「 毒殺事件が示す新たな冷戦構造 」
『週刊新潮』 '06年12月14日号
日本ルネッサンス 第243回
旧ソ連時代の情報工作員で現在英国在住のボリス・ヴォロダルスキー氏が、ロシア流政敵暗殺術についてウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙に詳報した。11月22日のその記事、「ロシアの毒薬」は小説をはるかに凌ぐ迫力だ。氏は1954年の事件から書き起こす。
54年2月18日夕暮れ、ドイツのフランクフルトで亡命生活を送るソ連反体制派の指導者を男が訪れた。N・ホフロフだ。扉が開くと彼は言った。「貴方を暗殺する命を受けて来ました。しかし、私は貴方を殺したくない。手を貸してほしい」と。
ホフロフは米国に亡命。3年後、彼は再びドイツを訪れた。友人とコーヒーを飲んだホフロフは、数時間後、自室で倒れた。医師は食中毒だと診断したが、症状は改善せず、10日後、頭髪が抜け落ちた。骨髄組織がはげしく損傷を受け、免疫を司る白血球は消えていた。原因は新しいタイプのタリウムと診断された。
ヴォロダルスキー氏はホフロフ事件と、さる11月23日に死亡したA・リトビネンコ氏のケースを比較する。
ロシア連邦保安局(FSB、旧KGB)の元中佐、リトビネンコ氏が亡命先の英国で倒れたのは11月1日夜だった。当日午前、彼は旧知のロシア人とホテルでお茶を飲み、その後イタリア人の知人と寿司屋で昼食をとった。
夜、突然倒れた氏を診察した医師は当初、食中毒だと診断。しかし、ホフロフ氏同様、彼も10日目に頭髪が抜け落ちた。医師は毒物テストを行い、致死量の3倍のタリウムを飲まされていると発表した。
反ロシアの立場をとるウクライナのユシチェンコ大統領が毒を盛られたときに診断した毒物専門家のジョン・ヘンリー氏もリトビネンコ氏を診察し、タリウムを疑った。ヴォロダルスキー氏は、医師団はホフロフ事件のときと同じ間違いを犯したのではないかと指摘する。なぜなら、リトビネンコ氏の症状にはタリウムだけでは説明出来ない血液循環の悪化が見られたからだ。
大統領告発後に毒殺
50年代のホフロフ事件で使用されたタリウムは、放射能を照射されていた。そのことを米軍の専門家が突きとめたのはかなり後のことだ。
放射能照射のタリウムを盛られるとどうなるか。まず原因不明の“胃腸の不具合”症状が出る。暫くするとゆるやかに血中脂質が増加し、白血球過多と貧血に陥る。そして放射能被曝を疑わせる症状が出始める頃には放射性タリウムはすでに分解され、特定が非常に困難になり、原因物質を突きとめられなくなるのだ。
ヴォロダルスキー氏の論文は、リトビネンコ氏の死の前日の11月22日に掲載されたが、さらにその1日前、リトビネンコ氏を治療したロンドンの医療チームは、原因がタリウムだとは確認出来ないと発表した。ホフロフ事件のときのように時間が経過し、放射能タリウムの分解が始まっていたことを示唆していないか。
この後、死因としてポロニウム210説も指摘されたが、なお真相は不明だ。
リトビネンコ氏とプーチン大統領の関係についても、ヴォロダルスキー氏は重要点を指摘する。旧KGBの中佐だったリトビネンコ氏は、98年11月、ロシアの政商、ベレゾフスキー氏の暗殺を命じられたという。だが、氏はその命令を公に暴露して上司を批判したのだ。当然、即、逮捕され、悪名高いレフォルトヴォ刑務所にぶち込まれた。そのときのFSBのトップがプーチン氏である。
裁判でリトビネンコ氏は一旦無罪放免となったが、翌年再逮捕される。このときも再び釈放された彼は翌2000年に家族を連れて亡命した。
亡命先の英国で彼は一冊の本を出版した。99年にモスクワで発生した一連のアパート爆破事件とプーチン氏の大統領選挙を一本の線で結びつける内容だった。一連のアパート爆破事件はチェチェン問題に関連する犯行だとプーチン氏は断定し、それを理由に烈しいチェチェン弾圧に踏み出したのだ。
ここで当時の状況を急いで説明しておきたい。酒で体調をくずしたエリツィン前大統領はプーチン氏を後継者と位置づけ99年12月に引退。プーチン氏は2000年3月の大統領選挙に臨んだが、そのときに、チェチェン共和国を苛酷に攻撃し、徹底的に弾圧したことによって世論の支持を高めた。自ら戦車に乗って、チェチェン攻撃を指揮する氏の映像は、国営テレビで繰り返し報じられた。ソ連崩壊で秩序が失われ、経済の破綻が庶民を苦しめていたロシアで、チェチェンへの容赦ない弾圧は、ロシア人のナショナリズムを刺激し、気分を高揚させた。支持率は急上昇し、プーチン氏は圧倒的な勝利をおさめたのだ。
大統領選挙の圧勝につながったチェチェン弾圧、そのきっかけとなったアパート爆破事件は、実は、プーチン勢力によって工作されたと、リトビネンコ氏は告発したわけだ。
旧KGBが支配するロシア
無論、プーチン大統領は証拠はないと主張するであろう。しかし明らかなのは、プーチン政権の下で、ロシアは民主主義や自由、人権、法の支配という価値観を打ち捨て、FSBの支配する国家を目指しているということだ。秘密情報活動、手段を選ばぬ謀略、無慈悲な強権支配を特徴とする国家体制への回帰は、あらゆる意味で旧ソ連的体質の復活につながる。
厄介なことに、そのロシアはいま、原油価格の高騰で未曾有の好景気のなかにある。豊富な資源を有し、価格高騰で経済的な余裕を得たロシアの外交政策は、強権そのものである。
旧ソ連が分裂して生まれた独立国家共同体(CIS)に対するプーチン大統領の狙いは、これらCIS諸国をロシアの原則で縛りなおし、ロシア風秩序を再構築することだ。そのために今年1月、パイプラインでウクライナに送っている天然ガスを一時停止した。また、現在ベラルーシに対しては、いきなり価格を5倍につり上げる案を突きつけた。
CIS諸国に対する強権的手法は欧州連合(EU)に対しても同様だ。対するEU側は、ドイツもイタリアも抜け駆け的姿勢でロシアに近づくなど、自国の資源確保に向けての個別の動きが目立ち、一枚岩の団結は保ち得ていない。
資源を武器に、自由と民主主義を基調とするEUの分断をはかる。その一方で、ロシアは中国とともに、反米諸国に的を絞って武器輸出を介して勢力拡大を進めてきた。05年、ロシアは途上国向け武器輸出で米国を抜いて世界第一位に躍り出た。
ロシア製武器輸出の元締、国営武器輸出公社も、世界最大の天然ガス独占企業体、国営ガスプロムも、プーチン大統領の旧友たち、旧KGB出身者が経営の中枢を握る。ロシア、中国の外交は、世界が新たな冷戦に入ったと見るべき深刻な事態を、私たちに突きつけている。
ロシア「帝国」の復活~「反米」・「非米」思想と資源ナショナリズムの融合~
露のエネルギー牛耳る「シロビキ(武闘派)」
(産経新聞 イザβ版)
国の命運を握るエネルギー政策。ロシア
では国益重視の強硬派が台頭して…
トラックバック by クルトの葉隠な日々 — 2006年12月15日 20:32
国連発のフェミニズムに対抗すべく家族擁護の国連NGOの推進を
フェミニズム理論を牽引したフリーダンは1966年に全米女性同盟(NOW)を結成し、1970年、NOWが中心となって下院司法委員会に付託された女性差別撤廃憲…
トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年12月16日 12:01
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国連で障害者条約が採択
ー多くの国が堕胎拒否を何度も繰り返し述べています
国連総会は、今週、新しく障害者条約を採択しました。今回、拘束力のある国連の条約の中に、初めて、「…
トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年12月17日 09:06
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日本は「日中歴史対話」で攻めに転じれるか
安倍首相の存在感が薄い、という批判が出ています。
確かに小泉首相のようなワンフレーズを繰り返す手法をとっていないので、「何をしているか判らない」…
トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年12月18日 16:26
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12/15 教育基本法改正案が成立、 戦後体制克服へ大きな前進
三点の条文修正には至らずも、「解釈」で実質内容を勝ち取る!
●戦後体制の根幹にメス―教育理念は転換へ
12月15日、参院本会議での可決により…
トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年12月19日 08:34
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トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年12月19日 08:34
日教組、組織率過去最低28.8%
産経紙19日付けによると、日教組の組合員が10月1日現在で、29万6345人で、昨年30万3856人であったものの、今回、初めて30万人を切ったことが文…
トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年12月20日 09:06
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トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年12月20日 09:06
今こそ反日、左巻き反動勢力を打破しょう
【筆者記】
今回成立した新教育基本法には「伝統と文化を尊重し、わが国と郷土を愛し、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う。」とされている。…
トラックバック by 訳わからん このシャバは — 2006年12月21日 16:48
露助の横暴炸裂!
我が國の天然ガス需要の約1割をまかなう予定だったサハリン2計画であるが、環境破壊に名を借りた露助政府による言われ無き因縁を付けられていたのが、ついに「マ…
トラックバック by ステイメンの雑記帖 — 2006年12月23日 09:26
「日本の9条を話すと、中国人の反日感情が沈静化」 女性が世界に向け“条文Tシャツ”2000枚
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1 :☆ばぐた☆ ◆JSGFLSFOXQ @☆ばぐ太☆φ ★ :2007/05/07(月) 18…
トラックバック by 太平洋ちゅぱちゅぱ戦記 — 2007年05月07日 22:26