「 民主党、霞が関改革に赤信号 」
『週刊新潮』 2009年8月27日号
日本ルネッサンス 第375回
総選挙の争点のひとつは公務員制度改革である。民主党は天下りを「官製談合や随意契約など税金のムダづかいの原点」と断じ、「天下りの背景となっている早期退職勧奨を廃止」、つまり天下りを全廃すると言ってきた。だが、民主党政権では、天下り全廃は出来ないだろう。むしろ、人事院と労働組合の連携に民主党が加担し、現在よりも尚酷い役人天国体制が作られかねない。
たしかに麻生太郎首相の下で作られた与党の公務員制度改革案も酷かった。「役人は排除せず、使いこなせ」と首相は語ったが、使いこなすには、まず人事権を持つことが欠かせない。現状では、政治家は官僚の人事に事実上口出し出来ない。中央各省の官僚が官僚のための人事を行い、霞が関は省益の塊りとなって自己増殖してきた。だからこそ、安倍晋三元首相以来の公務員制度改革で、官僚を省益ではなく国益に向かわせるべく全省庁の官僚人事を横断的に行うこと、そのために内閣に人事局を創設する案が注目されてきた。
安倍氏の改革案に霞が関側は猛烈な巻き返しをはかった。麻生政権に至って作られた公務員制度改革案は、内閣人事局のトップに、なんと、官僚を充てる内容になっていた。
元の木阿弥の自民党案は国会解散で廃案となり、いま、民主党は自分たちの案で公務員制度改革を断行し、天下りの弊害と無駄を一掃すると主張する。
その言やよし。しかし、冒頭に記したように、民主党政権が出来ても、天下りはそっくりそのまま残りそうなのだ。場合によっては現状よりも酷くなる。こう確信させる動きが進んでいる。
政治の混迷が続く7月24日、公務員制度改革に露骨に抵抗してきた人事院が、或る報告書を発表した。「公務員の高齢期の雇用問題に関する研究会」(座長・清家篤慶応義塾長)の最終報告書である。
「完全な開き直り」
同報告書で注目すべき点は、年金受給までの無収入期間が生じないように、公務員の定年年齢を2013年度から段階的に65歳に引き上げる、そのために「高齢職員のための職域を開発する」、具体的には「公益法人等への現役出向」、さらに「必要な業務の公務部内への再配置」を検討するというものだ。
お役所言葉を、公務員制度改革に詳しい屋山太郎氏が解説した。
「天下りをなくし、定年まで働いてもらう、定年は延長するというのは、基本的に正しい議論ではあります。しかし、2つ問題があります。
第一は、民間には65歳定年はまだ殆どありません。逆にいまは、いつリストラされるかわからない時代です。そんな時に公務員だけ、65歳までの雇用を保障する、というのでは国民の納得は得られないでしょう。第二は、民間に先んじて65歳まで保障するのであれば、当然、働きが悪ければ大幅減給も解雇もあり得るという民間並みの雇用環境でなければなりません。それもなく、仕事をしようがしまいが、役所が65歳まで高給を保障することは許されません」
氏は人事院の案のとんでもなさを更に指摘した。
「高齢職員のための職域の開発とは、仕事があるから人間が必要という民間の常識とは正反対で、人間を抱え込むから、適当な仕事を創るという意味です。具体策として、公益法人等への現役出向を挙げていますが、公務員の身分を外さずそのまま、公益法人、つまり、かつての特殊法人などに就職させるという意味です。これで天下りと言われていた人事が、天下りでなくなり、単なる人事異動になる。実態は変わらないのに、天下りをなくしましたと、一応、言えるのです」
氏の舌鋒が鋭くなる。
「必要な業務の公務部内への再配置と彼らはもっともらしい役所言葉で書きました。従来、公益法人等がやっていた仕事を国に引き取り、役所で高齢の職員にやらせるということで、本末転倒の極致です。元々、OBを養うために、官僚たちは公益法人に無駄な仕事を発注し、税金まで注入して天下り天国を創ってきました。その『仕事』と『天下りOB』を、いま、国が引き取るというわけです。完全な開き直りです」
屋山氏は、人事院の最終報告に従えば、たしかに天下り天国は名目上なくなるが、新しい形の役人天国が出現すると喝破する。
民主党政権が誕生すると仮定して、天下り全廃を唱えてきた同党は、右のような人事院案は全面的に拒否するのがスジだ。ところが民主党は人事院案を受け容れる気配が濃厚なのだ。
「阿吽の呼吸の馴れ合い」
鳩山由紀夫民主党代表は、多くの政権公約でブレ続けている。そのひとつが公務員制度改革だ。氏は再三、「各省の局長クラス以上の官僚に一旦辞表を出させる。民主党政権の政策を受け容れ、その実現に資する者だけを再任する」旨、発言してきた。
だが、代表が強調した右の霞が関改革は、民主党の政権公約に入っていない。「政策集INDEX2009」の「天下りの根絶」の項には、「早期退職勧奨を廃止し、65歳まで定年延長」と書かれており、一方、鳩山代表は「現実の法律などをひもとくと、降格人事を行うのは法的には難しい。辞表という形に必ずしもならないと理解している」と軌道修正した。
人事院案の方向性と一致すると言ってよい軌道修正の背景には、民主党とその支持母体、「連合」の連携があり、さらに連合と人事院の「腐れ縁」とでも呼ぶべき関係があると思われる。屋山氏が、両者の関係を示唆する国家公務員制度改革推進本部の顧問会議での体験を語った。
「会議で、課長級以上の幹部の降格についての扱いが問題になったとき、『連合』の高木(剛)会長が、『幹部といえども、すべて人事院の承諾なしには降格出来ない』と言ったことがあります。連合の代表が、公務員制度改革の妨げとなっている人事院の側に立って発言したのです。まさに人事院と連合が、舞台裏で長年続けてきた馴れ合いを見せつける発言でした」
公務員制度改革では、改革を進めて民間並みの査定や降格を可能にするかわりに、公務員にスト権や、労働協約権(賃金などについて交渉する権利)を認める事が議論された。だが、連合はこうした条件にも前向きではないようだ。屋山氏の指摘だ。
「放っておいても、人事院勧告で大体給料は上がりますから、連合は労働協約権など重視していないのです。それよりも、現状のまま、阿吽の呼吸の馴れ合いが好都合なのです」
労組に支えられる民主党、代表の発言や政権公約に見る後退ぶりは同党政権下での公務員制度改革の、思いもよらぬ後退を予測させる。民主党政策の行方を強く危惧するものだ。
民主党は官僚を改革出来るか?…
さて、民主党は官僚の改革と言っております。しかし、あの自民党ですら出来なかった事が果たして出来るんでしょうか?ワシは正直非常に疑問に思います。特に、官僚相手にどんどん切り込んでいけるような人材はワシは馬淵議員と長妻議員しか知りません。小沢はどちらかと言う…….
トラックバック by わし的世界見聞記♪ — 2009年09月04日 21:50