に絡めとられた国々をどのようにして助けていくのかが問われている。とりわけ日米豪印はモルディブを第二のスリランカにしないために最大限の協力をしなければならない。まさに正念場である。

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