「 テポドン騒動で明らかになった米国から日本へのメッセージ 」
『週刊ダイヤモンド』 2009年4月18日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 785
4月5日に日本列島を飛び越えた北朝鮮の長距離弾道ミサイル、テポドン2号改良型が日本にもたらしたのは、自力で国を守れる水準まで軍事力の整備を急げ、というごく平凡な教訓だ。
ミサイル発射への国際社会の対応は二つに割れた。国連安全保障理事会では日米両国が厳しく北朝鮮を非難したのに対し、中露両国は冷めていた。「安保理の行動は、慎重かつバランスの取れたもの」であるべきだと主張する中国に、北朝鮮非難の気配はない。
一方、中国が北朝鮮にミサイル関連技術を供与していたという情報がある。韓国系新聞「統一日報」によると、これは4月2日、韓国国家安保戦略研究所主催のセミナーで韓国国防研究院が発表した情報だ。テポドンミサイルの1段目が、中国製ミサイル「東風」か、「東風」を人工衛星の打ち上げ用に改良した「長征」だというのだ。
発表はさらに、中国が1970年の人工衛星打ち上げに使用したロケットは、射程4,750キロメートル、弾頭部搭載重量2,200キログラムの長征4型を元に製造されたが、今回のテポドンはこの長征4型の技術供与を受けて改良されたと推定されるという。とすれば、テポドンは、約40年前の中国の技術を改良して飛ばしたものとなる。韓国国防研究院の発表は、中国と北朝鮮が水面下で利害を共有していることを示す。
では、日本の同盟相手国、米国はどうか。北朝鮮は98年と2006年の2回、テポドン1号と2号を発射したが、いずれの場合も日米両軍が連携して対処したわけではない。米本土に届く可能性のないミサイル発射に米国が真剣に対処しないとしても、これは仕方がない。だが、今回は、米国は日本と役割分担してミサイルを追尾した。その意味で北朝鮮のミサイルに対する日米両軍の連携は今回が初めてだ。
とはいっても、ゲーツ国防長官は当初から日本の直面した脅威にはまったく触れず、北朝鮮のミサイルが米国を狙ったものでない限り、撃墜しないと言明した。国家の安全保障は、第一義的に当事国自身が担保すべきで、同盟ゆえに米国が常に日本に降りかかる軍事的脅威に対応するわけではないとのメッセージを、米国が突きつけている。
その米国と、中国、ロシアに北朝鮮が事前にミサイル発射について詳細を報告していたことも判明した。はずされたのは日韓両国だ。
韓国無視は、南に対する優位を主張する北朝鮮の政治戦略だ。だが、日本に対する一連の政策は、北朝鮮が米国との関係さえ改善すれば、国防力が不十分で米国の庇護を受けるしかない日本は、いや応なく米国に追随するとの見方に立脚している。軍事力と外交力というごく普通の国家なら必ず備えている国家の基盤が、日本に欠けているために、端から、まともに相手にしようとしないのである。
テポドン2号改良型ミサイルは、2段目のブースターの切り離しができないまま、太平洋に落下したことが確認された。つまり、北朝鮮は今回も失敗したわけだ。同時に、しかし、飛距離は予測の約2倍に伸びた。
北朝鮮は、今回の発射で、独裁体制の引き締めを図り、同時に、テポドンの“威力”を見せつけてイラン、シリアなどへのミサイル輸出に弾みをつけたい考えだ。その技術は国際道理に反してでも軍事力を利用して、自国の主張を貫こうとする国々に、さらなる力を与えることになる。
そのような北朝鮮の軍事的脅威に、最も深刻なかたちで直面しているのが日本である。だからこそ、米国が日本に送り続けるシグナル、いかなる国も、基本的に自力で自国の安全保障を担保するのが通常の姿だという意図を、心して読み取らなければならない。防衛力整備のために、日本は、これまで一律に防衛予算を2%ずつ削除してきたが、それをやめ、早急に防衛予算を増やすべく方向転換するのがよい。
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ピンバック by Japan: a perfect storm for security policy change? | East Asia Forum — 2009年04月28日 22:56