「台湾の野党党首が危機を訴える台中経済協力の“罠”」
『週刊ダイヤモンド』 2009年3月28日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 782
台湾の野党民主進歩党の主席、蔡英文氏は40代、歯切れがよいうえにきわめて論理的な女性だ。
17日早朝に行われた記者会見では、今民進党の党首として高い支持を受け、台湾の将来の指導者となる可能性もある蔡氏の発言に注目が集まった。前主席で総統だった陳水扁氏が掲げた台湾独立路線を維持するのかとの彼女への問いは、米中両国が神経をとがらせる問いでもある。蔡主席は以下のように答えた。
「民進党は過去8年間、独立問題に対処しようとしてきましたが、その間に台湾人意識が急速に高まり、台湾の主権は台湾人によって管理されるべきという認識が強まりました。台湾の主権は2,300万人の国民が共有するものだというのが、わが国世論の合意です」
台湾は独立国であり、その独立の継続が国民の意思だと言っているのだ。このような主張の裏づけとして、党とメディアによる二つの世論調査を蔡主席は紹介した。
「CECA」(包括的経済協力協定)を進める件について、それが主権の維持にかかわっていくとしたら、それを受け入れるか否かは国民投票で決めるべきかと問うた調査である。ちなみにCECAは中国側が昨年暮れに提案した6項目にわたる中台協力の具体策だ。
馬英九総統は2月27日、台中経済関係の緊密化のために、同協定締結の交渉を始めると決定した。馬総統は、中国との緊密化こそが台湾の不況を救うと主張する。
だが、民進党の調査では、64%が、本格的な交渉の前に、国民投票で国民の意思を確認すべきだと答えた。メディアによる調査でも過半数が同様に答えた。「メディアの調査はCECAが主権にかかわる事柄かもしれないという前提なしで行われました。つまり経済問題としてのみ、CECAをとらえて調査したのですが、それでも半分以上が二国間の協力関係に踏み切る前に国民投票が必要だと答えています」と、蔡主席。
蔡主席は、記者会見に先立って取材に応じ、台中経済協力の“罠”について語った。
「中国はこれまで、台湾が各国と自由貿易協定(FTA)を結ぶのを、ことごとく、妨害してきました。台湾独自の対外経済関係を崩すことによって、中国の枠に封じ込める作戦なのです」
蔡主席がさらに語る。
「台中経済の現状は正常な国家間のそれとは言いがたい。中国はWTOの枠をはずれて、台湾と直接の関係をつくろうとします。きわめて短期間に事実上の経済統合を進めようとしているのです。台湾経済は十分な調整ができずに、伝統的な産業や農業が軒並み、深刻な打撃を受けています」
蔡主席は、中国との貿易関係も他国との経済関係とのバランスのなかで考えるべきだと強調する。
台中関係のもう一つの懸念は軍事力のバランスの崩壊である。台湾海峡における軍事バランスが、中国優位になってしまったことは明らかである。加えて、米国が中国の意向を気にして、台湾が必要とする対潜哨戒機P3Cやディーゼルエンジンの潜水艦、戦闘機のF16CDなどについて、売却が滞っている。
政治的な状況だけでなく、台湾にとって不利なのは、たとえば、潜水艦に関して米国が原子力潜水艦に移行していることだ。台湾がディーゼルエンジンの潜水艦を必要としても、もはや入手しにくい状況が生まれているのだ。
包囲網が狭まっているかに見える台湾情勢に、国民党が危機感を抱いている様子は見えない。中国に抗するのは民進党である。その若き党首は、最後に語った。「アジアと台湾にとって、鍵は日本の動きです」。日本の運命に大きくかかわる問題について、日本は台湾の期待に応えられるだろうか。
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