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2009.10.17 (土)

「 鳩山首相と一郎元首相の共通項 甘い『友愛』への大いなる不安 」

『週刊ダイヤモンド』   2009年10月17日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 809

鳩山由紀夫首相の唱える友愛外交は祖父・一郎から学んだと、首相は「Voice」9月号で述べている。一郎の友愛は「博愛」を指し、「革命の旗印ともなった戦闘的概念」だという。

一郎は友愛を説くとともに日本の憲法改正と再軍備を主唱した。こうした考えは、後述のように、一郎の信念というより政敵・吉田茂への対抗心ゆえのスローガンだったといってよい。

敗戦直後の政治史を振り返れば、鳩山一郎は戦後まもない1945年11月、日本自由党を創立し、総裁に就任した。翌年、米占領軍に公職追放され、吉田ら官僚群に自由党を預けた。吉田は自由党総裁として首相に就任した。鳩山は51年にようやく公職追放を解除され、吉田に自由党総裁の地位を返すよう要求したが、吉田は応じない。両者の対立は深まり、吉田は衆議院を抜き打ち解散した。

争点は憲法改正と再軍備だった。吉田は経済復興を優先し、右の課題には消極的だった。鳩山は、吉田とは正反対に憲法改正と再軍備の旗を掲げた。

吉田の在任期間は7年間に及んだが、その末期、鳩山は日本民主党を創立し、54年11月、ついに念願の首相の座に就いた。しかし、鳩山が手がけたのは憲法改正でも再軍備でもなく、ソ連との関係修復だった。

時あたかも東西冷戦の真っただ中で、日本は米国の庇護の下、自由陣営の一員として徐々に力をつけていた。米国はしきりに日本に憲法改正と再軍備を要請し、それは鳩山の主張と重なっていたが、鳩山はそうした目標に向けての政治努力をまったく行わなかった。鳩山の公約は単に吉田に対抗するための口先の公約だったのだ。また、米国と対立するロシア接近へと鳩山を突き動かした力のなかに、自分を公職追放した米国への恨みがあったと思われる。

では、鳩山のロシア外交の実態はいったい、どんなものだったのか。

鳩山は56年に日ソ共同宣言を出し、日ソ国交回復を成し遂げた。同宣言第九項には、北方領土に関して、両国が平和条約を結んだ後に、歯舞、色丹両島を日本に引き渡し、国交正常化の後も「平和条約の締結に関する交渉を継続する」と書かれている。

鳩山の日ソ共同宣言の20日前に、両国間で交わされた「松本・グロムイコ」書簡がある。日本の全権代表・松本俊一とソ連の第一外務次官グロムイコが交わしたもので、そこには「領土問題を含む平和条約の締結に関する交渉を継続する」と書かれている。つまり、「領土問題を含む」の7文字が、共同宣言では削除されていた。宣言に込められたソ連側の意図は、歯舞、色丹の2島返還で終わりということだ。

鳩山は後に、領土問題の交渉は継続されると弁明したが、北方領土について、日本側の立場の後退を受け入れたのは事実である。

由紀夫首相は、米国と対等な関係を結び、東アジア共同体の構築を目指すという。同共同体は、中国がアジアから米国の影響を排除するために提唱した地域連合だ。自民党政権は、中国の影響力強大化阻止のため、ここにインド、オーストラリア、ニュージーランドを招き入れた。結果、中国はもはや東アジア共同体を口にしなくなった。

それを今、由紀夫首相が提唱し、民主党は共同体には米国を入れないと公言する。むろん、米国も入らないだろう。同盟相手の米国と微妙な対立関係にある中国にテコ入れをする構図は、ロシアにテコ入れした祖父と似たものがある。

友愛を「戦闘的概念」と言いながら、一郎はソ連と闘うよりも領土で譲った。由紀夫氏もまた、尖閣や東シナ海で日本の領土領海をうかがう中国に闘いを挑むことなく、譲歩の気配を見せる。鳩山二代の友愛は相手に対する甘い期待でしかない。祖父と由紀夫氏の共通項、甘い友愛と甘い国際認識の行く先が思いやられる。

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トラックバック: 2件

  1. 天皇制廃止の考えを明確にした岡田害相…

    岡田克也外務大臣が信じられない暴言を吐いた。 国会開会の際に発せられる天皇陛下のお言葉に注文をつけたのだ。 しかも宮内庁の幹部を呼んでかなり激しい調子で文句を言ったという。 残念ながらどこの新聞にも書いていないので信じがたいかもしれないが、反天皇を公言する民…..

    トラックバック by 愛国を考えるブログ — 2009年10月25日  09:03

  2. 国慶節に思う。(13)…

    このことは、日本としては真剣に考えなければならない。マスキー法のように、法制化して強制されて、何とか日本の自動車メーカーは技術開発に努力して排ガス規制をクリアしてきた例を基に、CO2の25%削減も何とかなるであろう、などと現(うつつ)を抜かす技術馬鹿も実際には存在している。これがまた問題なのである。

    マスキー法は1970年12月に改正された法律で、1975年以降に生産される自動車の排気ガス規制であり、次のようなものである。

    1975年以降の生産車は、一酸化炭素CO2、炭化水素HCの排出 量を1…

    トラックバック by 世の中、まちがってる、根拠なき反日キャンペーン。 — 2009年10月29日  21:22

櫻井よしこ氏がネット新番組の発表をいたします。
「 鳩山首相と一郎元首相の共通項 甘い『友愛』への大いなる不安 」

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