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2009.08.01 (土)

「 政権奪取間近の民主党 問われる小沢一郎氏問題 」

『週刊ダイヤモンド』   2009年8月1日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 799

8月30日の衆議院議員選挙で、民主党政権が誕生するだろう。政権政党として大丈夫かとの声を打ち消すように、同党は外交・安全保障政策などを大幅に見直しつつある。だが、一連の政策転換のあとにも、不安は残る。

それは小沢一郎氏問題である。寄り合い所帯の党を束ねて政権奪取に迫った力ゆえに、大半の党員は氏に物を言えず、結果、同党は党の抱える重大欠陥に目をつぶったままではないのか。

このような疑問を突きつけるのが松田賢弥氏の『小沢一郎 虚飾の支配者』(講談社)である。フリージャーナリストの氏は「政治とカネ」の問題を抉る数多くの記事を物してきた。そして今、小沢氏にまつわる巨額の政治資金の闇を追及する。

かつて小沢氏は、袋小路の日本の現状を打ち破り、福澤諭吉の説いた自主独立を実現しうる政治家に思えた。だが、政党をつくっては壊すプロセスから見えてくるのは、国家戦略よりも政局重視の姿だ。

また、氏の政治資金をめぐる不透明さも明らかになった。今年3月3日、氏の公設第一秘書の大久保隆規氏が政治資金規正法違反容疑で逮捕され、小沢氏は党代表を退いた。が、それ以前に、氏が政治資金で10億円余の不動産を購入していた事実も発覚していた。

大久保秘書の逮捕、起訴への検察批判があるのは事実だ。しかし、小沢氏の政治資金の使い方はどう見てもおかしい。すべて合法的処理で、やましい点はないと氏は強調するが、政治資金規正法に不動産取得の禁止規定がないのは、政治資金で不動産を購入するなど、誰も想像しなかったからだ。想定外ゆえに生まれた法の抜け穴の利用は、とりわけ政治家には許されない。

氏の不動産購入の原資となった政治資金には国民の税金である政党助成金も含まれる。国民は小沢氏の不動産取得用に資金を拠出したわけではない。

かつて小沢氏がつくった自由党は政党助成金28億円を受け取った。自由党から保守党が分裂したとき1円も分け与えなかったことは、氏のカネへの強い執着を示す事例として、永田町の語り草となった。では手元に残った資金はどうなったのか。松田氏が綿密な取材で驚きの事実を明かしている。

小沢氏は民主党との合流を利用して、自由党の政党助成金を自身の管理下に温存することに成功したというのだ。松田氏が描いたカラクリ、法の「抜け道」は以下のとおりだ。

自由党は民主党と合流した2003年9月26日に約13億6,000万円を自由党の政治団体である改革国民会議に寄付し、自由党に残った交付金はゼロになった。政党解散時に交付金残高がゼロであれば、それ以前にどの政治団体に資金を「横流し」しようが、事後、それをチェックする術はない。

松田氏は、自由党、つまり、小沢氏が、民主党との合流直前に巨額の資金を移したことを、「法の欠陥を逆手に取るような行為」だと断ずる。同法の成立に深くかかわった小沢氏は法の欠陥も承知しているはずで、それだけに「政治家としての倫理」が問われるとの批判に、私は同感するものだ。

ちなみに、小沢自由党との合流に際して、民主党は約2億9,500万円を自由党に寄付しているのだ。

政治を究極的に支えるのは国民の信頼である。信頼があってこそ、政治家も政党も生き残れる。その意味で、政治の基本は、本来最高の道徳の実践であるべきだ。松田氏が十数年間の取材で炙り出したのは政治に求められる道徳からほど遠い小沢氏の姿である。
本書を読めば、小沢氏、とりわけ民主党は、小沢氏の第一秘書の逮捕・起訴を国策捜査として論難するより、事実に誠実に向き合わなければならないことが見えてくる。それができないとしたら、たとえ政権を取っても、小沢氏、そして、民主党の未来は、危ういと思えてならないのである。

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「 政権奪取間近の民主党 問われる小沢一郎氏問題 」

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