「 『尖閣諸島の港湾整備』など石垣市長らによる4つの訴え 」
『週刊ダイヤモンド』 2010年10月16日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 858
「政府の反応の鈍さに、われわれは驚いています。領土問題という主権にかかわる事案について、いったいどう考えているのか、非常に頼りなく思いました」
こう語るのは沖縄県石垣市長の中山義隆氏である。四二歳の中山氏は、石垣市が所管する尖閣諸島周辺の日本領海を中国漁船が侵犯した事件の推移を見て危機感を募らせた。与那国町長の外間守吉氏、宮古島市長の下地政彦氏、竹富町長の川満栄長(えいちょう)氏、八重山漁協組合長の上原亀一(かめいち)氏らとともに総勢22人で10月3日、上京。翌日と翌々日、政府・民主党、自民党、地元出身議員らを精力的に訪ね、沖縄、尖閣諸島、東シナ海の安全について要請した。
「私たちは中国の漁船や調査船の動きを、暮らしの平和や安全を脅かす要素と実感しています。日本政府の中国船に対する姿勢には、常に不満足でした。今回は、しかし、海上保安庁が船長らを拘束し、逮捕した。従来は警告だけでしたが、初めて逮捕した。よくやってくれたと、八重山漁協の皆さんと喜んでいたのです」と、中山氏。
船長逮捕を、中山氏らが評価したのは、現場海域における中国漁船や調査船の横暴が忍耐の限度を超えるからだ。この問題に詳しい東海大学教授の山田吉彦氏が実態を説明した。
「尖閣の周囲はすばらしい漁場なのです。中国から漁民が大挙してやって来ます。閩晋漁(みんしんりょう)を拘束した日は、周辺海域に約160隻が、日本領海には約30隻が侵入していました。しかし、こんなことはザラに起きているのです」
現場を知る複数の人の話を総合すると、日本の漁業従事者らが怒るのには、十分な理由がある。日本人が日本の領海で漁をしているところに、中国人はお構いなしに、日本よりはるかに多くの漁船でやって来て、わが物顔に漁をする。日本漁船の網やロープと中国漁船の網やロープが絡み合う事態もたびたび起きる。すると彼らは、日本漁船の網やロープを切断してしまうのだ。
尖閣諸島海域には、日中間で如何なる漁業取り決めもない。日本領海に入ってきたら直ちに拿捕するべき海域である。しかし、そのような毅然とした対応は、金輪際、日本当局に期待できないことは、現場で長年、実態を見てきた沖縄の人々にはよくわかっている。日本政府の対応は「いつも穏やか」だ。領海侵犯の船に警告して追い出しはするが、中国漁船は翌日には戻ってくる。結果、日本人はあの豊かな漁場から遠ざかってしまう。そのような状況が、何年も続いていたために、船長逮捕は高く評価されたのだ。だが、喜びもつかの間、九月二四日には船長は処分保留で釈放された。
なぜこんなに弱腰なのかと憤りつつ、中山氏が語る。
「政府は、船長を勾留し続け、起訴したりすると大変なことになると考えたのでしょう。けれど、現場の実態から見れば、中国の指示どおりに『無条件即時解放』した今後のほうが大変なことになると思います」
中山氏は、これから中国による領海侵犯の多発が予想されると語る。
それを防ぐために、彼らはいま、4つのことを求めている。(1)国は領海侵犯に毅然として対処せよ。(2)海上保安庁巡視船および漁場監視船による常時監視体制を強化せよ。(3)尖閣諸島に港を整備せよ。(4)尖閣諸島は石垣市の行政区だが、固定資産税のための実地調査すら行えていない。したがって尖閣諸島の資産価値を調べるため、市の調査を許可せよ。
いずれも至極もっともな要請である。中国はいずれの動きにも激しく反発するだろう。それでも日本がまともな国になるには、こうした要請に応えていかなければならない。これはまさに主権をめぐる闘いなのである。力を用いて領土を拡張するという中華帝国主義と心して闘うことなしには、確実に尖閣諸島を失う局面に、日本は立っていることを、私たちの共通理解としたい。
中国を見誤るな…
中国共産党政府の方針は一貫している。彼らは、長期的に、日本を利用して、国力の増強…
トラックバック by 野分権六の時事評論 — 2010年10月20日 21:19