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2008.10.04 (土)

「民主党の〝高速道路無料化案〟は真剣な議論に値するのではないか」

『週刊ダイヤモンド』  2008年10月4日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 758

自民党に麻生太郎氏、民主党に小沢一郎氏。真っ正面から闘う構図のなかで、私はどうしても、民主党の高速道路無料化の公約に注目してしまう。

財源はどこにあるのだといって、自民党が、同案をまともに取り上げないとしたら、大きな損失につながりかねない。なぜなら、現行の高速道路会社のあり方、つまり、小泉純一郎首相の下で行なった道路公団民営化はあまりにも明らかな失敗であり、高速道路保有・債務返済機構の下で、日本の高速道路経営は必ず失敗し、より大きな借金を次世代に残すことになるからだ。

道路族と道路官僚の既得権益に染まった現行システムには、国民経済や国土の発展に貢献する発想も仕組みもない。だからこそ、現行システムはできるだけ早く変えるのがよい。その一つの方法が無料化である。

そもそも、高速道路は何のためにあるのか。国土全域へのより速い、より便利なアクセスとして、中央も地方も豊かな社会を実現していくための手段として存在するはずだ。国土全域が発展し、経済の成長が促され、有事の際には国土防衛にも貢献する高速道路システムでなければならない。『日本列島快走論』『道路問題を解く』の著者、山﨑養世氏は無料の高速道路がどれだけ国土の発展と経済の成長をもたらすかは、歴史が証明していると、次のように指摘する。

「1930年代、ヒトラーは無料の高速道路網を築き、ドイツは欧州一の経済大国となりました。50年代には米国大統領となったアイゼンハワーがこれまた無料の高速道路網、インターステートを作りました。それによって地方自治体が活気づき、国土のすみずみまでを活用しやすくなりました」

米国の新進気鋭の企業、たとえば、マイクロソフト、ヤフー、グーグルなどはすべて地方で生まれている。
「ニューヨークが米経済の中心だといわれますが、ダウ30銘柄中ニューヨークに本社を置くのはわずか六社、残りは皆、地方生まれです。対照的に日本は時価総額トップの50社中、39社が東京に本社を置いています。東京だけで日本の経済を引っ張っていくのには限界があるにもかかわらず、地方の魅力が引き出される制度になっていないからです。高速道路も同じです。一極集中のこの弊害も、高速道路無料化が是正すると思います」

往復すれば一万円札があらかた消えてしまうような東京湾アクアラインや本四架橋が軒並み無料になれば、東京湾の千葉県君津側や四国の各地にも、住宅やオフィス、工場などが建てられるに違いない。東京で働く人びと、神戸や大阪で働く人びとも、高速道路が無料化すれば、少し離れた地域に住んでクルマで通勤することが可能になる。

そうすれば都市に集中していた人口が地方に分散し、過疎化に歯止めがかかる。あまりに高い都市部の地価や家賃は下がり、反対に資産価値が不当に低い地方の地価はもう少し上がる。

また、日本の得意技である環境技術を駆使して、二一世紀型の世界一の高速道路を作り上げていくことに知恵を絞れば、おのずと経済成長も加速されていく。環境に配慮した世界一のクルマを作った日本が同じく世界一の環境重視の高速道路を作れないはずがない。

山﨑氏は、たとえば、電気自動車の充電装置や衝突回避のためのGPS(全地球測位システム)装置などを備えた高速道路作りを考えるべきだと強調する。ガソリン不要で、CO2排出量もきわめて少ない高速道路を作り上げれば、環境大国日本の技術の面目躍如である。インドや中国にとっても目指すべき理想の道路になる。

すでにトヨタ自動車がこの無料化案に関心を抱いている。民主党だけでなく、自民党内にも、同案に前向きの政治家はいる。だからこそ、頭から否定するのでなく、真剣な議論によって日本の活路を開いてほしい。

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トラックバック: 2件

  1. 高速道路無料化…

    今回の総選挙の民主党の公約の一つに「高速道路無料化」があった。この項目に関らず他…

    トラックバック by 川原和博の日記帳 — 2009年09月10日  12:30

  2. 有料道路の料金に係る地方からの提案型社会実験の効果に関する分析…

    有料道路の料金に係る地方からの提案型社会実験の効果に関する分析
    松田和香 塚田幸広
    国土技術政策総合研究所道路研究部道路研究室
    第30回土木計画学研究発表会 NO.80 2004

    昨今の経済情勢の影響や全国均一的な料金設定による有料道路の割高感などにより、既存の有…….

    トラックバック by 研究開発 — 2009年09月21日  00:25

櫻井よしこ氏がネット新番組の発表をいたします。
「民主党の〝高速道路無料化案〟は真剣な議論に値するのではないか」

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