暫定税率据え置きは公約への裏切り 雲散霧消する一般財源化問題
『週刊ダイヤモンド』 2008年2月9日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 726
与党も野党も政治の要は「生活第一主義」の実現だと唱え、国会ではガソリンの暫定税率問題に焦点が絞られている。わかりやすく論じなければ、国民がついてこないという思いがあるのだろうが、きわめて限定的かつ単純化された問題提起は、あまりにも国民をバカにしているのではないか。
ガソリンの暫定税率問題は、小泉純一郎元首相が明言し、安倍晋三前首相も明確に引き継いだ、道路特定財源の一般財源化問題の一部として議論されなければならないものだ。
小泉氏に高い支持率をもたらした一因は、問題の図式を単純化し、“抵抗勢力”を仕立て上げ、黒か白かの対立構造をつくり上げたその手法だった。氏は対立構造のなかで自身を改革の旗手と位置づけ、道路公団の民営化問題を“政治の小道具”として利用した。
重要な課題である道路公団民営化をあえて“小泉氏の小道具”と呼ぶのは、幕が下りてみれば、それが氏の基本的姿勢だったとわかるからだ。
惨めな失敗に終わった道路公団民営化を「成果だ」と主張する小泉氏や、民営化委員会委員だった猪瀬直樹氏らは、国民を騙した点で狡猾である。
だが、道路公団民営化に失敗した小泉氏は、次に道路特定財源の一般財源化を持ち出した。これは、もし実現すれば後述する理由で、民営化の失敗を補って余りある成果をもたらすきわめて有効な改革案だった。私は驚きの気持ちで再び、小泉改革に期待した。
そして安倍政権は同じ路線を引き継いだのみならず、一般財源化の具体的項目として、ガソリン税に言及した。まともに考えれば、これらすべて、道路公団改革を諦めていないという強い決意を表す政治公約だ。
道路特定財源は、これまで一部を除き、道路公団が造る高速道路や有料道路の建設には使われてこなかった。とすれば、それがどこで道路公団改革につながるのかと疑問に思う方もいるだろう。だが、高速道路も道路行政の一部である。その道路行政に、毎年、黙っていても道路特定財源という巨額のおカネが流れ込むのである。2007年度で5兆4,000億円、じつに、日本国の防衛予算を上回る額だ。
これが一般財源化されたとする。国土交通省道路局が、まるで自分の財布からおカネを取り出すような感覚で使ってきた5兆円あまりの使い道は、今度は国民が見ている国会で審議されることになる。
そのとき必ず、どの道路が真に必要なのか、ムダなのかの仕分けが行なわれるはずだ。国道や県道、市道などの一般生活用道路に限らず、高速道路問題を含めた道路行政全般の議論をせざるをえなくなる。そこであらためて、高速道路を造り続けるのがよいのか、あるいは県道などの一般生活道路をもっと拡張したり便利にしたりするのがよいのか、が問われるはずだ。
現在、第二東名高速道路の建設が進んでおり、その平均コストは1キロメートルで150億円、他の高速道路に比べて3倍にも上る。だが、肝心の厚木以東、東京へのアクセスを造るメドはまったく立っていない。第二“東名”と言いながら、この高速道路では、最終目的地の東京に入ることさえできないのだ。となれば、そのような高速道路に際限もなく莫大な財源を注ぎ込むより、生活道路の整備のほうが重要だとの議論も起きてくるだろう。つまり、高速道路の聖域化に歯止めがかかっていくと思われる。
ガソリンの暫定税率問題は、この道路特定財源問題とセットで論じなければならないのだ。小泉、安倍両政権以来の公約は、明確な一般財源化だった。それは、道路に投入される税金の使い道の透明化と合理化の公約である。
にもかかわらず、自民党は今、暫定税率を10年間このまま据え置くという。一般財源化の公約が雲散霧消しているのだ。なんという裏切りか。
アメリカのお役人…
……しかし、政府がサービスのオンライン化を進めるについては、これとは少しく異なっ…
トラックバック by 翻訳blog — 2008年03月21日 20:00