「 政権非難溢れる森友文書書き換え問題 メディア側は確たる証拠を示すべきだ 」
『週刊ダイヤモンド』 2018年3月24日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1224
今日(3月15日)の新聞広告で「週刊文春」の激烈な見出しに驚いた。「総力取材『森友ゲート』これが真相だ!」「安倍夫妻の犯罪」と大書している。
「犯罪」とは尋常ではない。私は財務省発表の「決裁文書の書き換えの状況」と題した資料、78ページ分を精読したばかりだ。何が削除され、どう書き換えられたのか分析し、同問題には安倍晋三首相も昭恵夫人も関わりはないと結論せざるを得なかった。文春と正反対の結論に至っただけに、その見出しに驚いたのだ。文春は何を根拠に「犯罪」と決めつけたのだろうか。各テレビ局のワイドショーでも明確な根拠なしの政権非難が溢れているが、やはり、確たる証拠を示すべきだろう。
財務省による文書書き換えは、二つの問題を含んでいる。第一は、到底許されない決裁文書の書き換えが行われたということだ。これは誰が指示してどのように行われたのか、事実関係を精査し、法的に罰すべき行為が特定されればそのようにすべきだ。事実関係の調査は検察庁が行うのであろうが、出来るだけ早期の発表が求められる。
第二は、野党が強調する安倍首相夫妻の責任についてである。首相は森友学園に関係する土地売却及び財務省の決裁文書書き換えにどのように関わっていたのか、政治への信頼がかかっているだけにこの点ははっきりさせなければならない。
そこで前述のように、公開資料を注意深く読んだ。結果、安倍首相夫妻の関与はないと考えざるを得なかった。逆に見えてきたのは、森友学園側から近畿財務局に少なからぬ要請がなされ、近畿財務局が本省の財務省理財局に報告、相談し、許可及び指示を得て森友側の要請に応えようとした構図である。
たとえば森友学園は、当初小学校開設予定地を国から借り受け、8年以内に買い取りたいと要請した。後に「少しでも早期に買い受けたい」として、「7年後を目途に」と要請を変えた。
近畿財務局は国有地に関する事業用定期借地の設定期間は、「借地借家法23条により、10年以上50年未満と定められて」いるとして、森友側の要請を断ったが、森友側は諦めない。結果、近畿財務局は大阪航空局、財務省理財局の承認を得て特例措置を取った。「あらかじめ売払い時期を定めた売買予約契約」を結んだのだ。
建前として10年間は借地だが、10年を待たずして売却する予定という「予約契約書」をつくったのである。右の「特例的な内容」に至るまでに理財局長、即ち佐川宣寿氏の承認を得ているとの記述が、複数回登場する。
こうした背景がまず、あった。その中で佐川氏は昨年3月15日の国会で、「森友側との事前の価格交渉はしていない」と述べた。
今回の文書から、佐川発言に反する文言や内容がすべて削除され書き換えられていたのが判明した。決裁文書書き換えは佐川氏を守るために財務省理財局と近畿財務局の連携で行われたと見てほぼ間違いないのではないか。
小泉純一郎元首相や野党は、安倍首相が「私や妻が同問題に関わっていたのであれば総理大臣を辞める」と発言したから、書き換えが行われたと論難するが、安倍首相発言は2017年2月だ。財務省の森友関連文書の削除、書き換えは、その2年前の15年6月にすでに始まっていた。小泉氏らの論難は当たらないだろう。
昭恵夫人が籠池夫妻に案内されて問題の土地を見て「いい土地ですから(小学校建設を)前に進めてください」と語ったとの記述も削除されたが、籠池氏は国会で共産党に質問され、昭恵夫人はこう語ったと述べている。
「いい田んぼができそうだということでありました」
文春はこのような事実関係を踏まえて「犯罪」と書いたのか。それでメディアとしての信頼性を保てるのか。