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2009.05.09 (土)

「 国際社会で深まる台湾の危機 日本は最悪の場合に備えるべき 」

『週刊ダイヤモンド』   2009年5月2・9日号合併号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 787

連休が近づき、緑陰が濃くなり始めると、台湾の友人たちを思い出す。すっかり暑くなった台北の街を歩いては、木陰で涼む。街を行く人たちはどの人も皆、活気に溢れ、人懐こい笑みを浮かべている。

台湾ほど日本人に優しい国はないだろう。その優しさは表面だけではなく、心の中からわき出す優しさに思える。日本統治時代の日本への反発を経て台湾の人びとが到達した、日本的価値観への理解を含んだ優しさである。

私は台湾の人びとの優しさに感謝し、このうえなく大切に思う。だが、台湾は国際社会で深刻な危機に瀕している。シンクタンク、国家基本問題研究所の意見交換で、米国ワシントンで耳にした台湾論は、台湾の孤立を強く印象づけるものだった。

ほぼ毎日、さまざまな研究所でなんらかのセミナーなどが開かれるワシントンで、たった一つ、決して開かれないセミナーがある。チベット人やウイグル人などの少数民族に対する中国の弾圧に関するセミナーだ。

中国にとって不都合なセミナーは、たとえ計画されてもいつの間にかつぶされる。中国共産党の情報活動は活発で、巧みなのだ。

中国の情報発信は台湾のそれを上回る。結果として、大国米国の政策立案にかかわる人びとは、中国への理解をより深め、台湾への関心は薄れていく。ワシントンにおける台湾への視線は、いかにも、冷めていた。

ジョージタウン大学のR・サッター教授は台湾から戻ったばかりだった。教授は、約1年前、馬英九氏が台湾総統に就任したことについて、あらためて非常に高く評価した。反対に前総統の陳水扁氏については、「北京を批判して、自分が選挙に勝とうとした。イラクで戦っている米兵の命をより大きな危険に晒した」と強く非難した。

シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ・インスティテュートで研究するD・ブルメンソール氏は、米国で台湾への関心が低い理由は次の三つと説明した。(1)米国は多くの国際社会問題を抱えており、これ以上の問題を抱え込みたくないこと、(2)中台が対話をし、一見、緊張が緩和されたこと、(3)米国は中台関係には常にあいまいな戦略を採ってきたこと、である。

表面的に見えにくいけれど、もっと重要な要素もある。それは、(1)中国の軍事力の配備がより密に、より高度になっていること、(2)中国との経済交流で利益を求めながらも、台湾人は中国に溶け込み切れずにいること、(3)台湾人は、決して、自ら中国と統一しようとは考えないこと、である。

馬総統自身が、中国との統一を、たとえ望んだとしても、総人口2,300万の85%を占める台湾人の意向は無視出来ない。したがって、台湾が中国に併合されることはないと、氏は見る。唯一の例外は中国が武力行使に踏み切る場合だ。それは米国と日本を敵に回して戦うことを意味する。両国は2006年、日米安全保障協議会で台湾問題の平和的解決を宣言した。中国の武力行使は許さないとの国際公約である。

中国は現実的で賢明な国だ。武力行使に踏み切ることはあるまいと思う。しかし、最悪の場合を考えて、準備はしておかなければならない。つまり、日本の軍事力の整備を急がなければならず、自衛隊の行動を縛る憲法や自衛隊法、集団的自衛権の解釈なども変えなければならない。

一連の改正は、台湾のためではなく、日本自身のためである。なぜなら、いわゆる日本の“再軍備”こそ中国に対する最大の抑止力だからだ。しかし、教授は言う。

「そうですが、中国は日本が再軍備できるとは見ていません。日本がいくらそう言っても、信じません。結局、中国に対する日本の抑止力はないのです」

決して戦わず、どんな状況でも蹲(うずくま)ったままの国であってよいはずがない。

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