「 偏向報道で高まる世の大手メディア不信 NHK視聴・受信料支払の選択制導入を 」
『週刊ダイヤモンド』 2017年9月23日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1199
世の中のメディア不信が高まっている。森友学園問題や加計学園問題で際立ち始めたメディア不信の原因は偏向報道にある。テレビ報道に焦点を当てれば、NHKと民放のおよそ全てのニュース番組、ワイドショーの偏向は、テレビ史に残る汚点である。
たとえば、加計学園問題の当事者、加戸守行前愛媛県知事が7月10日、国会閉会中審査に前川喜平前文部科学事務次官と共に出席して意見を述べたときの報道だ。
NHK、NTV、TBS、テレビ朝日、テレビ東京、フジテレビ6局の30番組で加計学園問題の報道は8時間44分、その内前川氏の発言は2時間33分報じられた。前川発言と真っ向からぶつかる加戸氏の発言は6分しか報じられなかった。前川氏は「安倍首相の政治的圧力で行政が歪められた」、加戸氏は「歪められた行政が正された」と主張し、両氏は対立した。
各テレビ局は前述のように、対立する両氏の発言の内、前川発言のみを報じ、加戸発言を無視した。どの局も極端に偏っていたが、どうしても許容できないのがNHKだ。
「国民の皆様の放送局」という立場でNHKは受信料を徴収する。受信設備、つまりテレビなどを設置した者はNHKと受信契約を結ばなければならない、すなわち、受信料を払わなければならないとの放送法64条1項を盾にとり、NHKは受信料を払わない人々に法的措置も辞さない強い態度で臨み、捕捉率を約8割に上げた。受信料収入は昨年度実績で6769億円、民放首位のNTVホールディングスの主力事業収入3745億円の2倍近い巨額収入だ。
そのNHKが今、受信料収入をさらに上げるために電力、ガスなどの公益事業者に、受信契約が未確認の人々の情報を照会できる制度を導入しようとしている。インターネット放送にも踏み切り、ネット利用者からの受信料徴収も画策中だ。
こんな強欲な動きをする前にNHKには放送法のもうひとつの条項、4条を守ってもらいたい。4条は「政治的公平」「事実は歪曲してはならない」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにする」などと定めている。
加計学園問題でNHKは、前川発言をこれでもかこれでもかと報じる一方で加戸発言は事実上無視したが、これは放送法4条のはげしい違反である。放送法64条で巨額の収入を担保されることと、4条で政治的公平などを厳しく求められることは対になっているはずだ。64条だけを守り4条を無視する身勝手が許されないのは当然だ。
国際比較を盾にNHKは国民の情報を電力会社などからも得ようとしている。であるなら放送規律を守るために他国がどんな努力を重ねているかも学ぶがよい。日米英仏独韓で見ると、NHKをはじめ日本のテレビ局がいかに野放図であるかが見えてくる。
公正を期すなどの番組基準、事実関係を間違えた場合の訂正報道等の命令及び課徴金、悪質な場合の放送免許停止または取り消しは、日本を除いて全ての国で法整備されている。日本だけ、法整備されていない。
英国を除く米仏独韓の4カ国では最悪の場合の刑事罰まである。これももちろん、日本にはない。
放送法64条だけ守り、4条を無視するNHKは、国民に正しい情報を提供していない。これは民主主義の根幹を蝕み、国民の判断を狂わせる道だ。こんな放送局に受信料は払いたくないと、私は考える。そこで提案である。NHKを見たい人は見続けられるように、見たくない人は見ずに受信料も払わなくて済むように、新しい制度を設けるのがよい。スクランブルというすでにある技術を活用すれば今すぐにでも可能である。スクランブル制度の一日も早い導入を、私は広く訴えたい。