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2014.01.04 (土)

「 2014年、日本の価値観で国際社会に貢献していきたい 」

『週刊ダイヤモンド』 2013年12月28日・2014年1月4日合併号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1016 

激動の1年が過ぎ去り、新しい年が巡ってくる。新年は紛れもなく、アジアにおいても世界においても、日本がより必要とされる年になるだろう。そのときの最大の課題は中国の膨張を、アジア諸国のためにも賢く牽制することだ。米国の内向き政策で生ずる空白を埋め得るのは、日本しかない。

それにしても日本はどんな形で米国後退の空白を埋め得るのか。単なる力だけではあるまい。問われているのは価値観である。日本の国際社会への貢献は、およそすべての面において日本の価値観が問われることでもある。

日本は中国同様、漢字圏の国だが、中国とは全く価値観が異なる。日本が中国の影響を脱して独自の国柄を確立し始めたのは聖徳太子の時代であろう。7世紀のごく初めに日本最初の成文法、17条の憲法が生まれた。国家の根幹は「和」を基調とすべきと説いた17条の憲法は、国を統治する人々への訓話である。上に立つ者ほど、民のためによく働き、謙虚に身を慎み、賄賂に惑わされてはならないと説いている。

しかし、人間には争いがつきもので、争いを裁くのに最も重要なのは公正さだとも強調している。石が浮かんで葉っぱが沈むような不公正な裁きはしてはならない。常に国と社会に公正さを保ち、一人ひとりの民がこの国に生まれて幸福だと思うような国造りを教えている。

一人ひとりの民、つまり、国民を大事にする思想は、「百姓」と書いて「おおみたから」(大御宝)と呼びならわしてきたことにも見て取れる。天皇が大いに大事にする宝物が「百姓」、つまり国民だという意味である。

これを同時代の中国、隋と比べてみる。隋の2代皇帝煬帝(ようだい)は大規模運河の建設を急がせ、幾10万の民を投入し、苛酷な労働で夥しい死者を出した。朝鮮半島との戦いも繰り返し、隋はついに滅びた。彼らにとって民は単なる使い捨ての労働力だった。

民を「大御宝」と呼んだ日本では、この使役についてどんな定めがあったか。聖徳太子は17条の憲法の第16条に次のように明記した。

「農民を農繁期の春から秋に使役してはならない。農仕事のない冬に彼らの手を借りなさい」

中国の価値観とは正反対の、国民を大事にする日本の思想は、身分の上下を超えた人材登用制度を生み出し、国際社会を舞台として日本が活躍し始めたときは、新たな花を開かせた。人間に対する比類なく公正で穏やかな古代からの価値観が、人種差別撤廃の提唱という形で世界に提言されたのだ。

明治維新で開国し、明治28年に日清戦争に、38年に日露戦争に勝った日本は、第1次世界大戦で戦勝国の列に加わる。が、欧米列強を主軸とする国際社会は人種差別を当然視していた。

そんな時代、第1次世界大戦後の国際秩序構築のための国際連盟はいかなる価値観に基づくべきかの議論で、日本は人種差別撤廃を提案したのだ。欧米諸国にとって衝撃的な提案は、17対11の賛成多数で可決されたにもかかわらず、米国のウィルソン大統領が、この種の重要事案は全会一致でなければ決定できないとして突如ルールを変え、日本の提案を葬った。

日本の思いは往々にして国際社会の壁の前につぶされてきたが、これもその一例だ。しかし、日本の価値観は決して間違っていない。17条の憲法をあらわし、中国とは別の道を歩み始めた7世紀以降、1400年を超える長い歴史の中で私たちがこうした価値観を守り続けてきたことを、今こそ、私たちの胸に刻みたい。私たちは信ずる価値観のために雄々しく戦ってきた国民であることも、深く心に刻みたい。

その心と雄々しさをもって、日本を立て直し、アジアと国際社会全般に貢献することが求められている。それが2014年だと思う。

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