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2007.12.22 (土)

「 またしても思いやりに欠ける発言 薬害C型肝炎問題への首相の姿勢を問う 」

『週刊ダイヤモンド』   2007年12月22日号
 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 720

 去る12月10日、福田康夫首相は参院決算委員会で、福山哲郎民主党議員から薬害C型肝炎問題について問われ、答えた。
「この件については、あまりよく知らないんです。今週、(大阪高等裁判所の)和解案が出るので、それを待って関係省庁と協議し、迅速に対応したい」

 首相答弁は、二つの点でおかしい。まず「よく知らない」との発言だ。原告患者が失望と落胆の涙を浮かべ、怒ったのも当然だ。何年も続いてきた同訴訟は、安倍晋三前首相が積極的に和解に取り組もうとした案件でもある。病んでいる患者にとって、同件は喫緊課題だ。それを「よく知らない」とは、思いやりを欠くことはなはだしい。

 もう一つおかしいのは、大阪高裁が12月13日に出す和解案を待って対応するとした点だ。高裁判断の内容は政府にも通達ずみで、福田首相も知っているはずだ。

 少し詳しく触れると、大阪高裁は12月6日に和解案を出すことになっていた。一週間延期されたが、その内容は六日時点で原告、被告双方に伝えられたのだ。和解案の重要点は、次の三つの線引き基準を示したことにある。

 (一)投与された薬剤によって救済患者を決める。
 薬害肝炎は非加熱の第九因子製剤もしくはフィブリノゲン製剤が原因で、裁判所はフィブリノゲン製剤による感染患者のみを救済対象とした。

 (二)国の責任は1986~88年の投与について、企業の責任は85~88年の投与について認める。
 これ以前と以降の投与による感染については、国にも企業にも責任を問わないということだ。

 (三)現在係争中の原告患者は右の二つの基準によって選別し救済策を講ずるが、その他の患者については一括で八億円の救済金を出す。

 福田首相に真に解決への意志があるなら、裁判所和解案の正式提示を待たずに、今すぐ「迅速な対応」を取ることは可能である。にもかかわらず、首相はなぜ待つと言うのか。その点を解明するには、原告患者側の決意を知らなければならない。

 原告団の意志は「全員一律救済」に集約される。薬剤、投与時期による線引きは受け入れられないとして、裁判所の和解案を断固拒否する構えだ。一方、担当大臣である舛添要一氏は、患者との協議を通じてこれまでに第一の点については譲歩した。

 厚生労働省はフィブリノゲン製剤で感染した患者のみについて責任を認め救済するとしていたのを、舛添氏は「第九因子製剤のケースも救う」と述べている。ただし、第二、第三の点については「できるだけ広く救済していきたい」との発言にとどまっている。興味深いのは、氏の次の発言だ。

「私の政治的判断には限界がある。福田首相の決断を仰ぎたい」「広く国民の支持を受けない対応はできない」

 明らかに、自分は患者要望に沿って全員一律救済をしたいのだが、それができない状況だと言っているのだ。厚労省の官僚たちが抵抗しているのである。前述のように、安倍前首相も迅速に対応し、和解しようとした。だが官僚たちが抵抗し、この問題は安倍政権の下で何ヵ月も放置された。官僚への信頼が厚い福田首相の下で、官僚らはさぞ、意を強くしているに違いない。舛添氏の意味深な言葉は、官僚重視のゆえか、少しも煮え切らない福田首相に向けられたものでもあろう。

 福田首相が、13日を待つのは、患者らの強い反発と拒絶を見越して、政治判断による全員の救済策を劇的に打ち出したいと考えているからだとの見方もある(12月12日時点)。本稿が読者の目に触れる頃には、結論は明らかになっている。どんな結論であれ、一つ明言できるのは、福田首相には、拉致でも薬害肝炎でも、真に国民への思いやりが欠けているということだ。

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「 またしても思いやりに欠ける発言 薬害C型肝炎問題への首相の姿勢を問う 」

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