「 わが国で今も未確立の公文書管理ルール 無責任という意味では旧民主党も同罪だ 」
『週刊ダイヤモンド』 2018年4月14日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1227
過日財務省が発表した「決裁文書の書き換えの状況」からは、森友学園への土地売却で、財務省が森友側と価格交渉をしていたことが見てとれた。佐川宣寿理財局長(当時)が国会で価格交渉を否定したために、その発言と齟齬を来さないための書き換えであることが明白だった。
4月4日、小野寺五典防衛相が、陸上自衛隊が「不存在」としてきたイラク派遣時の日報が昨年3月に発見されていたことを報告し、謝罪した。
日報問題では、昨年2月16日に、防衛省が「不存在」と発表し、4日後の20日、稲田朋美防衛相(当時)は衆議院予算委員会で「確認作業をしたが見つけることができなかった」と答弁した。稲田氏はそのとき、防衛省に対して日報記録がどこかに残っていないか、探すように指示もしている。当時を振りかえって、氏が語った。
「私は誰よりも情報の透明性を大事にしました。徹底調査を命じ、見つかったら全て公開する、隠し事などしない方針を明らかにしていたのです」
小野寺氏の説明によると、稲田氏が新たに調査を指示した後の昨年3月27日に、自衛隊の「教育訓練研究本部」にあった「外付けハードディスク」から、イラク派遣時の日報が発見された。だが、同事実は稲田氏にも政務三役にも報告されなかった。その背景を防衛省側は以下のように説明した。
稲田氏の指示が出た後、南スーダン国連平和維持活動日報問題についての特別防衛監察が3月17日に始まり、改めて行った調査の中で、今回発表した資料が見つかった。但し、特別防衛監察は南スーダンの日報に関してだったため、イラクの日報を報告する必要は認識していなかった、というものだ。
こうして、1年以上が過ぎた。右の防衛省の説明が真実か否かも含めて、小野寺氏は調査委員会を設置した。文民統制、政治主導、政治への信頼確立のために、厳正な調査が欠かせない。
前述の財務省文書改竄は、明らかに佐川局長の発言と齟齬を来さないためだった。佐川氏の「価格交渉はしていない」との発言が誤りだったと認めさえすれば、全てを公開しても何ら問題がない内容だ。にも拘わらず、財務省が隠そうとしたのは財務省を守る為だったのだろう。今回、自衛隊に隠蔽の意図があったか否かは、以降の調査を待たなければならないが、なぜこのように公文書を巡る問題が生ずるのか。
自民党「公文書管理に関する改革検討委員会」の新藤義孝委員長は、国家の活動を記録する公文書に嘘が許されないのは当然だが、公文書の管理、保存のルールがわが国には未だ確立されていないとして、新しい時代に合わせて公文書の電子決裁化を提唱する。
「私が総務大臣のとき、総務省の文書は全て電子決裁化しました。こうすれば、記録は全て残りますし、公開にも便利です。役所での決裁の過程には往々にして行きつ戻りつの議論や方針変更もあります。電子決裁は消去しても全て残りますので、方針変更も残るでしょう。けれど理由を明記して、新たな結論を決裁すればよいだけのことです。大事なことは、議論の途中で誰が反対したとか、ちょっとした言葉の問題などをあげつらって非生産的な議論に陥らないことです。些末な議論で特定の人の責任を問うようなことになれば、自由な議論は引っ込んで、皆、イエスマンになります」
たとえば防衛省の文書問題で、「戦闘」という言葉が日報にあったからと言って、これを法律上の戦闘、国と国との軍事紛争に結びつけて論難するようでは行政府における大胆な議論はできないということだろう。
旧民主党政権下では、3.11の被害の中で、緊急災害対策本部など関連15の会議の内10の会議で議事録さえも作成されていなかった。文書管理について無責任という意味では旧民主党も同罪なのである。