「 数字をねじ曲げてまで一方的報道に走る沖縄・2大新聞の姿勢は戦死 」
『週刊ダイヤモンド』 2007年11月3日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 713
沖縄で計98%の市場占有率を誇る「琉球新報」と「沖縄タイムス」を読んでいると、息詰まるような気分に陥ることがある。あまりにも一方的な紙面構成がなされ、特定のものの見方のみが強調されているからだ。
第二次世界大戦の末期、日本軍が住民に集団自決を命じたとの主張においても同様だ。この件については、梅澤裕隊長が住民に軍命を下したと、著書『沖縄ノート』で書いた大江健三郎氏と岩波書店を被告とする裁判が、現在も続行中だ。訴えた梅澤氏は、大江氏の記述は「まったく事実に反する」と主張する。9月10日には、被告・岩波書店側の証人が福岡高裁那覇支部に出廷、日本軍は当時、住民に二個の手榴弾を渡し、「一個は敵に投げ、もう一個で死になさい」と訓示したと語った。
他方、梅澤氏は住民の自決の決意に反対し、「馬鹿なことを言う!」「あなたたちは部隊のずっと後ろのほう、島の反対側に避難していればよいのだ」と諭したと主張する。梅澤氏の主張は、1987(昭和62)年の慰霊祭のとき、宮城初枝という女性が訪ねてきたことによって、真実だったことが判明した。彼女は梅澤隊長を訪れ、集団自決をする覚悟だから死に方を教えてほしい、と頼んだ村民代表5人のうちの1人だったというのだ。
“歴史の事実”は多くの人が幾通りにも語り継ぐ性質のものだ。だからこそ、冷静に証言に耳を傾け、判断しなければならない。メディアはそのための客観的事実をこそ、全力で読者に提供しなければならない。だが、明らかに沖縄の二大紙はメディアとしての最重要の責務を果たしていない。
それにしても、連日の一方的報道はいったいどのような意図から生まれるのか。その結果、沖縄県民はどのような影響を受けているのか。
「ものを言えない雰囲気です。県を挙げて、集団自決命令を出したと教科書に明記せよと運動しているのです。おかしいと思っている県民は少なからずいると思いますが、今そんなことを言おうものなら、大変なことになります」。この人物は匿名でこう語った。別の人物は、「最も嘆かわしいのが、“左翼系の運動家”よりも自民党の県会議員や国会議員だ」と強調した。
「来年にも予想される選挙に向けて、当選せんがために“沖縄の世論”に迎合しているとしか思えません」。この人物は「沖縄の保守勢力は消滅に向かっている」と嘆くのだ。
9月29日に行なわれた「集団自決」に関する教科書の記述に抗議する集会には、11万人以上が参加したと、主催者側は発表した。集会の模様を伝える翌日の沖縄の二大紙は、文字どおり紙面の大半を同報道で埋めた。その報道ぶりは冷静さを欠いており、すさまじいのひと言に尽きるといってよいだろう。二大紙が報道した集会参加人数は、一週間後の10月7日に「産経新聞」によって、発表よりずっと少ない4万3,000人ほどだったと報じられた。さらに「週刊新潮」は集会の航空写真の分析から、参加人数はじつは一万八〇〇〇人だったことを報じた。実際のデモ参加人数よりもはるかに多い数が発表されていたことになる。地元では、この誇張された11万強という数字は「沖縄戦で亡くなった人びとの魂の数」なのであり、問題ではないと主張する声もある。
信じがたいが、今の沖縄はこのような暴論にも反対できない雰囲気なのだ。しかし、戦争で亡くなった人の魂をこんなかたちで利用してよいはずがない。それは、戦死者を冒涜するものだ。
別の人物が指摘した。「一連の運動は真に沖縄県民の運動なのか、強力な外部勢力が加担してはいないか」と。
沖縄の政治は、中国をはじめとする外部勢力の影響を受けてきた。だからこそ、私たちはもっと冷静に、沖縄情勢を見つめなければならない。教科書検定結果を安易に見直してもならない。