「 憲法改正の機会は2018年しかない 成し遂げねば日本の真の再生は難しい 」
『週刊ダイヤモンド』 2017年12月30日・2018年1月6日合併号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1213
2018年は、大袈裟でなく日本の命運を決する年になる。戦後72年間かけて日本人の「常識」となった種々の価値観が根底から覆される年になるだろう。私たちはそのような大変化に対処する覚悟ができているだろうか。
17年12月18日にドナルド・トランプ米大統領は、米政権の基本方針を示す「国家安全保障戦略」(以下「戦略」)を発表した。56頁にわたる「戦略」は、(1)力による平和の達成、(2)米本土と米国民、米国の価値観と暮らし方の防衛、(3)米国の繁栄の推進、(4)米国の影響力の拡大、を柱とする。
「アメリカ第一主義」を全分野にわたって実現し、米国を守り抜くという視点から、トランプ氏は世界を分析した。この1年間の外交で必ずしも明確にされてこなかった対中、対露政策も明確にされた。両国に対する分析は厳しく、力によって米国優位を守り抜く決意が溢れている。
たとえば南シナ海における中国の行動を「拠点の建設と軍事化が南シナ海における自由貿易の流れを危険に晒し、中国は他国の主権を脅かし地域の安定を揺るがしている」と、客観的に見て正しく分析した。
「中国は急速に軍の近代化を進めているが、それは米国のインド・太平洋地域への接近を制限し、中国優位を確立することになる」「中国の大戦略は、相互に利益をもたらすと彼らは主張するが、中国勢力の強化はインド・太平洋諸国の主権制限につながる危険がある」
このようにも書いたうえで、米国は地域の安定と諸国の主権の相互尊重、諸国の独立性尊重という価値観を掲げる国々と協力して問題に対処していくと、謳い上げた。
米国の対中、対北朝鮮への厳しい見方は、日本にとって心強い。それだけに日本も努力しなければならない。
現に北朝鮮問題に関して、「同盟国との関係強化」「公平に責任を分担する同盟国との協力」の重要性を重視すると強調したのは日本への直接の要請、要求と見てよいだろう。
北朝鮮情勢、トランプ政権、中韓両国の歴史問題を含む執拗な対日攻勢、中国の尖閣諸島への侵略行動など、日本周辺の状況はとてつもなく厳しくなる。米国が守ってくれた戦後体制は様変わりし、国家としてどう対処するのかが問われる1年になる。
一番よいのは、無謀な挑発を日本に仕掛けても、それを退けるだけの力が日本にあること、究極の場合、その力を行使できる国であることを示せる体制をつくることだ。しかし、これは憲法改正なくしては不可能だ。眼前の北朝鮮危機、中国による軍事的脅威には間に合わない。
だからこそ、日本は日米同盟を堅持しなければならず、そのために、イージスアショアなど、1セット1000億円といわれる高額な買物もせざるを得ないのだ。だが、こんなふうに他国に頼りきりの国防政策は1日も早く変えなくてはならない。自国と自国民は自国が守るという鉄則を確立しなくてはならず、憲法改正が必要だ。チャンスは実はこの1年しかない。
政治日程を考えてみよう。19年は、4月に統一地方選挙、同月末には今上陛下ご退位、5月には新陛下ご即位、7月には参院選挙、G20の主催に加えて10月には消費税増税の予定もある。重要な国事が目白押しの19年に憲法改正を発議し、国民投票を実施する余裕はないと思う。
その次の20年は東京オリンピックだ。安倍晋三首相三選の任期も終わりに近づく時期であり、どれだけの影響力を残していられるのかは予測が難しい。こうして政治日程を考えれば、憲法改正の機会は18年しかない。
この1年で憲法改正を成し遂げることができなければ、日本の真の意味での再生は難しい。18年こそが試練の年だ。頑張るときでもある。