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2009.02.21 (土)

「『暗黒牢獄』への投獄が続く中国 日本は中国国民を支える発言を強めよ」

『週刊ダイヤモンド』   2009年2月21日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 777

スイスのジュネーブに本部を置く国連人権理事会で、二月九日、中国の人権弾圧問題が集中的に取り上げられた。「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン」紙が伝えたところによると、中国人の証人が次々と体験を語っている。

銀行員の46歳の男性は、家を奪われそうになり地元役場に訴えたが解決されず、北京の中央政府に直訴した。

ここまではこれまでもよく知られていた現象である。北京五輪開催を前に直訴のために首都に上った人たちは、全員北京中心部から追い払われた。中国政府は五輪主催国として、人権弾圧を改善し、法律も遵守するようになったはずだった。が、五輪から半年もたたない今、事態は中国全土で、日ごとに悪化していると、彼らは訴える。

前述の銀行員は、直訴したところでいきなり勾留された。調査はいっさい行なわれず、司法手続きもなしに「暗黒牢獄」に投獄されたというのだ。

暗黒牢獄には、「法律学習」のスローガンが掲げられていたそうだ。しかし、法律の学習などはまったく行なわれず、彼はただ、拘禁された。人権理事会で証言した九人のなかには、一年以上拘禁された人物も、地方に送り返されて地元の“ボス”から暴行された人物もいた。

留意すべきは、こうした暗黒牢獄に送られる人びとは、反体制運動家でも政府批判の言論人でもなく、ごく普通の国民だということだ。生活上の問題に関して、真っ当な解決をしてほしいと考え、北京の中央政府を信じて、地方からやって来た人びとだ。そういう一般の、中央政府の指導の枠内に十分に収まっている人びとは、かつて、直訴をしても相手にされなかった。あるいは、地方政府の回し者のヤクザらに暴力を振るわれることはあった。だが、今は中央政府が彼らを獄に送るのだ。そしてこのようなケースが、今、「数限りなく」見られるという。

この厳しい措置は何故だろうか。昨年12月10日に著名な作家や弁護士、言論人ら303人が署名した「08憲章」をどうしても考えてしまう。同憲章は、中国は共産党が天下を取った独裁体制で、その独裁の下で起きた文化大革命では数千万人の国民が犠牲になったと指摘、独裁体制の終結と民主的な選挙の実施に加えて、複数政党制の確立を要求する内容だった。

中国共産党はただちに「08憲章」をインターネットから削除した。彼らが恐れたのは、頭脳集団の民主化勢力と、社会に対する不満を抱いているごく普通の人びととが結び付くことだ。

中国出身で日本に帰化した評論家の石平氏は、天安門に集った民主化運動の一員だった。氏が指摘している。
「天安門で非常に大きな運動となった民主化へのうねりは、その後、力を失いました。理由は経済発展です。高い成長率が中国全土に恩恵をもたらしました。極貧の農村においてさえも、生活は底上げされました。どの階層も、それなりの豊かさを求めることで市場経済の波にのみ込まれていったのです。経済発展が中国共産党の一党独裁に正当性を与えてきました」

しかし、今、世界は、そして中国も、その経済成長が劇的に鈍化しつつある。五輪後の中国社会では、暴動やデモが以前にもまして頻発している。経済成長の鈍化で失業者が急増し、高まる社会の不満と不安が政府批判となって噴出しているのだ。

米国では在米の中国民主化組織が中華連邦共和国の建国を呼びかけて、米欧を主舞台とする運動に乗り出した。国連人権理事会でも、暗黒牢獄に代表される一般国民に対する幅広い人権弾圧を、今年の最重要項目として論ずる構えだ。中国情勢は変わり、中国共産党の一党体制も確実に揺らいでいくと思われる。であれば、隣国として日本は、弾圧される中国国民の側に立って、もっと発言していかなければならない。

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「『暗黒牢獄』への投獄が続く中国 日本は中国国民を支える発言を強めよ」

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