「 機能するかに見える福田首相の調整能力 だが難問打開には突き動かす信念こそ必要 」
『週刊ダイヤモンド』 2007年10月27日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 712
福田康夫首相は、森・小泉政権の官房長官として1,289日間務めた。官房長官としては最長記録となったこの間、内閣の顔として巧みな調整能力を発揮した。福田氏への評価はそのまとめの技への評価で、政治哲学や信念などとは無縁のものだ。氏の調整能力の高さは、政治家としてよりも、むしろ秘書や事務方として輝くものである。
しかし、国会論戦をはじめ、政治とメディアの動きを見ると、氏の調整能力が、少なくとも表面的には機能している。低姿勢で、官邸記者とも和やかな関係を保つ。かつて反安倍の空気に染まっていた官邸記者クラブには、いまや穏やかな空気が漂っている。低姿勢は野党、とりわけ民主党に対して顕著である。あくまでも反対だと民主党が言うテロ特措法についても、ひたすら話し合いをお願いする。
そうしたなか、福田政権は10月17日、油と水の補給に絞った新法を閣議決定した。国会に提出し、参議院で否決されたとき、衆議院の三分の二条項で可決するのか、福田首相は明言せず、様子をうかがう構えだ。
一方、この間に、民主党側に大きな動きが生まれた。10月9日発売の雑誌「世界」11月号に、小沢一郎代表の論文が掲載された。その中で氏は、「日本人は、決然としてテロと戦う決意と態度を持つべき」「国連決議があれば、ISAF(国際治安支援部隊)に参加することも憲法違反ではない」「私が政権を取って外交・安保政策を決定する立場になれば、ISAFへの参加を実現したい」と書いたのだ。
ISAFは治安活動とはいえ、テロ攻撃に真っ向から直面し、しばしば激しい戦闘を展開する。ISAF主要参加国の米英両国の犠牲者はいずれも三ケタ台だ。主要参加国ではないが、2,500人の兵士を送っているカナダはすでに六七人の死者を出した。
インド洋での補給活動は違憲だが、アフガニスタンでのISAFは合憲で、日本も参加すべしとしたこの小沢論文は内外で注目を集めた。しかし足元の民主党内部からは反論が続出、民主党支持の連合も懸念の声を上げた。
すると小沢氏は一六日、「今のISAFの治安活動には参加しない」と、いとも容易に前言を翻したのである。
一歩も二歩も踏み込んだ小沢論文は、日本の国際貢献のあり方を論ずるよいきっかけだった。議論を進める前に、前言を取り消したのは、この考えは党内議論を踏まえたものでも、党をまとめる準備を整えたものでもなかったということだ。政権交代が現実の可能性として取り沙汰され、そのぶん注目されているにもかかわらず、党首として述べた考えを、直後に撤回する。
自民党から見ると、明らかに民主党の“敵失”である。これを最も歓迎したのは、福田氏であろう。
守りに強くボロを出さない福田氏と攻撃には強いが守りの脆弱性が目立つ小沢氏。対照的な二人の勝負では、意外に福田氏が健闘する可能性もある。しかし、だからといって、福田政権の展望が開けるわけではない。
参議院で過半数を失った自公連立政権が、次の衆議院選挙で、現在の三分の二の議席を勝ち取ることは絶望的だ。自公政権は身動きが取れなくなり、福田氏も活躍する場所を失うのだ。そこに行き着く一歩手前の現状を、福田氏は“背水の陣”と呼んだ。しかし、行き詰まりを立て直す力は調整から生まれるのではなく、人びとを揺さぶり、突き動かす信念を訴えるところから生まれるのである。明らかにその力は福田氏にはない。
一方で、これまでの小沢氏の足跡は、国の基本問題について信念を貫くというより、政局重視で豹変する姿を見せてきた。与党にも野党にも信念がないのであれば、現政党はいずれも生まれ変わりが必要だ。私たちは、いかにして政界再編を可能にするかの知恵を真剣に絞らなければならない。
この人は何をしたいのだろうか?
[http://seiji.yahoo.co.jp/giin/jimin/000610/ 福田康夫]…この人は結局は日本と日本人をどこへ連れて行くのだろうか?この国をどうしたいのか?…
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