「 中国の脅威に晒されている沖縄で静かに高まる自衛隊配備への賛成論 」
『週刊ダイヤモンド』 2016年4月9日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1128
あらゆる意味で中国の脅威に最も晒されているのは沖縄県であろう。尖閣諸島の海域には武装した中国公船のみならず、軍艦もが出没する。東シナ海の領有権について一歩も引かない中国から沖縄県民と領土領海を守るにはどうすべきなのか。この点について、「琉球新報」など沖縄メディアは別にして、沖縄県民はいま目覚め始めているのではないか。
日本最西端の国境の島、与那国島に自衛隊沿岸監視隊が配備された。これで、防衛の空白地域だった広大な海域に、安全確保の小さな一歩が踏み出されたといってよい。昨年2月22日の住民投票で、自衛隊配備受け入れを選んだのは632人、反対は445人。「大差」での受け入れ決定がようやく形になった。町議会議長の糸数健一氏が語る。
「中国の脅威が迫っているのに、以前は島には2人の警察官がいるだけでした。国防上、島は完全に無防備でした。紆余曲折はありましたが、ぎりぎりのところで日本のための軍事力の配備ができたと思います」
陸上自衛隊員160人と家族94人が3月22日までに与那国島に入り、自衛隊の活動が始まったことを、糸数氏は心底、喜んでいた。だが「琉球新報」はこのニュースについて「反対派の住民15人が抗議」「警戒『緊張高める』」「島が攻められることにならないか。その心配で住民も島を離れてしまうのではないか」などと報じた。
同紙は中国外務省の「警戒感」を伝えたが、中国の脅威については何ら説明していない。沖縄を狙う中国が、その中国の脅威から沖縄を守るために配備された自衛隊に好意的なコメントを発するはずがない。
地元メディアの論調と沖縄県民の考え方の間に横たわるギャップの実態について石垣市議会議員の砥板芳行氏が語った。
「反対論は声高に発せられます。本土から革マル派や労組の運動員が、あたかも、沖縄を主戦場と見なしているかのような勢いで乗り込んできて、叫び続けています」
砥板氏は、しかし、沖縄はいまや、軍事的にもっと努力しなければならないと考える人々が増えていると語る。
「与那国島に配備された陸上自衛隊を歓迎する人々の中に、今回配備されたのが監視隊だけであることを心配する人々は少なくありません。通信情報収集小隊、後方支援隊、レーダー班、監視班に警備小隊などで、監視はできても抑止にはつながりません。脅威を抑止するには、石垣島や宮古島への自衛隊の配備が必要だという声は、実は、沖縄では静かではありますが、より主流だと思います」
そうした声を反映しながら、防衛省は奄美大島、宮古島、石垣島への配備を計画中であり、おのおのの地元では容認勢力の方が強いのが現実だ。
2014~18年の中期防衛力整備計画で宮古島には約800人、奄美大島には550人の配備計画が進行中だ。
「奄美と宮古はすでに計画が進んでいます。これらの島に地対艦および地対空ミサイルを置けば、中国への強力な抑止力になります。石垣市は少し遅れていますが、われわれも自衛隊配備の計画に正式に取り組み始めました」
砥板氏はこのようにも指摘した。石垣市は3月の議会で自衛隊配備反対派の請願および自衛隊施設建設に反対する陳情を不採択とした。一方で推進派の請願を継続審議とした。氏が語る。
「議会はまず、住民に自衛隊配備の詳細を説明した上でどうすべきかを決定するのがよいと考え、継続審議にしたのです。尖閣諸島は石垣市に所属しています。中国の脅威を知れば、石垣市への自衛隊配備に反対する人たちはいなくなると思います」
翁長雄志知事や沖縄メディアの反対論は必ずしも沖縄民意の全てではないと、あらためて実感させられた。