「“都市鉱山”で日本は資源大国だ」
『週刊新潮』’08年5月29日号
日本ルネッサンス 第314回
中国四川省大地震の影響が日本経済に及びつつある。元々はチベット人の国だった今回の震源地帯は豊かな資源を埋蔵している。そこで産出される希少金属(レアメタル)や、被災地復旧に必要となる鉄鋼材の供給が逼迫し、価格をつり上げそうなのである。
急成長を遂げる中国は希少金属のみならず世界中の資源を暴食してきた。それもひとつの大きな要因となり、各種資源の国際価格が高騰してきたのは周知のとおりだ。鉄鉱石は4月の段階で前年度比65%値上がりし、原油価格はいまや、予想もつかなかった1バレル120ドル台に達した。
加えて今回の地震に見られるように、自然災害がさらなる価格高騰を誘う。今年の春節(中国のお正月)の大雪の時にも、希少金属のビスマスや希土類(レアアース)の価格が上昇。主産地中国からの供給が不安定になるとの読みに市場が反応したのだ。
自国の利益を優先して資源の輸出規制に走る国々も少なくない。たとえばコンゴ民主共和国である。希少金属のコバルトで産出量世界一を誇る同国は、今年3月以降、それまで外資に開放していた鉱山開発の契約を、全面的に見直し、コンゴへの貢献度を基準に開発権を与えることになった。コバルトの価格は5年前の5倍を超え、コンゴ政府は強気である。
アフリカ外交に力を注いできた中国はこの機会を逃さず、道路、鉄道、発電所、学校、病院などのインフラ建設のためにコンゴに30億ドル(3,000億円)の投資を決定、非常に有利な立場でコンゴの鉱山開発に食い込んだ。
ちなみに、アフリカ諸国のインフラ建設に中国が出すのは資金と技術だけではない。必ず、労働力も送り込む。派遣される労働者の中には、多くの囚人も混じっていると言われる。彼らの大半は建設作業が終わっても帰国せずに、現地に住み続けるのだ。アフリカ諸国の政府は、中国資金で基盤整備を進めながらも、他方で、望んでもいない中国人移民を大量に押しつけられるわけだ。
資源の輸入依存から脱却
世界中の資源を漁りながら、中国は自国の資源の輸出には慎重である。希少金属についても、国内需要の増加を理由に輸出を抑制し始めた。
もろに被害を受けるのが日本である。資源も食糧も圧倒的に輸入に頼る日本にとっては、他国の経済成長も天災も、文字どおり他人事ではない。だが、他国の事情に振り回され、その度に泣きを見るような状況を許し続けてよいはずがない。全ての分野での自給率を上げていく手を考えるのは当然だ。そして、国内を見渡せば、日本が極めて明るい希望を持てる国だと実感出来るのだ。
日本国の政治力は、残念ながらとても弱い。資源確保にも、政治の果たした役割よりは、民間企業の努力の跡が目立つ。例えば、トヨタ自動車の奥田碩相談役の呼びかけで資源戦略研究会が作られ、06年6月には「非鉄金属資源の安定供給確保に向けた戦略」が報告書としてまとめられた。同会には資源エネルギー庁幹部も参加、昨年11月、甘利明経済産業大臣が南アフリカを訪れ、希少金属開発の協力に漕ぎつけたのも、トヨタ自動車の現地での実績が評価されたからだという。
海外での資源調達も重要だが、宝の山である日本の「都市鉱山」の有効活用にさらに力を入れることで夢は大きく膨らんでいく。
都市鉱山とは、携帯電話や家電製品、コンピュータの基板などリサイクルに回される全ての廃棄物のことだ。これらには微量ながら40乃至50種類の希少金属が使われている。都市鉱山は、例えば、野菜のミックス・ジュースだと思えばよい。それを分解して野菜毎の味と成分を取り出すことを思えば、都市鉱山から種類毎に希少金属を取り出すことの難しさも想像出来る。数十種類の希少金属をきちんと回収出来る優れた技術は、日本などの非鉄金属メーカーにほぼ限られる。同分野における技術は、まさに日本が世界一なのである。
技術立国の復権を目指せ
その世界一の技術を持つ企業のひとつ、秋田県小坂町の小坂製錬を訪れた。4月初旬、残雪の小坂町で社長の山田政雄氏が語った。
「わが社のこの工場で、日本の金の約10%、銀の30%強を産出しています。3月までは自然鉱石も原料にしていましたが、4月1日から、原材料の殆どを携帯電話や家電製品などの使用済み原料、つまり都市鉱山に絞りました」
小坂製錬では現在、17種類の希少金属を取り出している。そのひとつのプラチナの世界産出量は年間約150トン。仮にグラム当たり1万円として1兆5,000億円市場だ。゛小坂鉱山″での産出は、約1,500億円分、世界産出量の約10%である。
「1,500億円の内、7乃至8割は原料費として出費済みです。残りの金額で工場を稼働させ人件費を払い、数%が手元に残ります」と、山田氏。
都市鉱山に含まれる希少金属は天然原料に較べて含有率が高い。たとえば金の場合、自然鉱石1トン中に数十グラムあれば含有量は多い方だといわれる。他方、携帯電話の場合、1トン中の金は300グラム、自然鉱石の実に10倍近い。都市鉱山が如何に貴重か、実感出来る数値だ。
希少金属への世界の需要は高まる一方だが、前述のように産出国の輸出規制もあり、国際価格は高騰を続けてきた。一例がルテニウムだ。大容量ハードディスクの成膜用材料となるルテニウムの国際価格は、2007年2月までのわずか1年間で、それまでのなんと9倍に跳ね上がった。そのときに底力を見せたのが、日本の優れた技術だった。ルテニウムの加工最大手のフルヤ金属が今年1月、茨城県土浦の新工場を稼働させ、同社のルテニウム精製能力を、一挙に、年間20トンに引き上げた。これは世界需要の約半分である。結果として、ルテニウムの国際価格は現在半値以下で落ちついている(『日経』4月30日、朝刊)。
決して大きいとは言えない日本の企業が、世界市場を大きく動かした一例である。
小坂製錬の工場では、毎日、大きな金の延べ棒が産出される。警備員がしっかり監視するなかで、触ってみた。持ち上げようとするととても重い。13キロの重量で価格は4,000万円。こんな延べ棒が2日で3本、生まれてくるという。
金だけではない。銀、インジウム、ガリウム、さらにはビスマス、銅、ニッケル、ロジウム、ネオジウム、アンチモン……。聞き慣れない種類の貴重な資源が抽出されてくる。
世界に誇るこうした技術をさらに磨けば、日本は資源のない国から、世界有数の資源大国に変身出来る。政治の役割りは、日本の未来に技術立国の大きな夢を掲げ、こうした産業が成長し易い制度を作ることだ。
6/07【福岡】天神でフリーチベットを叫ぶ2【九州】
パソコンを新しく買い換えましてセットアップに手間取り更新が遅れました。
以前にご紹介したスレから引用させて頂きます。思わず目頭が熱くなったりならなかったりw
なんとも泣…
トラックバック by 帝國ブログ — 2008年06月03日 03:26
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家電製品などに含まれている金、銀やインジウムなどの希少金属は、リサイクル可能なため「都市鉱山」と呼ばれるが、日本国内の蓄積量は世界有数の資源国といえる規模だとする試算結…
トラックバック by econewss — 2008年08月06日 01:19