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2007.10.13 (土)

盧大統領、北朝鮮との外交戦争で完敗 米朝関係は当面、緊密化の方向へ

『週刊ダイヤモンド』   2007年10月13日号

新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 710

 10月2日、盧武鉉大統領は、韓国大統領として初めて歩いて板門店を通過し、平壌を訪れた。盧大統領一行の車列は北朝鮮の権力序列二位の金永南最高人民会議常任委員長に迎えられ、二人はオープンカーに並び立って平壌市中心部に向かった。沿道は「万歳(マンセー)!」と叫ぶ大群衆で埋められ、終着点には金正日総書記が待っていた。
 金総書記の生中継の映像は、小泉純一郎元首相の訪朝以来、約三年ぶりである。三年前と比べても、その顔は浮腫(むく)み、体形もひと回り太ったように見える。健康管理ができていないと推測されるゆえんである。
 だが、盧大統領を迎えた手口は鮮やかなものだ。オープンカーでのパレード、金総書記とともに行なった儀仗兵の閲兵など、最高レベルの礼を尽くしながらも、初日の会議には金総書記は姿を見せず金常任委員長が対応した。韓国から取るものを取るためにも、友好、親善を演出し、民族意識を高めなければならない。だが、韓国は北朝鮮に頭が上がらないという構図を、物言わずして描き切ったのだ。金総書記のしたたかな外交が表れている。
 北朝鮮がこれまでどれほどの外交戦争を乗り切ってきたかを示す、きわめて興味深い書がある。『対北朝鮮・中国機密ファイル』(欧陽善著、富坂聰編 文藝春秋)である。
 これまで中朝関係は、兄弟のような関係、中国は北朝鮮をコントロール下に置いてきた、中国は北朝鮮に対して強い影響力を持つ、などと見なされてきた。朝鮮半島問題を論ずるとき、右のような考え方が基本になってきた。ところが、前述の書『機密ファイル』はその常識をひっくり返してしまう内容なのだ。
 たとえば、朝鮮戦争に中国が参戦し、北朝鮮とともに米韓両軍と戦ったのは事実である。中国の毛沢東が中国軍を投入するのに乗り気だったのも事実である。だが、『機密ファイル』は、金日成だけは中国の参戦を嫌い、当初はそれを拒否していたというのだ。ではなぜ、中国軍は参戦できたのか。

 米軍の反撃でマッカーサーが仁川に上陸し、北朝鮮軍の形勢が不利になったからだ。しかし、そのときでさえ、金日成はまずソ連のスターリンに出兵を要請して拒絶され、仕方なく毛に頼んだのだそうだ。

 もっと驚いたのは、金日成は毛に朝鮮戦争開始の日時さえも知らせていなかったことだ。毛が戦争勃発を知ったのは、「何と外国の新聞が伝えたニュースからだった」と本書には書かれている。

 この戦争で毛の後継者と見られていた長男、毛岸英も戦死した。こうした経緯にもかかわらず、金日成はその後も中国を警戒、敵対視し続けた様子がこの書には克明に描かれている。

 ここで思い出すのは、今年夏に報じられた二つの重要な情報だ。一つは、「中央公論」八月号で外交ジャーナリストの松尾文夫氏が報じた「拉致敗戦」、もう一つは、8月10日の「産経新聞」に伊藤正中国総局長が伝えた、金総書記からブッシュ大統領へのメッセージである。

 松尾氏の論文は、昨年10月にブッシュ大統領が金総書記に宛てて「核を捨てたら、米国は平和条約に調印する」とのメッセージを中国経由で送ったとの内容だ。伊藤氏の報道は、金総書記が同じく昨年10月に、「韓国以上に親密な米国のパートナーになる」とブッシュ大統領に応えたとの内容だ。

 北朝鮮が、『機密ファイル』にあるように、その建国当初から中国に対して敵視政策を採ってきたのであれば、右の二つの情報の信頼性はきわめて高いと考えてよいだろう。つまり、米朝関係は確実に緊密化の方向に進むということだ。そう考えつつ、盧大統領の高揚した笑顔を見ると、少なくとも盧政権が北朝鮮との外交戦争にすでに完敗していることを実感するのだ。

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