「 火星にはやはり生物がいる!? 科学に夢を託し国力の基盤を固めたい 」
『週刊ダイヤモンド』 2009年12月26日・2010年1月2日合併号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 819
2009年は目まぐるしい1年だった。日本の未来を考えると、とても心配な年でもあった。けれど、目を広大な宇宙に向ければ、おもしろい一年だった。宇宙で今いちばんホットな話題は、火星のメタンであるが、その解明に向けてのエネルギーがいっそう高まった年である。
昔から私たちは、宇宙には人類以外の生物が存在するかもしれないと想像してきた。典型が火星人である。数知れない小説や映画が創作され、子どもたちは宇宙の神秘に憧れてきた。太陽系惑星のなかで最も地球の環境に近い火星に、生命体が存在するかもしれないというのはおとなにとっても尽きない興味である。そんな地球外生命存在の可能性を示すのが、まさに火星のメタンなのである。
火星探査のために、欧州宇宙機構(ESA)や米航空宇宙局(NASA)はこれまでに多くの探査機を送った。しかし、火星に降り立つのは容易ではなく、約三分の二が着陸に失敗した。火星の姿はそれでも少しずつ、明らかにされてきた。かつては水も生命も存在しないと考えられていたこの星の北極や南極の地中深くに、大量の水が隠されていることがわかったのは1990年代後半だった。火星の周りを飛び続けているESAの探査機、マーズ・エクスプレスが送ってくる情報で、火星の大気に微量のメタンが含まれていることも判明した。ちなみに火星の大気は95%が二酸化炭素で、残りは酸素や水蒸気で構成される。
地球上のメタンは約半分が生物学的に、つまり生物が栄養素を消化する過程で作られる。一方で、地質学的に、つまり鉄が酸化するなどのプロセスでも発生する。火星のメタンが、そのどちらから生じているのかは現段階では区別がつかない。けれど、火星は確かに、メタンを発生させている。火星が、少なくとも地質学的には、「生きている」証拠なのである。
千葉工業大学惑星探査研究センター所長の松井孝典氏は、近年、火星の特定の地域でメタン濃度が高くなり、しかも夏に高く、冬には薄くなるという季節的変化もわかってきたと指摘する。
「それが生命活動で作られているなら、生命の存在の可能性が急にリアルになる。その場合、本当に普遍的な、宇宙で成立する生物学を確立できるかもしれない。20世紀の科学者は物理学と科学が宇宙で成立することを確かめた。だから物理学と科学の普遍性を使って宇宙や太陽の起源が議論できるわけです。ところが今の生物学は地球生物学で、なんの普遍性もない。しかし、これが太陽系生物学に、さらに銀河系生物学に発展すれば、初めて生物の起源と進化に迫ることが出来る。ワクワクするような話なのです」
火星は、太陽から地球までの距離を1とすると、1・5のところにある。地球よりずっと太陽から離れていて、そのぶん非常に冷たい。サイズは地球の約半分、そのまた半分が月である。直径は地球から順に1万2,000キロメートル、6,000キロメートル、3,000キロメートルである。
火星は地球と似た歴史を持つ。まず、その誕生は地球とほぼ同じ45億年前である。火星にも地球と同じくらいの水があったとされるが、質量が地球の約10分の1で、重力が弱いために、太陽から電気を帯びた風を吹きつけられると火星の水は宇宙空間に飛び散っていく。大気も薄くなり、地表熱も奪われる。地球と似た環境にあった火星が、地球のように美しい水の惑星になれなかったのは、こんな理由である。
NASAは14年以降に、火星の石を地球に持ち帰るという目標を掲げて探査技術を高めつつある。ESAも16年以降に打ち上げる探査機で集中的にメタンを調査する予定だ。日本はこの研究では米国、EUと肩を並べる先進国である。こうした基礎的な科学研究に夢を託しつつ、国力の基盤をつくっていきたいものだ。
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トラックバック by 普通のおっさんの溜め息 — 2010年01月09日 16:49