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2011.11.19 (土)

「 都知事のがれき受け入れに賛同する なぜ他の自治体は尻込みするのか 」

『週刊ダイヤモンド』   2011年11月19日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 912

東京都の石原慎太郎知事のがれき受け入れに、私は賛同し敬意を表する。知事の決定に都民数千の反対意見が寄せられたそうだが、なんと、嘆かわしいことか。知事は今月4日の定例会見で、「(放射線量などを)測って、なんでもないものを持ってくるんだから『黙れ』と言えばいい」と、知事らしい表現で都民と日本人に良識を示した。

3・11で生じたがれきのうち、福島県のそれは基本的に国が処理する。岩手県、宮城県のぶんについて国が全国の自治体に協力を求めたのは当然だ。震災から間もない4月時点で、572自治体が受け入れの意向だったが、放射能汚染への懸念が地元で表明されると、自治体が尻込みし始め、受け入れは一割以下に減った。実際に受け入れを開始したのは東京都だけだ。

なぜ、各自治体は石原知事に倣って地元民を説得出来ないのか。放射能で汚染されているとの風評に惑わされず、まず事実を把握しよう、そのうえで助けを必要としている被災者と被災地に手を差し伸べよう、それが本来の日本人のあり方だと、なぜ言えないのか。

そもそも問題のがれきとはいったいどんなものか。11月4日、都内に到着した30トンのがれきは津波で倒壊した家屋の解体によって生じたものだ。コンクリートがらなどは現地で再利用されており、広域処理に回されるのは可燃物だ。かつて、東北各地の家族を寒さ暑さから守っていた民家の残骸、木材や暮らしの道具が中心で、なかには衣服や布団もある。

知事はがれきに関して、都民を危険に晒さないための周到な検査体制を整えたうえで、都内への搬入を実施した。検査内容について、都環境局一般廃棄物対策課は以下のように説明した。

放射能汚染に関する都の検査は三段階にわたる。まず、現地で廃棄物の中から危険物を取り除き、廃棄物保管場所の空間線量を一時間おきに測定し、異常のないことを確認する。次にがれきをコンテナに積み入れるとき、サンプルを取り出し、鉛の箱に入れて放射線量を測定し、0・01マイクロシーベルトという安全基準値以内であることを確認する。最後にがれきでいっぱいのコンテナが東京に送り出される際、コンテナの横で空間線量を検査する。

こうして全段階で異常のないことを確認したうえで、がれきは持ち込まれる。知事の言葉どおり、問題のないものを持ち込んでいるのであり、反対する理由はない。むしろ私たち都民は、こういうかたちでの協力も含めて、被災地の人々の役に立ち、一日も早い復興になにがしか手を貸し得ていることに感謝しなければならない。

都は2013年度までに50万トンの受け入れを可能としているが、現地のがれきは約2,000万トンだ。これを一日も早く処理しないことには、復興そのものが進まない。進まない復興を前に、自分たちはがれきを引き受けもせず、政府のやり方のまずさだけを責めるとしたら、身勝手だ。

被災地の人々は3・11で互いに助け合い、静かに耐えることで立派な日本人の姿を内外に見せてくれた。私たちは日本人であることをどれだけ誇りに思ったことか。多くの人がボランティアで現地に行き、私たちは日本全体と日本人全員が、心を一つにしようと誓った。それが今、放射能の風評被害を起こす側に立っている。がれきのみならず、福島のおコメも果物も野菜も拒否する傾向にある。都のがれき検査同様、店頭に並ぶ食品は検査ずみで安全なのに買う人は少ない。

こんなことで日本人はよいのか。自治体は住民の声に対して、冷静に説得するどころか退いてしまう。大人であるべき人々も風評被害をたしなめない。自治体も日本人も自分のことしか考えなくなったのか。立派な日本人であることをやめるとしたら、いま親たちが守ろうとしている日本の子どもたちの未来も開かれることはないと思う。

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