「 『極端なナショナリズム』はどこに存在するのか 」
『週刊ダイヤモンド』 2010年10月30日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 860
菅直人氏の内閣を世の人びとは「仙谷内閣」または「菅防内閣」と呼ぶそうな。前者の説明は不要だ。後者は官房長官の仙谷由人氏が首相を守るべくすべてを引き受けるという意味で「官房」と「菅氏防御」をかけたものだ。
首相を守るのは確かに官房長官の責任だが、その目的は内閣のまとめ役として、首相とともに日本国民と日本国を守ることにある。が、仙谷氏の一連の発言は日本国民と日本国を守るのではなく、日本国民も日本国も、歴史を振り返りもっと苦しみ反省すべきだと考え、そのことを国民と社会に思い知らせ、実行させたいと、考えているように思えてならない。
尖閣諸島での領海侵犯事件に関して、仙谷氏は9月21日午前の記者会見で、「日本も中国も偏狭で極端なナショナリズムを刺激しないことを政府の担当者として心すべきだ」と述べた。
10月16日には、中国外務省の馬朝旭報道局長が「一部の群衆が、日本側の誤った言行に義憤を示すことは理解できる」と語ったのに対して仙谷氏は、「そういうふうにおっしゃらなければならない“何か”があるんでしょう」と述べた。記者が「何か」について説明を求めると、「私が中国側のすべての事情をわかっているわけないじゃないか」と怒った。
2日後の18日、参議院決算委員会で、自民党の丸山和也氏が、船長釈放の報に驚いて仙谷氏に電話をしたときの会話として、仙谷氏が「(日本の中国に対する)属国化は今に始まったことじゃないよ」と述べたと、暴露した。
仙谷氏は丸山氏との電話会談自体を否定したが、後に前言を翻し、電話会談は認めた。「属国」発言は否定し続けているが、私にはそれが必ずしも丸山氏の「作り話」だとは思えない。理由は10月4日の仙谷発言である。
その日の会見で、氏は「歴史の俎上に載せれば、そんなに中国のことを(悪く)言うべきではない」と述べ、中国は清朝末期から英米の帝国主義に領土を割譲されて民族としても国家としても大変つらい思いをしてきたと説明して、さらにこう付け加えたのだ。
「日本も後発帝国主義として参加して、戦略および侵略的行為によって迷惑をかけていることも、被害をもたらしていることも間違いない」
仙谷氏は現在の価値観に基づいて過去の歴史を振り返るという過ちを犯すとともに、歴史について無知であるがゆえに「日本加害者論」に染まっているのだ。真っ当な主張ができないのも、色濃い「属国」精神に染まっているのも、歴史についての誤った考え方ゆえだと思わざるをえない。
仙谷氏が警戒してみせた「偏狭で極端なナショナリズム」は、氏自身の言動を見ればよくわかるように、現在の日本には存在しない。「極端」どころか、通常の国や国民が持っている普通の健全なナショナリズムさえも存在するのかと、疑問に思わざるをえない。今回の事件が中国でどのようにとらえられているかを見れば、「偏狭で極端なナショナリズム」は、中国にこそ、溢れている。
中国の国民は皆、領海侵犯事件は日本の海上保安庁の巡視船数隻が中国漁船を取り囲み、体当たりするなど無謀、不法な行為で船長らを拘束したことが発端だと考えている。
事実とは正反対のこの情報を流したのは中国政府のメディア、新華社通信である。それを各メディアが次々と報じ、国民は信じた。偏狭で極端なナショナリズム的反日教育は歴史問題にとどまらず、現在進行形の政治問題においても続いているのだ。そこを見ないで、日本国内の議論が過激であるかのように難詰するのは、菅、仙谷両氏がその精神において、反日であるからだ。
国民が1年前に選んだ民主党は、民主党ではなくじつは旧社会党の左派、左翼と呼ばれていた日本否定論の連中だったことがあらためて思われる。
東シナ海ガス田開発と尖閣諸島と中国の苦悩…
写真は2010年10月31日朝日新聞東京版朝刊1面の記事から引用させて頂いた。
これだけ見ると、菅総理はまるで、あの人民革命軍などという国民主権のような名称の軍隊を持…
トラックバック by sean's photo diary — 2010年11月01日 23:08